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BRNZ for 作者:徳弘 将右衛門
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Arrangements for -intermission-


 白赤色の瞳と髪色で濃いグレーのレディースタイトパンツスーツを着た女性がヒールを一度打ち鳴らす。
彼女は毛先にウェーブのかかった長髪を揺らして苛ついたような声を上げた。
「対象の無力化に失敗したどころか情報まで持ち去られたのか。無能め」
学院の一室。各教員に与えられたやや手狭な個人用の部屋でTeamSAYOのメンバーはその言葉を聞く。
「それだけのものを与えられておきながらただの一人も殺せんとは、私の見込み違いだったか」
彼女はそこで一度言葉を止めると、
「と、いつもならば叱責しているところだが、相手が悪かったな。今回の失敗は私の情報収集不足も原因だ、不問とする。次はうまくやれ」
そう言って彼女はスーツの内ポケットからスクロール用のデータメモリを取り出すとアサギに放り渡す。
「遅くなって済まなかったが、TeamBRNZのパーソナルデータだ。調べた限りろくな物じゃない、奴ら徹底的に体をいじくりまわして強化してある」
アサギはそのメモリを手の中で弄びながら彼女に訊く。
「実在しとったんですね、正規の養成所を卒業せず企業や組織によって育成されたハンター」
その問いに彼女は一度ため息をつくと答えた。
「存在しない、と考える方が不自然だろう。育成のマニュアルと技術と素体の素質さえあればどうとでもなるんだ、ハンターを求めるのはグリム討伐だけじゃない。あれだけの戦闘性能を有している人材を化け物退治だけに使うのではもったいないと考える者がいてもおかしくはないさ、だろう?」
「アオイ女史、彼らの目的はなんなのでしょうか」
口を開いたのはサビ。
アオイは一度面白くなさそうに鼻を鳴らすと、
「大方私の研究に横槍を差し入れたいのだろうな。ともすれば研究成果をかすめ取るつもりかもしれん、奴の考えそうなことだ」
その言葉に反応したのはオミナエ。
彼はピアスをいじりながら言う。
「相手の中に知人でもいらっしゃるの?その言い方だとそういう風に聞こえちゃうわ」
「あぁ、そうだ。グラースという陰険な男が奴らの指揮統率を執っている、そしてそいつは私の大学での同期だ。学部学科こそ違ったが話は聞いていた、反吐が出るほどに優秀で冷たい人間だ」
アオイはそう言って髪に手櫛を通す。
「舐めて掛かるなよ、奴は貴様らが考えている以上にずる賢く目的に貪欲で独善的だ。蛇蝎すら可愛らしくみえる程度にはな」
「難しい話はボクよくわからないし考えたくもないから聞きたいんだけれど、ボクはこれからどうすればいいの?」
ヤナギの問いにアオイは少し考えるような間を置いてから答える。
「こちらから向こうへの意図的な接触、攻撃は許可しない。しばらくは今までどおり訓練と勉学とグリム討伐だ。じきに奴らの方から動きがあるだろう、それまでしっかりと備えておけ」
「えー、それってちょっと退屈じゃない?相手の偉い人と知り合いなんでしょ?居場所とか分からない?こっちから突っ込んだほうが早い気がするんだけれど」
ヤナギの不服そうな声にアオイは一度軽くヤナギの額を小突いて言う。
「馬鹿者が。相手の居場所がわかっているからといって策も適当に襲撃して効果的なダメージなど与えられるものか。奴らの抱えているチームが今回のBRNZのみとは限らない。それにBRNZ内にも今回交戦していないメンバーが2人もいるだろう、次の接触ではその2人も出張ってくると思うべきだ。4対2ですらどうにかこちらに優勢な引き分け程度だったのだ、舐めてかかるな、ともう一度言っておく」
ヤナギはそれを聞いて少し不服そうにしながらもおとなしく引き下がる。
「諸君、今回は失敗という結果だが、気を落とすな。今回の失敗は十分に取り返せるものだ、必ず、あの非人道的な改造品共を打ち倒せ。あんなまがい物を我々はハンターなどと認めない。我々の正義の御旗のもとに奴らの屍を投げ捨ててやろう」
彼女の言葉に4人は深く頷くと部屋を後にした。
 それを見送り、アオイはスクロールを取り出し通話を掛ける。
「私だ。今こちら側で話をした。こちらからは仕掛けるなと厳命しておいたからしばらくは大丈夫だろう、好きなタイミングで仕掛けてこい、だが今すぐにはダメだ。こちらの用意が終わり次第また連絡を入れる、そこからだな」
通話の相手は2,3言何かを言う。
「被験体が休眠期に入ったところだ。運が良かった、コレで一気にフェーズが進む。もう一月もかかりはしないだろう、言い方がクサくなるが新人類、いや人類の枠ですらない新種の誕生に立ち会えるのだ、貴様も幸運だな」
しばらく彼女は話を続けていたが、ふと声色が変わる。
「そうだな、被験体の目が覚めるまでにもう少しデータも欲しいな。少しこちらで手配しよう、礼はいらん、お互いに利益の出ることだからな。貰った情報の対価とでも思えば良いだろう」
そして彼女は細巻きに火を灯して言う。
「お前からもらった煙草、なかなか美味いじゃないか。今度また送ってもらおうかな、グラース」
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「Short Island Iced Tea」 Shilts
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