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モンスト三銃士 ダルタニャン物語 作者:食物名団隊長.さば
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ダルタニャンの門出 一話 パリへ

千六二五日四月のある日の事、フランスのマンという田舎町で、大騒ぎがもちあがった。
女、子どもたちが泣きわめきながら右往左往しているのを見て、町の男たちはまた戦争が始まったのかと、槍や鉄砲を担いで、フラン=ムニエ旅館の方に駆けつけた。
この時代は、国の中がまだよく治っていなくて、内乱や外国との戦争は珍しいことでは無かった。
だが、旅館の前まで来て、男たちはホッと胸をなでおろした。野次馬が黒山のように詰めかけてはいたが、戦争が始まったのではないことが分かったのだ。
旅館の前では一人の若い人が立派な身なりの騎士を相手にしきりに何か怒鳴っていた。
この若者はスタイルがよく、目鼻立ちも整っていたが、服装は立派とは言えなかった。羽飾りのついたベレー帽をかぶっていたが、ホコリだらけで服も色あせていた。腰に吊るした剣も長すぎて、あまり似合っていなかった。おまけに頭から耳が見えた。
若者は馬を連れていたが、これがまた、へんちくりんな馬だった。毛並みも色もよくなし、しっぽは擦り切れ、足にはおできが出来ていた。この馬が歩く時には、頭をひざの辺りまで下げていた。
この若者はダルタニャンといって、南フランスのガスコーニュ地方の生まれだった。
ダルタニャンが家をたつとき、ガスコーニュの古い貴族の父親はこういった。
「かわいい娘や、この馬は十三年前にこの地に生まれて、ずっと我が家で育ってきたのだ。お前にとってもかわいい馬だ。いくら貧乏しても決して、人の手に渡してはならんぞ。」
「はい、わかったにゃ。おとうさまのお言いつけを固く守ります。」
それから、父親は、
「これは、祖先から伝えられた剣だ。」
と、自分のさしていた長い剣をダルタニャンに渡した。
「パリに着いたら早速トレビル殿に会いに行け。トレビル殿は近衛兵銃士隊の隊長で、国王ルイ十三世陛下の御信任のあついことは言うまでもないし、フランス第一の実力者である首相のリシュシュー枢機官殿も煙たがっているくらいだ。だが、トレビル殿の前に出ても、決しておどおどしてはならんぞ。わしとは小さい時からの親友だから、きっとお前を引き立ててくださるだろう。なお、注意しておくが、くれぐれも我が家の古い家名を汚すでないぞ。何事にも、勇気を持ってぶつかれ。今の世の中で出世しようと思ったら、勇気の他に頼る物は何もない。わしの餞別は、十五エキュのわずかな金と、馬と、この教えだけだ。さあ、このトレビル殿への紹介状を持って、都パリへ行け。」
「安心するにゃ。きっと出世してみせます。おとうさん!」
こうして、ダルタニャンは元気いっぱい、生まれ故郷のタルブの町を出発したのだった。
長旅を続けて、マンのフラン=ムニエ旅館の前で馬を降りたが、宿屋の主人もボーイも、これは上等の客ではないと思って、出てこなかった。
ダルタニャンがふと、一階の半開きになった窓辺を見ると、髭を生やした、身なりの立派な騎士が、二人の男を相手に、何か面白そうに話していた。
ダルタニャンは思わず、そのもふもふな耳を使い、聞き耳を立てた。すると、その騎士はダルタニャンの馬の事をさんざんけなしているのだ。
「あんな毛並みのへんてこりんな、ちんちくりんの馬なんか見た事ないなwwwしかも持ち主の格好はみずぼらしいし、耳が頭から生えてやがるwww猫かよwww」
すると、部下らしい二人も草を生やして大笑いした。
ダルタニャンは、自分の馬を汚され、かつ自分の事を悪く言われたのがしゃくにさわり、思わず怒鳴った。
「おい、窓の陰に隠れて笑っているおまえにゃ、ここに出てきて笑ったらどうにゃ!」
相手の騎士は、横柄とも取れるような、落ち着きはらった態度で出てきた。
「わしは別にあんたと話をすることは無いが。」
若いダルタニャンはほおを膨らませた。
「そっちににゃくても、こっちにあるんだにゃ!」
騎士はうすら笑いを浮かべながら立ち去りかけて、いった。
「この馬だって見捨てたものじゃないな。若い頃は、定めし金色の立派な毛並みだったでしょうな。」
こうした皮肉に、ダルタニャンはかっとなった。
「よ、よ、よくも笑ったにゃ。もう勘弁ならぬにゃ!」
「わしは笑い上戸じゃないが、笑いたいときには勝手に笑わせてもらおう。」
「私は笑われたくないにゃ!」
相手の騎士は鼻の先で笑って、旅館の中に引き返そうとした。ダルタニャンは逃がすものかと、あとを追いかけた。
「今すぐひっかえすにゃ。でないと、後ろ傷を負うにゃ?」
相手はくるりと振り向き、軽蔑した目つきでダルタニャンを睨みつけた。
「わしと決闘だって?冗談は耳だけにしろ。気でも狂ったのか?」
騎士が言い終わらないうちにダルタニャンの切っ先が、その顔に向かって飛んできた。
騎士は颯爽と後ろへ飛びのき、剣をぬいた。構えながら落ち着き払っていた。
「命知らずの娘っ子め、本当に戦うというのか?!」
「当たり前にゃ!お前の首をたたき切ってやる!」
だが、そこへ二人の部下と宿屋の主人までが加勢にやってきて、棍棒や、シャベルや、火バサミなどでめちゃくちゃに打ってかかった。
町の男たちが集まってきたのは、ちょうどこんな騒ぎの最中だった。
ダルタニャンは騎士に近づこうとするが、中々近づけない。そのうち、ヘトヘトになってきた。やがて、剣をたたき落とされてしまった。
「しまったにゃ…!」と思った隙に棍棒の一撃がダルタニャンのひたいの上に落ちてきた。ダルタニャンは血まみれになって、その場に倒れこんだ。
見物人たちは、わっと声をあげて、そばへ寄ってきた。
「死んだのかしら。」
「気絶しただけだろう。」
「かわいそうに、女の子じゃないか。」
宿屋の主人は、騒ぎが大きくなりそうなので慌てて、ダルタニャンの体を炊事場に担ぎこんだ。
次は未定。更新していくのでよろしくお願いします〜
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