大河ドラマ「真田丸」の真田昌幸役で圧倒的な存在感を放つ俳優・草刈正雄さん。作家・林真理子さんと対談した。
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林:「真田丸」、視聴率いいですね。私も日曜夜8時が本当に楽しみです。昌幸役、草刈さんにぴったり。
草刈:(軽くガッツポーズして)ありがとうございます。
林:草刈さんは以前、真田幸村(信繁)を演じてらっしゃるんですね(「真田太平記」NHK、1985~86年)。
草刈:そうです、因縁めいたものを感じますね。当時は丹波(哲郎)さんが強烈な個性で昌幸をやっていたので「俺にできるかな」と思ってたんです。でも、何本か脚本が届くうちに三谷ワールドにはまっていって、「やれるかもしれない」と。
林:ものすごい存在感がありますよ。特に馬に乗っているところとか、戦国武将という雰囲気が漂っていて。
草刈:毛皮のロングコートを着てるんですが、あれがワイルドですごくいいですね。ああいうものからイメージをもらいました。言いたいことをズケズケ言う田舎の親父で、「都会モンなんかに負けるか」と思っているという。
林:でも今日お目にかかってみると、画面で見ているあのお父さんとは雰囲気が違いますね。
草刈:今回の昌幸役については、僕だけじゃなくて、何か別の不思議な力が加わってるんじゃないかと感じることがありますね。
林:私は息子たちとお父さんの3人のシーンがすごく好きなんです。息子は2人ともお父さんのことが大好きで、すごく尊敬していて、でもお父さんはそれを微妙にかわしちゃう(笑)。それがまた何とも言えずにいい感じなんですよね。
草刈:そこまで考えてやってるわけじゃないんだけど、画になってみると、そんな雰囲気が出てますよね。
林:でも、戦国の世ってあんなふうに家族が仲いいものですか。
草刈:どうなんですかね。真田家の中で、頬をパンパンとたたくスキンシップがあるんですが、あれは草笛光子さんが始めたんです。「西洋っぽいかしら」っておっしゃってたんですが、おもしろいからやろうとなって、高畑淳子さんも始めて、僕も信繁(堺雅人)にやってみたり。みんなでハグし合ったりして、「実際にこんなことやるか?」というのはありますけど、それが定着して。
林:「真田丸」は家族劇としても非常におもしろいですよね。お母さんもおばあさんもユニークで、お父さんは子どもたちから慕われていて。
草刈:いい加減な親父なんだけどね(笑)。
林:北条につくか上杉につくか、クジ引きで決めようと自分で言っておきながら「こんな大事なこと、クジで決められるか!」と言ったり、息子に本心を聞かれて「全くわからん!」と答えたり。大笑いしてしまいましたよ(笑)。
草刈:とにかくホンがおもしろいから、現場が沸きますね。ディレクターもセンスがいいし、スタッフにも恵まれて、本当にいい雰囲気です。
林:三谷(幸喜)さんの脚本は早いんですか。
草刈:遅いんです、すごく(笑)。でも三谷さんもすごく楽しいんだと思うんです。それで欲が出て、「もっと、もっと」となるんでしょうね。
林:共演の俳優さん、芸達者な方々ばかりですから、「相手がこう来たらこう返そう」とか、いろいろ計算しながらなさるんですか。
草刈:そういうことは一切考えません。あんまり緻密にやるタイプじゃないし、三谷さんのホンは自分の感性に素直にやれるんでね。僕だけじゃなくて、それぞれがなぜキャスティングされたのか、わかるんですよ。だから俳優さんがみんな生き生きしています。
※週刊朝日 2016年6月3日号より抜粋
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