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「法案の立案は官僚の仕事である」というメンツを失った総務省の焦り

「総合区」制度が全国の政令市に歓迎されない理由

2016年05月29日(日) ドクターZ
週刊現代
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〔photo〕iStock

 導入の検討すらされていない

今年4月1日から全国の政令市で導入可能になった「総合区」制度が、早くも暗礁に乗り上げている。

毎日新聞が全国20政令市を対象としたアンケート調査を行ったところ、導入を検討しているのは、新潟市、名古屋市、大阪市のわずか3市のみ。「メリットがない」ことが、大半の政令市が導入を検討しない理由だという。

「総合区」は、多くの政令市で問題となっている、市と行政区による二重行政を解決するために導入された制度。従来から政令市に置かれている行政区を総合区に格上げし、「予算と権限」を与え、地元の問題や課題を総合区長の判断で解決できるようにすることが目的だ。

多かれ少なかれ、各政令市は二重行政の問題を認識しているはず。なぜ「総合区」制度を検討すらしないのか。

その答えを探るには、総合区制度を盛り込んだ改正地方自治法が'14年5月23日に成立した、「経緯」を振り返ってみる必要がある。

この法案の背景にあるのは、橋下徹前大阪市長がぶち上げた「大阪都構想」である。

法案の立案は官僚の仕事

'11年11月27日の大阪府知事・市長のダブル選挙で、松井一郎氏と橋下氏がダブル当選。大阪都構想は現実味を増していった。

そして'12年8月29日には、大阪都構想を実現するために「大都市地域における特別区の設置に関する法律」が議員立法で国会に提出され、成立した。

この法律が議員立法によって成立したとき、「法案の立案は官僚の仕事である」というメンツを失った総務省の焦りは、尋常でなかった。というのも、この種の法律はほとんど内閣提出であったからだ。内閣提出とはつまり、官僚によって法案が作られてきたということである。

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