伊藤若冲展、大盛況でしたね。
4時間待っても見たい気持ちはわかります。
若冲は素晴らしいです。
でも、いつも思うことですが、巨匠(もう死んでる人)の絵を観に美術館に行くお金と労力を、生きてるアーティストにもう少し使ってくれないかと…。
上野に行って美術館の入場料2000円弱を払い、図録やグッズを買い、ランチしてお茶してお土産を買って帰る。
このお金があれば、若手アーティストの作品なら買えてしまいます。
(もちろん私のも)
若冲は、偉大なる素人的なあだ名があるくらいの人で、厳密に言うと絵を売って生きていた絵描きではありません。
青物問屋の後継(豪商のボンボン)として生まれ、親の後を継いで商いをしながら趣味で絵を描いていたものの、商売は性に合わず早々に隠居して絵に没頭します。
あちこちから頼まれて絵を描いてはいたものの、気楽な隠居の身。
絵を売って生活を立てていく必要はないので、実験的な制作をしたり、超時間をかけて一点を描いたりということができたのでしょう。
日本では
「絵は売るものではない」
「芸術家は商売のことなど考えず芸術に没頭するべきだ」
と思っていらっしゃる方も多く、美術大学の教授もそのように指導する人が多いくらいですが、
大学教授はお給料もらってますから!
絵は売らなくても食べていけますから!
ゴッホやゴーギャンに傾倒した大正時代の白樺派の方々がそんなことを唱えたおかげで今でも日本ではそんな考えが浸透していますが、
白樺派の方々はだいたいみんなボンボンですから!
生活に困ってませんから!
ゴッホも弟が生活の面倒見てくれてますから!
と叫びたいです。
上野の中心で。
若手アーティストの作品展は入場無料です。
見ていただいたら、褒めていただいたらもちろん嬉しいです。励みになります。
が、それだけではアーティストには何のお金も入りません。
アーティストはみんな、展示をするのにお金をかけています。
作品の材料費、額装代、DM制作費、DM発送費、会場費、作品の送料、交通費、オープニングパーティの費用など。結構な負担です。
もちろん労働力も、作品を制作する労力だけではなく、額を買い集めたり、作品を搬入し会場の設営をしたり、DMの発送作業をしたりとかなりの時間と労力を費やしています。
「好きでやっていることなんだから、趣味みたいなものでしょう?」
と言われるとまあそうなんです。仕方ありません。
でも定年後の余裕のある方々の趣味と違って、若手アーティストは生活かけてやっています。
バブルの頃(知らないけど)のように、一点何百万何千万するわけじゃありません。
でもバブルの頃と違って、企業やバブリーなお金持ちがヒョイヒョイとそれを買ってくれたり自治体がポンと大きな仕事をくれたりもしません。
今のアーティストを支えることができるのは、普通の生活に少しだけ余裕のある、普通の人たちだと思います。
そして、今のアーティストたちができることも、普通の生活をする人たちの普通の生活を、作品で少しだけ豊かにしたり楽しくすることだと思います。
私もいつもそう心がけて制作しています。
そんなわけで、
若冲展に行ったあなたも、行ってないあなたも
少しだけ
「生きているアーティストの作品にお金を払う」
ということに目を向けていただけないでしょうか?
(切実)
乃木坂Books and Modernにて
5月20日(金)〜6月9日(木)
『竹村東代子作品展 魔術的な午後〜ハンガリー民話の世界』
開催中。
http://booksandmodern.com/gallery/569/
ハンガリー民話をテーマにした作品約20点。
ライフワークのきのこや動植物をてーまにした作品約40点を展示販売。
木、土曜日は在廊。
在廊中は切り絵の実演も行います。