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感想文

本や映画や、いろんなことの感想文を書いています。

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ペットビジネスと殺処分に思うこと①

NHK『クローズアップ現代』で先日、ペット産業や犬猫の殺処分について特集されたらしい。

 

www.nhk.or.jp

  

 

知ったのは、タンポポ(id:tanpopotanpopo)さんのエントリで。

 

tanpopotanpopo.hatenablog.com

 

 

エントリを読んで、オンデマンドで見ようかな・・・と一瞬思ったけれど、上記サイトのダイジェストを読み、改めて問題に向き合う時間にはなっても、特に新しい知識を得られそうな感じではなかったので、見るのはやめた。私はこの手の残酷画像を今まで、鬱になるほど見てきているから。

 

この問題は、個人的には学校教育で時間をとって周知されるレベルのものだと思っている。しかし同時に、それができない理由もわかる。現にこの番組も、ゴールデンタイムではなく『小学生は就寝している』ことが前提の時間帯に放映されている。

 

犬猫がペットショップという形態で売買されている現実があるかぎり、その販売に従事する仕事、そして殺処分に従事している人がいて、その人たちだって悪人なわけではなく、人の子の親だ。

 

この現実が周知された時、子供たちの中でどんな問題がおきるか、容易に想像できる。偏見、いじめ、親子の信頼関係の破綻・・・。周知されなければ社会は変えられないのも事実だけど、同時に、周知されることで傷つく人がいる。子供の健全な成長が脅かされる。安全に道徳的に周知していくためには、細心の注意が必要なのだ。決してデモなんかで垂れ流すべきじゃない。

 

 

この問題でよく、愛護団体の人たちが引き合いに出すのがドイツだ。

ドイツは『動物愛護先進国』として名が高く、犬はペットショップのショーケースに並べられることはなく、ブリーダーでの予約でのみ買うことができる。基本的にブリーダーは、予約数が達してから繁殖に入るので、過剰な繁殖もない。殺処分もゼロだ(猫は知らないけど、この辺りのことを調べ始めると滅入るので今は勘弁)。

 

じゃあドイツでは犬を捨てる人がいないのか?犬を飼った人は全員、終生飼育しているのか?というとそうではない。

 

ドイツにも、飼えなくなった犬を持ち込む愛護センターのような施設はある。しかしその施設に持ち込まれた犬は、日本のように殺されることはなく、施設内で終生飼育されるのだ。

 

捨てられても、殺されない犬たちは、幸せなのか?

殺処分ゼロのドイツの犬は、幸せなのか?

 

最近は読んでいないが、以前、ドイツ駐在員の旦那様をもつ方のブログを読んでいた。

彼女は動物愛護の意識がとても高く、日本にいるときも、そしてドイツに行ってからも、そのような施設に継続して募金をしていた。もちろんデモなんてしない。

 

そんな彼女が犬を飼いたいと思ったとき、当然真っ先に行ったのは、捨てられた犬が終生飼育されている施設だ。

彼女は日本にいるときから、犬を飼うときは絶対、愛護センターから引き取ると決めていた。

 

しかし。

終生飼育の施設で彼女が目にしたものは、やはり悲惨な現実だった。

日本で伝えられている、ドイツの犬たちの現実と、実際はやはり違った。

 

『殺処分されない』『死ぬまで生かされる』

それが犬にとって本当に幸せなことなのか?

『殺したくない』『悪者になりたくない』という人間のエゴなのではないか?

 

結局彼女は、その施設から犬を引き出すことはできなかった。

孤独な駐在先で、子供2人とともに暮らすには、その施設の犬たちは、あまりにも負のオーラが強すぎたのだそうだ。

 

彼女は施設に行った後、一週間くらい体調を崩した。

そして、地元のブリーダーで予約し、子犬を買った。

 

そんな彼女の行動に、当時ブログのコメント欄には非難の声が寄せられた。

彼女に非があるのか?

なぜ彼女が、誰かが無責任に捨てた犬を引き取らなかったからといって、責められなければいけないのか?

無責任なのは彼女ではない。

 

動物愛護先進国といわれ、ぺットショップが実質的にはないドイツでさえも、犬を捨てる人がいる。人の価値観は、そう簡単には変えられないことを思い知る。

そして殺処分ゼロというと響きはよいが、決して犬が幸せになれるわけではないことを、彼女のブログを通して知った。

 

 

 

 愛護センターでのノンフィクションを書いた本『犬たちをおくる日』。

 

犬たちをおくる日―この命、灰になるために生まれてきたんじゃない (ノンフィクション 知られざる世界)

犬たちをおくる日―この命、灰になるために生まれてきたんじゃない (ノンフィクション 知られざる世界)

 

 

7年前、本屋さんの児童書のコーナーで偶然見つけ、その場で一気に立ち読みし、涙でびしょびしょになった本を、泣きながらレジに持って行った。

 

この本の中にもさまざまな価値観の人がでてくる。

おこづかい欲しさに子猫をつかまえて持ちこむ少年、捨てた犬と記念撮影して帰る親子、犬を捨てた帰りに、子犬を引き取っていこうとする人・・・。

優しい人はその人たちのことを、本当に腹立たしく感じると思うし、私も読んだとき、こんな人たちが犯罪者にもならず、普通に生活していることに本当に驚いた。

 

でも。

それが現実。

 

万人が犬好きなわけじゃないし、死んでいく犬を見て、万人が可哀想だと涙を流すわけじゃない。

 

 

この本は一昨年読んだ。

 

犬を殺すのは誰か ペット流通の闇 (朝日文庫)

犬を殺すのは誰か ペット流通の闇 (朝日文庫)

 

 

巻末には、各都道府県の殺処分の数や、愛護センターに持ち込まれた犬種のデータなどが載っている。

殺処分の問題だけだはなく、番組ではあまり触れられてなかった、幼齢で母犬と引き離すことで起きると思われる犬の問題行動など、ペット流通のいろいろな問題点を深く知ることができる。

 

 

この本は昨年。

 

子犬工場 いのちが商品にされる場所

子犬工場 いのちが商品にされる場所

 

 

映画『犬に名前をつける日』の公開に合わせて出版された本。

この本は『犬たちをおくる日』と同様に、たぶんカテゴリー的には児童書で、文字は大きく、すべての漢字によみがながふってある。

 

しかし内容はかなり切り込んでいて、悲惨な繁殖犬の現状も白黒だが写真つきで説明があるし、捨てられて殺処分される犬たちの写真も載っている。

 

 

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まず大人が、親が知ってほしい。

そして丁寧に慎重に、子供たちに伝えてほしい。

誰かを責めたり悪者にすることなく。

 

まずは子どもたちの価値観を育てることが、問題解決の糸口になるんじゃないかと、私は思います。

現実を変えられるのは私たちじゃなく、子供たちだと思うから。

 

 

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