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新組織にはナトリウム技術が壁 もんじゅ見直し具体化の道険し

(2016年5月28日午後0時00分)

 高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)の運営主体見直しを協議してきた文部科学省の有識者検討会が27日、報告書をまとめ、これを基に文科省は夏までをめどに新組織の概要を決める方針だ。新組織は日本原子力研究開発機構の現地職員を引き継ぎ、電力会社などに人的支援を求めるとみられるが、電力業界は及び腰。勧告した原子力規制委員会は「看板の掛け替えは認めない」姿勢で、勧告内容を満たし運営主体を具体化する道のりは険しい。

 ■「もう一度チャンス」

 「経営の問題点を指摘しただけでなく、働く研究者や運転員が十分活躍できる条件も議論した。条件を十分満たす組織はつくれると思う」。報告書を馳浩文科相に答申した検討会座長の有馬朗人元文相はこう強調した。

 だが規制委の田中俊一委員長は25日の記者会見で、検討会について「安全とは何なのかが議論されていない」と述べ、勧告に沿っていないと苦言を呈した。

 検討会は保守管理の不備が相次いだもんじゅの問題点を検証したが結局、報告書で「ナトリウム取り扱い技術は原子力機構にしか存在しない」とし、もんじゅの職員を新組織に引き継ぐことを示唆した。原子力資料情報室の伴英幸共同代表は「改革を続ける原子力機構に『もう一度チャンスを与える』という感じだ」と指摘し、看板の掛け替えにしかならないと批判した。

 一方、もんじゅの安全を確保する組織づくりに向け、規制委にも責任があるとするのは、高速炉に詳しい山口彰・東京大大学院教授。「規制委は、具体的に提案や議論をする重要な役割を担っている」と指摘する。

 ■ナトリウム技術が“壁”

 報告書では、新組織が備えるべき要件として「他原発の保守管理の経験者を指導的なポストに配属し、プロパー(生え抜き)職員がノウハウを習得することも必要」とした。文科省は電力会社や原発関連メーカーへの人的支援を求める方向とみられる。

 ただ電力業界はこれまで、もんじゅの保守管理の業務協力として人材を出してきたが、電気事業連合会の八木誠会長(関西電力社長)は運営への直接的な関与に否定的な姿勢。もんじゅは、扱いが難しいナトリウムを原子炉冷却に使うためだ。ある電力幹部は「ナトリウムを扱う技術のない我々では、責任を持って運営できない」と吐露する。自社の原発再稼働に向けた審査対応で、余裕がないことも背景にある。

 ■政策の議論避ける

 検討会では、核燃料サイクルの中核としての政策的なもんじゅの議論は避けた。委員からは最終回の会合で「もんじゅの位置付けや根本的なエネルギー問題を、もう一度議論することが必要」などと、政府や国会に注文を付ける意見が相次いだ。

 高速増殖炉の実用化のめどは立たず、東京電力福島第1原発事故後、その意義はさらに揺らぐ中、伴氏は「もんじゅの存廃の部分から抜本的に見直さないといけないが、文科省も検討会も踏み込んでいない」と批判した。


 

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