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特定の相手につきまとうストーカーによる悲劇が、また起きた。警察への事前…
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特定の相手につきまとうストーカーによる悲劇が、また起きた。警察への事前の相談が今回も生かされなかった。
東京都小金井市で冨田真由さん(20)が、自らの公演に向かう途中に襲われて1週間たつ。次第に判明した事実は、警察の対応のまずさを示している。
事件の2週間前に武蔵野市の警察署へ相談に行き、容疑者の男の名前や住所、ツイッターへの執拗(しつよう)な書き込みを訴え、2日前に公演の情報も告げていた。
にもかかわらず警視庁はストーカー事案とみていなかった。一般的な相談として扱い、公演の場所も緊急対応用システムに入力していなかった。
おそらくはそうとも知らず、事件時に110番をかけて助けを求めた冨田さんの無念さは、いかばかりか。いまも意識不明のままであり、快復を祈らずにいられない。
3年前、女子高生が刺殺された三鷹ストーカー事件で、当時の警視総監はこう謝った。「警視庁を頼って相談に来られた方の尊い命を救うことができなかったことは痛恨の極みです」
この時も、事前の相談を犯行の防止につなげられなかった。警視庁の責任は重い。
全国の警察に寄せられるストーカー相談は、昨年で約2万2千件にのぼる。
三鷹事件後、ストーカー相談はすべて、各都道府県警本部の専門チームに上げるように警察庁は仕組みを改めた。チェック票で危険性を判断し、加害者が過去に似た行為をしていないか確認するよう全国に通知した。
しかし今回のように、警察の判断で入り口から違う扱いのレールに乗せられてしまえば、対応の改善策も意味がない。
警視庁は3年前、別の女性からも同じ男についての相談を受けていたが、男の氏名を情報共有システムに記録するのを忘れていた。
冨田さんの相談を受けた署は、ツイッターの内容から、ただちに身に危険が及ぶ可能性は低いと判断したという。男のものとみられるブログに「死ね死ね」などの書き込みがあることは事件後まで気づかなかった。
「この種の事案は急展開して重大事件に発展するおそれが高く、相談者の身体に危険が迫っているおそれがあることを常に念頭に置く必要がある」。3年前の警視総監の言葉を、警察はもう一度かみしめてほしい。
ツイッターやLINEなど、つきまといの手段は多様化しており、効果的な対応が必要だ。警察は一連の対応を検証し、問題点を真剣に洗い出すべきだ。
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