口永良部島の噴火から1年 活性化担う人材確保が課題

口永良部島の噴火から1年 活性化担う人材確保が課題
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鹿児島県の口永良部島で爆発的な噴火が起きてから29日で1年になります。一時は島の全域に出された避難指示は、一部を除いて解除されていますが、島に戻った住民は噴火前の8割足らずで、島の活性化を担う人材をどのように確保し、復興につなげていくのかが課題となっています。
鹿児島県屋久島町の口永良部島では、去年5月、爆発的な噴火が起きて、島の全域に避難指示が出され、すべての住民が、一時、島の外に避難しました。
去年12月に、避難指示は一部の地区を除いて解除されましたが、噴火のあと、診療所の唯一の医師が島を離れ医療の環境に不安を感じたり、再び噴火が起きることをおそれたりして、島に戻らなかった人もいます。
また、10世帯20人には、引き続き避難指示が出されていてこのうち7世帯10人は隣の屋久島の仮設住宅や鹿児島市などで避難生活を続けているため、島の住民は噴火前の8割足らずの108人にとどまっています。
屋久島町は、ことし秋にも口永良部島の復興計画を策定する予定ですが、島の活性化を担う人材をどのように確保し、復興につなげていくのかが課題となっています。

専門家「今後も噴火起きうる」

鹿児島県の口永良部島の火山活動について、専門家は「1年前と比べて活動は低下した状態だが、火山ガスの放出量のデータは今後も噴火が起きうることを示している」として引き続き警戒が必要だとしています。
口永良部島の新岳では去年5月29日に噴煙が火口から9000メートル以上に達する爆発的な噴火が起きたあと、去年6月19日を最後に噴火は発生していません。
口永良部島の火山活動に詳しい京都大学火山活動研究センターの井口正人教授は「1年前と比べて火山活動は低下しているが完全に終息したと言える状態ではない。火山ガスの放出量は1日当たり100トンほどと、噴火活動が続く桜島と同じようなレベルで、依然として噴火が起きうることを示している」として引き続き警戒が必要だとしています。気象庁は噴火警戒レベル5の噴火警報を継続していて▽火口からおおむね2キロ以内では大きな噴石に▽火口西側のおおむね2.5キロ以内では火砕流にも厳重に警戒するよう呼びかけています。

夏の伝統行事は復活へ

口永良部島では、去年は噴火の影響で開催が見送られた伝統行事の「棒踊り」が、この夏、2年ぶりに行われます。
口永良部島では、毎年、夏になると、山の神を鎮め、島の繁栄を祈願する棒踊りが、金峯神社の祭りで奉納されますが、去年は、噴火の影響で開催が見送られました。
しかし、去年12月に一部の地区を除いて避難指示が解除され、住民が島に戻ったことで、ことしは7月に棒踊りが行われることになりました。
今月上旬から、ほぼ2日に1度、公民館の前で棒踊りの練習が行われていて、本村地区の区長、貴舩森さん(44)も初めて参加する中学生などに踊りの指導をしています。
貴舩さんは、噴火前に住んでいた自宅が今も警戒範囲に指定されている地区にあるため、戻ることができず、別の地区に家を借りて住んでいます。
貴舩さんは「集まって練習をしていると、ようやく元の生活に戻れているような実感がもてる」と話し、祭りの日を心待ちにしていました。
そして、「昔のように季節を問わず花が咲いている島にして、住民の自信と誇りを取り戻したい」と復興に向けての思いを語っていました。

島の将来に不安も

口永良部島では、去年12月に一部の地区を除いて避難指示が解除され、島で商売を再開した人もいますが、訪れる観光客が減っていて、将来に不安を感じる住民もいます。
口永良部島の本村地区で、島で唯一の酒屋を営む渡邉百一さん(69)は、避難指示が解除された去年12月25日から営業を再開しています。
店は、渡邉さんが4年前に開き、妻の悦子さん(67)とともに住民や観光客に酒やたばこなどを販売してきました。
渡邉さんは観光客向けの土産物として夜光貝の貝殻を加工したアクセサリーを作って販売してきましたが、店を再開したあとは以前より訪れる客が減っているということです。
住民の中にも島を離れた人がいるなか、将来に不安を感じています。渡邉さんは「人が集まってこそにぎやかさが出て、活気も戻ってくる。火山の状況が早く落ち着いて、噴火前のように観光客に来てもらいたい」と話していました。