事実誤認に基づくコラムです。
日本は富裕国としてのステージに入ったのであり、緩やかなリセッションと緩やかなデフレに周期的に見舞われているとはいえ、個々の労働者の購買力という点から見れば豊かになる一方なのだ。
日本の1人当たりGDPはバブル崩壊、金融危機、リーマンショックを経ても増加を続けており、2015年には過去最高となっています。
しかし、「個々の労働者の購買力という点から見れば豊かになる一方」ではありません。国税庁の「民間企業給与実態統計調査」から男の年齢階層別の実質平均給与を見ると、2014年はピークの年から10~15%も減少しています。
日本全体としては豊かになっても、企業がその多くを懐に入れてしまい、労働者には分配されなくなってしまったことが「緩やかなリセッションと緩やかなデフレ」の根源です。
次の箇所もよくある誤解です。
政府債務がGDP比で250%近い水準で推移しているなかで、将来的に低成長ないしゼロ成長ということになると、移行期に伴う大きな問題が生じる。何より、それだけの債務をどうやって返済するのかという問題がある。
政府は個別の債務(国債)を返済する必要がありますが、債務を全体として返済する必要はありません。そもそも、政府の債務はマネーの相当部分を形成しているため、返済すればマネーが大幅に不足して経済は「貧血」に陥ってしまいます。
地球は有限の空間なので、「成長」への信仰を疑ってみることは大切でしょうが、解決可能な問題を放置することは別問題です。
外人にも日本人の「仕方がない」病が伝染してきたのでしょうか。