憲法は改正によって生命を保つ:『憲法改正とは何か』
朝日新聞の根本論説主幹は「首相が憲法改正をいうのは立憲主義を傷つける」と信じているらしいが、世界最初の成文憲法であるアメリカ合衆国憲法は、これまで27回も改正された。本書は合衆国憲法が、時代とともに改正されて生命を保ってきた歴史をたどっている。
1787年に起草された合衆国憲法草案はたった7条しかなく、1789年に10条の修正条項からなる権利章典を加えて最初の憲法ができた。それは連邦政府の統治機構(constitution)の骨格を定めるだけで、具体的な行政は各州にゆだねられたので解釈の余地が広かった。
また憲法改正が困難(両院の2/3以上で発議して3/4の州議会で批准が必要)なので、今までに1万2000近い改正案が議会で発議されたがほとんど実現せず、多くの改正は解釈改憲で行なわれた。たとえば婦人参政権を定めた修正19条は1878年に議会に提出されたが、憲法が改正されたのは1920年だった。その間に各州で、憲法解釈を変えて婦人参政権が認められた。
解釈改憲の方法としては、連邦最高裁の判決の他に、州議会や大統領が憲法解釈を変える方法もあった。特に1930年代にローズヴェルト大統領の実施した「ニューディール」の多くは連邦政府が各州の行政に介入する政策で、連邦最高裁が違憲判決を出したが、大差で再選された大統領はそれを無視して同様の新法を制定した。
必要な政策が憲法に合わないとき、変えるべきなのは憲法であって政策ではない。その改正に時間がかかる場合は、大統領や議会が憲法の解釈を変えることもある。こうして合衆国憲法の骨格は200年以上おなじだが、今も活用されて国民に定着している。
著者もいうように、憲法の制定と改正は一体である。アメリカ独立宣言には「いかなる政府でもその目的に反するときは、人々は政府を変更あるいは廃止し、新しい政府を樹立する権利をもつ」と書かれている。憲法の制定も改正も国民の最大の権利であり、それこそが立憲主義の本質なのだ。
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