『ララピポ:奥田英朗』幸せとは縁遠い人々の物語
今回ご紹介するのは、奥田英朗さんの、ララピポという作品です。
奥田さんといえば、精神科医の伊良部シリーズが有名ですね。
このララピポは、伊良部シリーズと比べると、暗くて陰鬱な雰囲気の作品です。
世間的に、社会の底辺と呼ばれる人たち。
彼らが現状を打開するために奮闘したり、
やっぱり諦めたり、
破滅したりする物語。
それをどこか、アイロニックに面白おかしく書いています。
センチメンタルな気分になれる、1冊です。
以下、裏表紙より一部引用
みんな、しあわせなのだろうか。「考えるだけ無駄か。どの道人生は続いて行くのだ。明日も、あさっても」。対人恐怖症のフリーライター、NOと言えないカラオケボックス店員、AV・風俗専門のスカウトマン、デブ専用DVD女優のテープリライター他、格差社会をも笑い飛ばす六人の、どうにもならない日常を活写する群像長編。
第1話あらすじ
全6話で構成されています。
1話ずつ主人公が変わりますが、他の話の主人公が他の話でわき役として登場したりします。
ここでは第1話「What A FOOL BELIEVES」のあらすじを少しだけ紹介しますね。
32歳のフリーライター、杉山博は対人恐怖症を患っていた。
そうなってしまった原因に心当たりはあるが、わざと見ないふりをしている。
ライターとしての収入は月に14万円ほどだが、家賃が10万する家に住んでいる。
生活はとっくに破たんし、貯金を少しずつ食いつぶす生活だが、引っ越す予定もない。
自分は1流大学を卒業したというプライドが、彼にはあった。
上の階に住むホスト風の住人が、連日連れ込む女の嬌声をおかずに、自らを慰める毎日。
彼の頭は煩悩に支配されつつあった。
そんなある日、行きつけの図書館でナンパした1人の女性と関係を持つ。
お世辞にも美しいとは言えない容姿の持ち主ではあった。
そうであったからこそナンパすることができたとも言える。
何回か関係を持つと、女は段々と図々しくなってきた。
嫌気がさした杉山は女と別れる。
彼の急転落は、ここから始まった。
感想:読んでいてしんどくなるが、読むのを止められない
6人の主人公は全員、傍から見るとめちゃくちゃしんどそうな生活をしています。
しかし、当人たちはいたって普通に生活をしているよう見えるのです。
頭の片隅では、自分の現状が異常だということを分かっているのでしょう。
だけど、それを頑なに認めないようにしています。
認めてしまえば、何もかも完璧に壊れてしまう気がするからです。
壊れるのは、現状に似合わないプライド。
捨ててしまえば楽になれることは、分かっているけれど、捨てられない。
プライドってそういうものですよね。
私も、くだらないプライドを持っている人間の1人です。
これでも、自尊心の塊であった時期から比べれば、ずいぶんと身軽になったと感じています。
自分のプライド1枚ずつ脱ぎ捨てる作業は、長い時間と、強い覚悟、そして勇気が必要でした。
もしあの時、プライドを捨てないことを選択していたら……。
私も、この「ララピポ」の主人公達のような生活をしていたのかなぁと感じました。
まとめ
悪い言い方ですが、他人の不幸を見ると、自分の心が少し軽くなることって、ありますよね。
どうもムシャクシャする時に、この本を開いてみると、同じ効果が得られることでしょう。
自分が既に底辺にいると思い込んでいる6人の主人公達は、軒並みさらにひどい目に会います。
まさに「泣きっ面に蜂」小説です。
最近自分はどうにもついていない、と感じている方。
ぜひこの作品を読んで、「上には上がいる」という言葉の意味を、噛みしめて下さい。
最後に
最後まで読んでくださりありがとうございます。
今日のオススメ本、いかがでしたか?
こんな時に読む本をお勧めしてほしい。などあれば、コメント等でお知らせください。私、とても喜びます。
読んだ感想などお聞かせいただければ、これもまた、とてもうれしいです。
ぜひ私と、読書体験を共有しましょう。
目的別おすすめ度
泣ける本:★★☆☆☆ 2
笑える本:★★★☆☆ 3
怖い本:★★★★☆ 4
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