熊本地震の発生からおよそ1カ月半、被災地の自治体職員は今も復旧作業や住民への対応に追われている。熊本市ではアンケートに回答した職員の1割以上に「うつ」などの疑いがあるとして、産業医との面談が必要な状態に。多忙を極め、心身を擦り減らしている。
休み返上で業務を続ける益城町職員=27日、町中央公民館
熊本市は4月14日の前震後、再任用を含む全職員約6800人を招集。避難所での対応や被害状況の把握などに当たり、今も全員態勢が続く。労務厚生課によると、各課の勤務状況は未集計だが、「いまだに休みがほとんど取れていないところもある」と話す。
このため、職員の「心の健康」を不安視する市は、嘱託を含む約1万人にアンケートを実施し、「寝付けない」「疲れやすく、身体がだるい」など12項目を質問。27日までに回答した約1300人のうち、197人に「うつ」や「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」の疑いがあるとして、産業医への面談を勧めた。既に25人が面談を受けたが、今のところ治療や休養が必要と判断された職員はいないという。総務局は18日、「平日に交代で休めるルールづくり」などを各課に求める通達を出した。
ただ、アンケートには「休みを取りたいが言い出せない」との意見も。通常の日勤を挟んで避難所での夜間勤務に当たり連続30時間以上の勤務になる人もいる。職員らは「震災後の時間外勤務が300時間を超えた人も多い」「余震が続き、震災対応に終わりが見えないのが精神的にきつい」と訴える。
益城町の職員も業務に忙殺されている。休めない理由として聞こえてくるのは、「担当業務の状況が刻々と変わる」「休むための引き継ぎの時間がもったいない」「応援を受けている手前、休むにはプレッシャーを感じる」といった声だ。
「地震発生から1日しか休んでいない」としながらも、罹災[りさい]証明書の発行に当たる職員は「町民のため気持ちを高めて仕事をしている。つらいとは思わない」と言い切る。ただ、町幹部は「クレームを直接受けるような部署では、心が爆発寸前になっている職員もいる。何とかしなければいけないが…」と悩ましげ。26日には管理職対象のメンタルヘルス研修を実施した。
森田茂総務課長は「今後は生活支援やがれき解体の受け付けなどが本格化し、さらに業務が増えるとみられる。全職員を対象にメンタルケアを進め、体調管理に気を付けたい」と話している。(石本智、後藤幸樹、池田祐介)
◆マンパワー足りない
澤田道夫・県立大准教授(行政学)の話 1990年代以降、行財政改革の一環で行政職員を削減する圧力が強まり、非正規で穴埋めする事態が続いてきた。平時ですら大変な態勢で今回の災害に対応しなければならず、明らかにマンパワーが足りていない。特に益城町などは人口が増加した割に、行政規模が小さい。自治体が抱える潜在的な問題が表面化し、罹災[りさい]証明書の発行などが遅れている。災害を機に、適正な職員数を検討すべきだ。
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