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【首都スポ】

サクラの平野 聖地見参 ラグビーアジア王座へ きょう香港戦

2016年5月28日 紙面から

プレーは激しいが、ヘッドキャップを脱ぐと優しい顔に戻るWTB平野恵里子=秩父宮で(大友信彦撮影)

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 ラグビーのアジア選手権は28日、男女とも優勝がかかった日本×香港戦が秩父宮ラグビー場で行われる。サクラフィフティーン(女子15人制日本代表)のWTB平野恵里子(24)=横浜TKM=は、代表デビューとなった7日のアウェー戦に続き東日本大震災の津波で傷ついた故郷・岩手への思いを背負い、国内初テストマッチに臨む。男子のFB野口竜司(東海大3年)は“ポスト五郎丸”目指し代表定着にチャレンジする。目前に迫ったリオ五輪、来年の女子15人制W杯、19年の日本開催W杯、さらに20年の東京五輪へ−それぞれの目標を見据えて、まずはアジア王座をつかみ取る!! (大友信彦)

 本来なら平野恵里子の日本代表デビューは、4月30日のニッパツ三ツ沢のはずだった。しかし、カザフスタン、シンガポールの2チームが参加を辞退して試合は中止に。日本代表デビューは今月7日、アウェーの香港戦となり、28日が国内での日本代表初陣。記念すべき国内デビューを、日本ラグビーの聖地・秩父宮で迎えることになった。

 「うれしいです。今まで何度もここで代表の試合を見て『ここに立ちたい』と思っていたので」

 生まれは、岩手県大槌町。釜石高を卒業した10日後に、東日本大震災が発生した。生家は津波にのまれた。震災から3週間後、父が職場から借りたクルマに乗って上京し、日体大へ。以来、故郷の人たちに明るいニュースを届けたい一心で楕円(だえん)球を追ってきた。

 日体大4年の一昨年暮れ、リオ五輪に向けた7人制日本代表候補合宿で右膝の靱帯(じんたい)断裂の大けがを負い、ほぼ1年を棒に振った。しかし、横浜TKMに進んでリハビリを続け、昨年11月の全国女子交流大会で完全復活。

 7日の香港戦では前半22分に日本代表デビューを飾るトライも決めた。WTBとしてトライを取り切るスピードと決定力に加え、足が届くところならどこまでも追う力強いタックルで、39−3の勝利に貢献。地元・岩手の友だちや、釜石シーウェイブスジュニアのコーチからも「おめでとう」「youtubeで見たよ」「ナイストライ」と電話やメールが大量に届いた。

 一度は絶望的に見えたリオ五輪への道も「ほんの少しでも残っているなら、その隙間にでも入れるようにアピールしたいです」。それも、自分の活躍を地元の人たちが喜んでくれるからだ。

 震災以来5年、仮設住宅で暮らしてきた両親、祖母ら家族は、来月、高台に再建した新居に引っ越す。

 新築祝いのトライと勝利を地元へ−そんな気持ちと同時に、胸にわき上がるのは、九州・熊本への思いだ。余震のニュースを聞くたびに、5年前の自分の、余震のたびに波打った感情を思いだす。

 「まだまだ落ち着かないと思うけど、このチームには九州出身の選手もいっぱいいるし、私も岩手の代表として、みんなと一緒に頑張ることで、岩手にも九州にも元気になってもらえたら」

 被災地同士、スクラムを組んで、前へ進もう。その思いを胸に、エリコはトライライン目指して走る。

    ◇

 首都圏のアスリートを全力で応援する「首都スポ」面がトーチュウに誕生。連日、最終面で展開中

 

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