オバマ大統領の所感 評価や批判の声

オバマ大統領の所感 評価や批判の声
アメリカのオバマ大統領が被爆地・広島を訪問し、核兵器の廃絶に向けて取り組む決意を表明したことについて、各界からさまざな意見が出ています。
広島県尾道市出身の映画監督で、作品や講演を通じて平和を訴え続けている大林宣彦さんは、自宅のテレビで広島市の平和公園で行われたオバマ大統領のスピーチを聞きました。
大林監督は「被爆者の方と握手した時のオバマ大統領の笑顔は本当にいい表情で、『未来はこういう笑顔で触れ合おう』という、ことば以上のメッセージだと思いました。『軍事力による平和』を象徴する世界のトップリーダーのオバマ大統領と、『戦争がない平和』を願う被爆者たちが広島で出会ったことが、世界に大きな影響を与えることを信じたい。きょうの出来事はきっと未来にいい夢を残していくと思いますが、それは、このスピーチを聞いた日本やアメリカ、それに世界に生きる私たちの責任だと思います」と話していました。

映画監督 大林宣彦さん「未来にいい夢残す」

広島県尾道市出身の映画監督で、作品や講演を通じて平和を訴え続けている大林宣彦さんは、自宅のテレビで広島市の平和公園で行われたオバマ大統領のスピーチを聞きました。
大林監督は「被爆者の方と握手した時のオバマ大統領の笑顔は本当にいい表情で、『未来はこういう笑顔で触れ合おう』という、ことば以上のメッセージだと思いました。『軍事力による平和』を象徴する世界のトップリーダーのオバマ大統領と、『戦争がない平和』を願う被爆者たちが広島で出会ったことが、世界に大きな影響を与えることを信じたい。きょうの出来事はきっと未来にいい夢を残していくと思いますが、それは、このスピーチを聞いた日本やアメリカ、それに世界に生きる私たちの責任だと思います」と話していました。

脚本家 早坂暁さん「具体的な覚悟をみせて」

被爆者の人生を描いた「夢千代日記」の作者で、原爆を題材にしたテレビドラマなどを数多く手がけている脚本家の早坂暁(86)さんは、「もっと早く広島に来るべきだった。核を廃絶したいというのは当たり前でよいことだが、具体的にどれだけの覚悟があるのかみせてほしい」と述べました。
さらに早坂さんは、オバマ大統領の述べた所感について、原爆を投下した事実を過ちとして認めるべきだったと指摘したうえで、「語り口はまるで詩人のようだが、原爆を天から降らせたのはアメリカだ。今や核を持つ国々が増えて、制止することもできないが、現在の危機的な状況を作り出したのは誰なのか。それを率直に語りもせず、本当に広島に来るだけの覚悟があったのかと言いたい」と批判しました。

原爆の図丸木美術館「きょうを核廃絶の最初の一歩に」

埼玉県東松山市にある「原爆の図丸木美術館」は、画家の丸木位里、俊夫妻が、原爆投下後の広島や長崎の凄惨(せいさん)な姿を30年にわたって描き続けた連作の絵画、「原爆の図」を展示していることで知られています。
オバマ大統領の広島訪問の様子をテレビの中継映像で見守った美術館の学芸員、岡村幸宣さんは「オバマ大統領の所感を通じて、甚大な犠牲をもたらした広島から核廃絶を訴えたいことは理解できた。私たち一人一人が責任を感じて、きょうという日を核廃絶のスタート、最初の一歩にしていかなければならない」と述べました。

ジャーナリスト 松尾文夫さん「プラハ演説ほどの熱気感じず」

ジャーナリストの松尾文夫さんは、元共同通信ワシントン支局長で、10年余り前から日米の相互理解のため「アメリカの大統領は原爆の慰霊碑に花束を手向けるべきだ」とする提言を行ってきました。
今回の訪問を広島で取材した松尾さんは「核軍縮の新たなイニシアチブを示したわけでもなく、2009年のプラハ演説のときほどの熱気を感じなかった」と指摘しました。
一方で、「オバマ大統領が広島に来たこと自体は評価できるもので、和解を進めるきっかけになる。今後は日本もロシアや中国、韓国などと戦争にどうけじめをつけるのか、総理大臣が象徴的な場所を訪れるなどの行動が必要だと思う」と話しています。

長崎大学核兵器廃絶研究センター「歴史的転換点となる演説」

長崎大学核兵器廃絶研究センターの鈴木達治郎センター長は「核兵器のみならず、戦争そのものの悲惨さを訴える内容で、2009年のプラハでの演説に続いて、核兵器の廃絶に向けた歴史的な転換点となるすばらしい演説だったと評価できる。
一方で、実際に核兵器を持っている国として、どうやって廃絶を求める被爆者の声に応えるのかという点は残念ながら少なかった。また、スピーチに『長崎を最後の被爆地に』というメッセージが含まれていればもっとよかったと思う」と話しました。
そのうえで、今回の訪問について「被爆地を訪れ、資料館や原爆ドームを見れば、核兵器は使ってはいけないと率直に思うはずだ。それがほかの核保有国のリーダーに伝わり、今後、核兵器廃絶に真剣に取り組むきっかけになることを望みたい。演説が具体的な行動につながらなければ、今回の歓迎が落胆に変わる可能性は十分にある」と話していました。

明治学院大学 高原教授「新しいメッセージほしかった」

国際政治が専門の明治学院大学の高原孝生教授は「アメリカにとっての原爆のイメージは、B29のコクピットから見たキノコ雲の光景だが、今回のメッセージは普通の生活を送っていた人たちや子どもたちが原爆の犠牲になったことをオバマ大統領が実感したように思えた。このメッセージによってアメリカの人たちの関心が向いてくれれば、非常に意義あることだ」と評価しました。
また、「核兵器の廃絶に向けて新しいメッセージを発してほしかったし、多くの被爆者の人たちもそう思ったのではないか。難しいことは理解できるが、具体的になすべきことについて一切言及がなかったのは残念だ。今回のメッセージは『核なき世界』への出発点であり、これからの取り組みで今回の訪問を歴史的なものにしていかなければならない」と指摘しました。