【動画】中国船から衝突され、船を沈没させられた漁師=佐々木学撮影
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 ベトナムと中国が領有権を争う南シナ海の西沙(ベトナム名・ホアンサ)諸島付近で5月3日深夜、34人乗りの木造ベトナム漁船が、中国所属とみられる船に衝突されて横転、沈没した。「死ぬかと思った」――。九死に一生を得た中部クアンナム省のファム・フー・タイン船長(50)らが、朝日新聞の取材に恐怖の体験を語った。

 タイン船長によると、衝突は真っ暗闇の中で突然、起きた。

 「『ドン』と大きな衝撃が船室を襲った。大きな船が漁船の右舷中央部にぶつかった。船は横転し、我々は海に投げ出された」

 漁師34人は約10時間、船に載せていた竹製のおわん型の小型ボートや竹ざおにつかまって漂流。翌日の昼、救難信号に気付いて近づいた別のベトナム漁船に救助された。

 タイン船長は「深夜のため、衝突してきた船舶の番号は確認できなかった」と言うが、別の船員らは「形状から中国の監視船に間違いない」と話す。

 中国が領有権を主張する西沙諸島や南沙(スプラトリー)諸島の近海では、中国監視船が「取り締まり」としてベトナム漁船の操業を妨害する事案が相次いでいる。