ゾウの「はな子」に花束やリンゴ、市民が死を悼む

2016年5月27日12時47分  スポーツ報知
  • 26日に死んだ「はな子」のコーナーに設置された献花台
  • 「はな子」のコーナーに設置された献花台に手を合わせる人

 国内で飼育された最高齢のゾウの「はな子」が26日、69歳で死んだ。1954年から飼育していた東京・武蔵野市の井の頭自然文化園では27日、雨の降る中、朝から多くの人が訪れ、設けられた献花台に花束やリンゴ、バナナなどを供えて手を合わせた。長く市民に親しまれたはな子らしく、お年寄りの姿も多くみられた。

 はな子は26日朝、朝番の飼育員が横になっている姿を発見。いつも横になることはないため、上野動物園や多摩動物園から道具と応援を要請、ロープで体を起こそうとしたが、午後3時4分、約20名の職員が見守る中息を引き取った。園は午後5時に閉園したが、その後ニュースが流れると園を訪れる人が後を絶たず、27日午前9時半の開園には、入り口に30本近い花束が置かれていたという。

 はな子は49年、戦後初めてタイからやってきた雌ゾウで、戦争中に餓死させられた上野動物園の「花子」の名を受け継いだ愛着のあるゾウ。武蔵野・三鷹市民の強い要望で同文化園にやってきたが、数奇な運命をたどった。

 深夜に侵入した酔客と飼育員に対して2度の死亡事故を起こし、「殺人ゾウ」として鎖につながれ人間不信に。その後、飼育員が30年かけて心を開いた物語は「父が愛したゾウのはな子」(山川宏治著)として本に描かれ、ドラマ化もされた。

 2011年には、国際的な飼育方法に合わせて、飼育員が柵の外から世話をする準間接飼育に移行したため、再びストレスを感じるようになったはな子。昨秋には、あるブロガーが、コンクリートに囲まれた環境が劣悪だとして英文で発信。「世界一悲しいゾウ」として、英国の環境保護団体が「コンクリートの牢獄から開放を」と批判する騒ぎになった。

 はな子は3月14日に運動場の工事をしたことをきっかけに運動場に出なくなり、室内で過ごしていた。同21日には69歳を祝う誕生会を行う予定だったが、中止となっていた。

 園では27日にはな子を解剖し、詳しい死因を調べている。

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