欧州の首脳は、英国が国民投票で離脱を選択した場合に備え、安全保障と防衛面での緊密な協力に焦点をあてた「B案」(第2案)を策定するなど、英国離脱後の将来についての協議を水面下で加速させている。
この数週間にドイツのハノーバーやローマ、ブリュッセルで次々と行われた会合で、欧州連合(EU)の首脳とその側近らは英国のEU離脱「ブレグジット」に対するEUとしての対応をどうまとめ上げるかについて協議してきている。英国が離脱すれば、60年の歴史を持つ欧州経済ブロック史上で最大の後退となる。
政治家や政府関係者十数人以上がフィナンシャル・タイムズ紙に対し、「後戻りできないEUの性格の強化のため」と、EUの行く手を阻む多くの内部対立への対応のための一致した取り組みを行うことについて、それぞれの考えを述べた。メルケル独首相とオランド仏大統領はユーロ圏の統合への動きの迷走を避ける考えだ。そのため、ユーロ圏19カ国以外の国々にも魅力のある、より異論の少ない安全保障と防衛面での協力の推進に目を向けている。
最も重要なのは、英国の国民投票後に予想される金融と政治の混乱をどう乗り切るかということだ。市場安定のための声明をまず出した後、EU指導者が考えているのは、英国を除くEU各国首脳の会合で対応を協議すること。加盟全28カ国の首脳会議が6月28日と29日に予定されている。
この計画に携わるある政府高官は次のように述べた。「皆が『残念だ。これ(英離脱)は歴史的な大災難だが、こうなった以上前進するしかない』と言うだろう。それから、『では、キャメロン首相とはここでさよならだ。これから27カ国での協議がありますから』と言うだろう」
同高官はさらに続けた。「それはかなり決定的な瞬間となるだろう。つまり、残りの27カ国が元気を奮い起こして、共通の課題を定義できるよう意見の歩み寄りを見せるのか、それとも、19カ国だけになってしまうのか」
フランスの政府関係者らはブレグジットが他の加盟国にも伝染し、同国の極右政党、国民戦線のマリーヌ・ルペン党首のようなEU懐疑派による反乱が巻き起こることを危惧している。同国の政府関係者らは、EU離脱が英国にとって高くつくことを示す厳しい、制裁色のあるメッセージを出す強い覚悟を決めている。ある仏高官は「離脱の影響を軽視し、最小限の結果しか予想しなければ、欧州をリスクにさらすことになるだろう」と述べた。「欧州を守るには、結果について考えるという原則が非常に重要だ」
「B案」策定を中心になって進めている欧州の別の指導的立場の政治家は「ブレグジットを成功させるということは、EUが終わるということだ。そうさせてはならない」と語った。