サムスン電子が有機ELテレビ市場に今後本格参入するという報道もあれば、有機ELテレビに見切りをつけたとする報道もあるようだ。中国メディアの中国家電網は23日、この互いに矛盾する2つの報道の背後に隠されたサムスン電子の真意を分析している。

 記事は撤退を示唆する情報としてサムスン電子テレビ事業部のある責任者の見解を紹介。この責任者は、サムスンには有機ELテレビ陣営に今すぐ参加する考えはなく、少なくとも2、3年はそうしないという見解を示しており、しかも「有機ELテレビに未来はない」と発言したという。

 一方で記事は、サムスンは有機ELテレビの発展に向け、巨額を投じて最新の有機EL生産ラインを設置する可能性について言及する報道もあることを紹介し、こうした2つの報道の矛盾について「サムスン側は沈黙を守っている」と説明。しかし「サムスン電子が有機ELテレビから手を引くのはあり得ない」ことであり、「有機ELテレビに未来はない」とする宣言は「策略の1つではないか」と論じた。

 この宣言はLG製の有機ELテレビの社会に対する影響力を弱め、「その間にサムスンは自社製の有機ELテレビ生産に必要な技術突破の時間を稼ぐ」目的があると記事は分析。記事によれば「サムスンは決して有機ELテレビに未来はないと考えてはいない」。ただ「大画面有機ELパネルの大規模量産をなかなか実現できない」ゆえにこの策略を用いたという見方を示した。

 一部資料によればサムスンが「大画面有機ELパネルの大規模量産をなかなか実現できない」理由は、有機EL素子のカラー化方式にRGB発光素子を採用しているからだ。LGが採用している白色発光素子にカラーフィルターを組み合わせる方式に比べて歩留まりが悪いため、コスト面で大規模量産の足を引っ張るという。

 記事によれば現在は「有機EL産業の爆発的拡大の前夜」であり、2018年に有機ELの全面的な大規模量産が始まると指摘。サムスンが有機ELテレビを見限っていないという記事の指摘が事実だとすれば、大画面有機ELパネルの大規模量産技術を確立するためにサムスン電子に残された時間はわずかだといえる。

 サムスン電子はスマートフォンなどに用いられる小型有機ELパネルで世界トップのシェアを有すが、そうした世界トップレベルの技術を持つメーカーが、確かに大画面有機ELテレビ市場という宝の山をみすみす捨てるというのは考えにくい。他社製を超える鮮明度を持つ有機ELテレビが近い将来サムスンから発表されるというのは十分考えられることだ。(編集担当:村山健二)(イメージ写真提供:123RF)