シラウオの生食について
新鮮で美味しい生のシラウオには、横川吸虫Metagonimus yokogawai という寄生虫の幼虫がいて、ヒトに危害を与えます。
近年、人間ドック受診者における横川吸虫卵の陽性率は、増加傾向にあることが報告されています。
埼玉県衛生研究所では埼玉県市場衛生検査センター(2003年3月末で廃止)と共同で、市場を経由して県内に流通するホタルイカ、シラウオ、サワガニ及びドジョウにおける寄生虫の保有状況を調査いたしました。
今回はシラウオにおける横川吸虫の寄生状況と、いくつかの知見をご紹介いたします。
横川吸虫とは
- 成虫は体長1.0~1.7mm、体幅0.5~0.7mmと小型の吸虫です。
- この幼虫(メタセルカリア)はシラウオ、アユ、ウグイなどの川魚に寄生しています。すなわち、これらを生で食べると、この寄生虫に感染する可能性があります。
- シラウオから検出されたメタセルカリアは、類円形または楕円形をしています。
- 計測した12隻では厚さ3.9μmの内嚢で覆われ、大きさは129~160×113~137(平均139.9×124.3)μmです。
- 脱嚢させると、扁平卵円形で前体部がやや狭小していた体表には、明瞭なウロコ状の皮棘が後体部半ばまで見られます。
- 計測した5隻では、体長203~400(平均286)μm、体幅78~154(平均102)μmであり、口吸盤は38~43×20~40(平均40.2×33.4)μmであり、咽頭は楕円形で28~40×16~24(平均33.3×19.5)μmです。
- 腹吸盤生殖盤装置は20~40×14~26(平均26.8×18.4)μmであり、体長に対し先端部から51~63(平均57.8)%の右腸脚に接した位置に存在し、排泄嚢は扁平で、内部の排泄顆粒は大小不揃いです。
感染すると、どんな症状を起こすのか
- 少数寄生では、無症状で経過します。
- 多数寄生するとカタル性炎症を起こし,腹痛,下痢などの症状を起こします。
調査方法
- 2001年及び2002年に、各地から入荷した生のシラウオ約200g入りのパックを購入して、それぞれランダムに100~200尾を対象に検査しました。
- シラウオはそのまま板ガラス2枚の間に挟んで圧平し、実体顕微鏡下で観察しました。
- 検出されたメタセルカリアは、形態観察と計測を行い同定しました。
検査結果
- 生シラウオ19パックについて検査した結果、15パック(78.9%)から横川吸虫のメタセルカリアが検出され、総数2,300尾のうち、537尾(23.3%)が陽性でした。
- シラウオに寄生した横川吸虫メタセルカリアは、一部を除き運動性が認められ、生存していることが確認されました。
- メタセルカリアの寄生率は、産地によって差が認められました。
- これらの結果から、シラウオの生食による横川吸虫症感染の危険性が示唆されました。
写真:シラウオにみられる横川吸虫のメタセルカリア
まとめ
- 横川吸虫の幼虫は、多数寄生するとカタル性炎症を起こし、腹痛、下痢などの症状を起こします。
- 市販の生シラウオには、横川吸虫の幼虫が生きた状態で寄生しています。
- 今回の調査結果から県内に流通するシラウオの汚染実態が明らかとなり、生食による横川吸虫症感染の危険性が示唆されました。