【5月27日 AFP】シリア人のモハメド・サビーフさん(64)は、祖国で最も有名なモザイク美術館の上級修復士だった。だが、住んでいたイドリブ(Idlib)県に内戦が及び、芸術品は破壊され、自分や家族の命が脅かされると逃げ出さざるを得なかった。

 再び、美術館で働けるとは夢にも思っていなかった。しかも、ゴムボートで地中海(Mediterranean Sea)を渡り、バスや電車を延々乗り継ぎ、何時間も歩き、23日間かけてたどり着いたドイツで、それが実現するとは。

 首都ベルリン(Berlin)最大の美術館で、新たにドイツに来た人々を起用して、難民向けのアラビア語ガイドを養成するプロジェクトがあると聞き、サビーフさんはそのチャンスに飛びついた。シリアではマーレトヌーマン(Maaret al-Numan)の美術館で働いていたサビーフさんは「シリアでの仕事が大好きだった。ここでガイドとして働けることで、祖国での生活を少し取り戻せる気がする」と語った。

 昨年8月にドイツに到着したサビーフさんは現在、ボーデ美術館(Bode Museum)でシリア人やイラク人などアラビア語圏の難民向けの館内ツアーガイドを務めている。ここには、イタリアのラベンナ(Ravenna)産の大きなモザイク画も収蔵されている。