僕の友人のAとBは同じ女を好きになった。
AとBは毎日その女に話しかけ、どちらが優勢になるわけでもなく、うざがられるわけでもなく、むしろA・B・女の『仲良し3人組』が出来上がっていた。
僕から見た感じでは、その女はAとBの両者に同じくらいの好印象を抱いているようだった。
しかし、AにしてもBにしても『仲良し3人組』という関係をさっさと崩したいと思っていた。早く告白して早く付き合いたい、と。
あるときAはBに言った。「俺、そろそろ告白しようと思うんだ。良いよな?」と。そう言われて「ああ、いいよ」と首を縦に振る馬鹿はいないだろう。Bは思いきり首を横に振って「いや、ダメだ」と叫んだ。おそらく前夜に寝違えて首を横に振れない状態だったとしても、むりやり横に振り回したであろう。そのくらいの勢いある否定であった。
これは喧嘩の始まりか?…と、僕が第三者的立場の余裕で傍観していると、Aが唐突に数学の話を持ち出した。「くじの公平性って知ってるよな?」と。
「例えば10本のくじがあって、そのうちの2本が当たりだとする。まず1人目がくじを引き、そのくじを元に戻さずに2人目がくじを引く。このとき、2人目が当たりを引く確率は1人目よりも低いと思われがちだが、2人目が当たりを引く確率は1人目と同じ『5分の1』なんだ。
2人目が当たりを引く確率は、このように求める。
(i)1人目が当たった場合
2/10×1/9=1/45
(ii)1人目がハズレた場合
8/10×2/9=8/45
(i)(ii)より、1/45+8/45=9/45=1/5
くじを引く順番が2番目でも不利ではないんだ」というようなことをAは言ったのだ。
そしてこう続けた。「というわけで、告白してOKをもらう確率が同様に確からしい俺たちは、先に告白しようが後に告白しようがOKされる確率は同じだ。だから俺が先に告白しても、お前は不利にならない」と。
おそろしく話が飛躍しすぎているような気がしたが、Bは「確かに」と言った。そう言われればそうのような気もし、僕も「確かに」と思った。
そしてAが最初に告白し、女からOKをもらった。告白する機会を失ったBは「公平性とは何か。数学とは何か」という疑問を抱き、数学に熱心になった。
AがOKされる確率は1/2 BがOKされる確率は1/2 AとBが同時に告白すれば1/2+1/2=1=100% 2人で力を合わせりゃ100万馬力さ。 という空想をした俺は馬鹿である。Q.E.D.