ディズニーだからって回避しててごめんよ『ズートピア』

ひさしぶりに映画感想文を更新します! ディズニー映画を避けがちだったという江波さん。『ズートピア』はどうだったのでしょうか?(そういえば江波さんはバニーガールが闘う小説を書いていらっしゃいます)毎月どの映画を観ていただくか悩んでいるので、江波さんに感想文を書いてほしい映画も募集しております!!

■『テラフォーマーズ』も観たんだけど

  ゴールデンウィークの混雑を回避してズートピアを見て参りました。とにかく大型連休中に、映画館だの遊園地だの行楽地だのに行くと悲しい気持ちになる。フツーの日曜日とかより明らかに「大型連休なので何かしよう、何かしなくちゃ」という客が溢れるので、信じがたいほどマナー悪い人とかいる。大概の事は気にしない僕ですが『テラフォーマーズ』見てる時とか上映中の私語が酷くて、さすがにいいから黙って見てほしいという気持ちに。ちなみに『テラフォーマーズ』のレビューは「ゴキブリが苦手だから」という担当者の私的な理由で書けません。

 大型連休を回避したら、まあいつものごとく「まばらに客がいる」という大変心地よい空間となっていました。映画産業も大変らしいですが、客として行く分にはそのぐらいがちょうどいい。 ディズニー映画は滅多に見ないのですが(『アナと雪の女王』は見てない。『ベイマックス』は見た)、さすがのディズニーって感じになってました。

■動物擬人化のプロ、それがディズニー

 いろんな動物が同居するズートピアが、いろんな動物の住む環境に合わせたエリアごとに区分けされてるとこなんてディズニーランドの構成そのものですし。公共の乗り物にも大型獣から小型獣まで出口が別れてたりとか、「様々な動物が暮らしている」感の見せ方は大したもんでした。

 よく最近のディズニーは社会派な側面があるみたいに言われてるんですけど、ズートピアは割と直球で他人種が混在して生活している中で生まれる差別や偏見とかを描いてて、暗喩じゃなく直喩で来たなって印象でした。まあつうか当たり前なんですけどね、そもそも種そのものが違うので。

「動物の擬人化」はさすがに手慣れたモノで、見てて違和感が感じられなくなってきて、コロッと人間として扱って見てしまいますよ。この辺、結構見所のひとつだと思ってて、微妙な問題を動物の擬人化で粉飾してる巧さがあります。

ヌルヌル動く動物シティ

 たとえば主人公のジュディが、ウサギなのに警官目指してるのをみんな無理だ無理だって止めたりバカにしたりするんですけど、これ人間でやったらちょっと露骨な感じするじゃないですか。これがウサギになるとまた違う。だってズートピア警察、水牛とか虎とか完全にイカツい動物ばっかりで、もうウサギに何が出来るんだよって至極当然の話で。

 一応ジュディは警察学校で体は鍛えて成績トップで卒業しているから「ただのウサギ」ではないんですけど、見ている客にストレートな差別としての嫌悪感を抱かせない。だってウサギだもん。どんなに鍛えたウサギでも猛り狂うバッファローとかが犯人だったらどーすんだよって。そりゃ駐車違反でも取り締まらせとくかってなりますよ。キツネだから信用出来ないって理不尽さより仕方ないよなって感じに。

 人種とか男女差別を取り扱うとちょっと政治くせえなってなるんですが、そこを「そもそも違う動物同士」って形でうまくまとめた上で、内容はモロそういう話。手慣れた作劇。 ジュディを助ける相棒になる詐欺師のニックはもうちょっと踏み込まれた感じになってて「キツネだからズル賢いに決まってる」っていう、そりゃもう完全に偏見だろってなってましたけど、そのイメージそもそもどこから来たの……人間の描いた童話のイメージでは……ってうっすら疑問も、ヌルヌル動く動物シティのアニメ見てるとどうでも良くなってくる。

■観客に「安心」をくれる脚本の構成力

 脚本はよくあるバディもので、最後のほうなんかオチが完全に読めるんですが、これはわざとだと思います。伏線の使い方が、客を驚かせるためじゃなくて安心させるための伏線だったので。ちっさいお子さんならともかく大人ならまず気づく。何でそうしてるかというと、変に死を意識させるシリアスシーンを挟んで全体のトーンを乱さないためだと勝手に解釈してるんですが。

 いろんな動物がそれぞれの特徴を生かしてヌルヌル動き回ってコミカルに仕上げてるのに、とってつけたような深刻なシーン入れる必要ないですからね。かといってメリハリは欲しいのでああしたんだと思いますが。まあこういうのは変に凝らずにあるあるネタで素直に楽しませたほうが正しいと思います。

 ニックがかっこいいとかジュディが可愛いとかそれだけでいいワケですよ。ニックなんか詐欺師ったって、アイスキャンディーの転売ですからね、やってること。わざわざ象向けのデカいのを買ってネズミ用に小分けして売って差額を取るという(ネズミというかレミングだった気がしますがレミングだけに集団でぱたぱたやってきて機械的に動いてくのおもしろい)。

個人的にはゴッドファーザーのネズミみたいなのが好き

 ニックが詐欺師になったのは偏見にあったからで、ジュディが警察官として頑張ろうというのは偏見に抵抗するためで、よくあるとはいえいいコンビ。バディものでも僕の好きなパターン「警察と犯罪者」のコンビ。まあ、なのであのオチはきれいに平和にまとまってるとは言え、ちょっと無念だったのですが。

 個人的にはゴッドファーザーのネズミみたいなのが好きでした。マジでゴッドファーザーのパロディやってたし。暴力的な展開の時は頼りになるし。ジュディやニックに拷問させたら台無しなので暗部を一手に引き受けてくれた感じ。

 基本、身体能力はジュディのほうが上で、ニックは荒事苦手っぽいのも僕好み。あれ当然、人間同士のストーリーだったら恋愛関係におわせることになるんでしょうけど「いやウサギとキツネじゃ無理だろ」って思考にブレーキがかかって雑念が生じないのも見てて癒されますね。小難しいこと考えないで、バラエティ豊かなキャラの動きを楽しむのが正解だろうと思います。

■そういえばミッキーのこと忘れてたよ

 にしても見終わってからふっと目に入ってきたミッキーマウスの絵を見て初めて「あっお前がそもそもそうだった、動物の擬人化」って気づいた時のショック。忘れてた。サイズを人間大までデカくしてたからだと思いますが。それぞれの動物の大きさをリアルよりにたもって作劇するとか発想の転換。

 吹き替えしかやってなかったので吹き替えで見たんですけど、作中の文字とかもちゃんと出来る限り日本語に置き換えてて手間かかってました。気遣いを感じる。ディズニー作品はちょっと本能的に避けてたフシがあるんですが、これからは普通に見られると思います。そのぐらい出来のいい映画でした。ディズニーかよって思ってる人、たぶんですけどそれなりに偏見持ってる人いると思いますので、試しにご覧になってみたらいかがでしょうか。



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「我々は世界の終末に備えています」 そう主張する団体により建造されたアルカディアマンション。 そこでは働かずとも生活が保障され、 ただ娯楽を消費すればいいと言うが…… 創作のために体の一部を削ぎ落とした男の旅路「クロージング・タイム」、 大気汚染下でバイクに乗りたい男と彼に片思いをする不器用な少女の物語「ラヴィン・ユー」など、 鬼才が繊細な筆致で問いかける、閉塞した天国と開放的な煉獄での終末のかたち。


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江波光則映画レビュー

江波光則

6月下旬に終末SF『我もまたアルカディアにあり』を刊行した江波光則氏。
もともと映画がお好きな江波氏に、「終末」つながりで「マッドマックス 怒りのデス・ロード」を見た感想をまとめていただきました。

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コメント

Hayakawashobo 本日更新です 約3時間前 replyretweetfavorite

GeeeeN2525 その気持よくわかる。俺もここんとこは割と意図的に避けてたところあるけどズートピア見て ああ、見てみてもいいかなって思った。 約5時間前 replyretweetfavorite