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横浜F・マリノスが秘めるポテンシャル
フロント戦略でライト層をスタジアムへ

新しいことに挑戦する横浜FM

横浜FMはインスタグラムを活用したイベントを実施するなど、新しいことに次々と挑戦している
横浜FMはインスタグラムを活用したイベントを実施するなど、新しいことに次々と挑戦している【木崎伸也】

 Jリーグでイベントがうまいクラブといえば、川崎フロンターレが真っ先にあげられるだろう。昨年は「星空を見ながらスタジアムに泊まろう!防災体験」と題してスタジアムにテントで泊まる企画を実行し、今年4月には元横綱・武蔵丸が「五郎丸ポーズ」で始球式を行ったことが話題になった。人に伝えたくなるようなストーリーで溢れている。


 ただ、他のクラブも負けていない。同じ神奈川県をホームとする横浜F・マリノスは、ライバルとは違う形でオリジナルイベントに挑戦している。


 たとえば4月24日の浦和レッズ戦において、写真・動画共有サービス「インスタグラム」を活用したイベント「#emptyNissanStadium」を開催した。横浜で活動するインスタグラマーを招待し、ピッチ、VIP席、ロッカールームなどの写真をインスタグラムに投稿してもらうという企画だ。


 人気インスタグラマー@halno氏によるピッチ横でホウキにまたがった浮遊写真や、試合直前のロッカールームに置かれた中村俊輔のスパイク写真など、独自の視点で試合当日の現場が切り取られた。すぐに集客につながるわけではないが、横浜FMが新しいことに挑戦しているという姿勢は伝わっただろう。


 横浜FMの広報室の吉久潤室長は、インスタグラムを活用した取り組みが実現した経緯をこう語る。


「クラブとしてSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の活用に積極的に取り組んでおり、とある機会にフェイスブック社の方と知り合いました(インスタグラムは2012年にフェイスブックが買収)。それ以来、積極的に情報交換をするようになり、今回の企画が実現しました」


 事業統括本部の永島誠本部長は、こんな効果を期待している。


「実は横浜FMの試合には、芸能界をはじめ多くの著名人の方が来てくれているんです。過去に横浜FMのアカデミーにお子さんを通わせていらっしゃったので、そういった縁もあると思います。ただ、Jリーグはプロ野球と違って、どこを応援しているか言いづらい雰囲気があるのかもしれません。観戦体験をSNSに投稿する機会は限られている印象があります。もっと気軽にSNSに発信できるような空気作りを続けていきたいです」

工夫次第で観戦0回を1回に

試合前のトラックウォーク参加したさで、800人もの人が「ラジショピ」経由でチケットを購入した
試合前のトラックウォーク参加したさで、800人もの人が「ラジショピ」経由でチケットを購入した【木崎伸也】

 この浦和戦では、もう1つ興味深いプロモーションが行われていた。FMヨコハマと組んでラジオショッピングでチケットを販売するというものだ。


 通常のチケット代金の中に、試合前のトラックウォーク(ピッチレベルに降りてトラックを一周できる)、弁当、そして人気DJじゅんごとの観戦がセットになっている。今年は約800人が、「ラジショピ」経由でチケットを購入した。


 永島誠本部長は、手応えを口にする。


「3年前に始まったときは、ラジオ経由の販売がこれほど発展するとは想像していませんでした。ご購入いただいた方の年代を見ると、すごく幅広い。トラックウォークにも魅力を感じてもらえているようです。当然広告費がかかるのですが、800人なら十分に黒字になる。2回目をできないか交渉しているところです」


 Jリーグにとって、ライト層に観戦してもらうのは最重要テーマのひとつだ。観戦0回を1回に導くのは簡単ではない。横浜FMはその壁を越えるために、トラックウォークのような「体験型」の企画に力を入れている。永島本部長は続ける。


「開幕節(2月27日)のベガルタ仙台戦では、スタジアムの暗転を行いました。携帯電話のライトで照らすイベントです。ここでクラブカラーの青と赤のセロハンを配り、携帯のライトで照らしてもらうとスタジアムがトリコロールで浮かび上がります。対戦相手のサポーターの方たちも乗ってくれて、向こうは黄色のペンライトなどを用意してくれた。成功したイベントだったのですが、ただの「暗転」だと味気ないので『トリコロールギャラクシー』と名付けて、4月30日の湘南ベルマーレ戦でもやったところ、今度は湘南のサポーターも緑色のペンライトを持ってきてくれた。こういった体験型・参加型が、ホーム・アウェイに関わらずライト層に関心を持ってもらううえですごく重要だと考えています」

木崎伸也
1975年、東京都生まれ。金子達仁のスポーツライター塾を経て、2002年夏にオランダへ移住。2003年から6年間、ドイツを拠点に欧州サッカーを取材した。現在は東京都在住。著書に『サッカーの見方は1日で変えられる』(東洋経済新報社)、『世界は日本サッカーをどう報じたか』(KKベストセラーズ)、『革命前夜』(風間八宏監督との共著、カンゼン)など。年の約3分の1を海外で過ごし、出張中はtwitterのアカウント(@skizaki)で現地の最新情報や取材のこぼれ話をレポートしている。

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