いつか必ずやってくる!相続の基礎から税対策まで知っておくべき全知識

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相続

相続って何から手をつけたらいいか、わからないことないですか?

実は、一概に相続といってもパターンごとにものすごく細かい取り決めがあります。
でも、細かい取り決めを一つ一つ分厚い法律本でチェックするのは難しいしよくわからない。

そんなあなたのために、相続の基礎と手続き方法をSTEP:1~12に沿って説明します!
相続に関する全知識がまとまった総まとめです。困ったときにぜひご活用ください!

目次

 

1.相続とは

亡くなった人(被相続人)の有する現金や預金、株式・債券などの金融商品、土地建物などの不動産などの財産(積極財産)と、ローンなど借入金の未返済額などの債務(消極財産)が、その被相続人が亡くなったことによって、配偶者や子などの相続人にすべてをひっくるめて引き継がれることをいいます。

相続が発生することを「相続の開始」といいます。
被相続人の財産的価値を有するもののみが相続され、積極財産はもとより消極財産も含みます。また、消極財産しか有しない場合でも相続は開始します。
人の死亡によってのみ相続は開始します。失踪宣告によって死亡とみなされる場合にも相続は開始します。

※失踪宣告
生死が不明の状態(失踪期間)が一定期間継続する場合に、一定の要件のもとでその生死が不明の人を死亡とみなす制度です。

1-1.開始時期

相続開始の時期は、被相続人が亡くなった瞬間です。
被相続人が亡くなった瞬間に必ず相続が開始します。
被相続人が亡くなったことを相続人が知っていたかどうかを問いません。
相続開始のタイミングには以下のパターンがあります。

①現実に亡くなった場合
現実に亡くなったという事実が発生したときです。
一般的には戸籍簿に記載された死亡の年月日であると推定されます。

②失踪宣告によって死亡とみなされる場合
7年間の失踪期間満了のときです。
失踪宣告の審判が確定したときではありません。

③同時死亡の推定がある場合
相続人は相続開始のとき(被相続人の死亡のとき)に存在していなければなりません。
したがって、たとえばAとBが同時に死亡したとの推定を受けるときは、AとB相互には相続が開始しないこととなります。

※同時死亡の推定
死亡した者が何人かいる場合に、その死亡の先後の関係が明らかでないときは、同時に死亡したものと推定します。

2.相続の流れ

相続の手続きはできるだけ早めに、そして、相続人全員の協力を得ながら円滑に進めましょう。

相続

3.死亡(相続開始)後に行う手続き

①死亡届、死体火埋葬許可証交付申請の提出
市区町村役場に死亡届と死体火埋葬許可証交付申請書を提出すると、死体火埋葬許可証が交付されます。

②世帯変更届
亡くなった方の世帯に15歳以上の人が2人以上いる場合は、新しい世帯主を届け出る必要があります。

③健康保険証などの返還
健康保険証や後期高齢者医療被保険者証、身体障害者手帳などを市区町村や生前の勤務先に返還します。

④年金受給権者死亡届(報告書)の提出
年金受給権者死亡届(報告書)を年金事務所に提出します。
(日本年金機構に住民票コードが収録されている方は省略できます)

⑤介護保険資格喪失届
65歳以上、もしくは40歳以上65歳未満で要介護認定を受けていた方が死亡した場合は、市区町村役場に介護保険資格喪失届を提出し、介護被保険者証を返還します。

⑥遺言書の検認の申立
公正証書による遺言以外の遺言書(自筆証書遺言書など)を保管している人や発見した相続人は、これを家庭裁判所に提出して、その検認を受ける必要があります。

⑦相続の放棄、相続の限定承認の申述
相続人が被相続人の権利や義務を一切引き継がない(相続放棄)、または債務がどの程度あるかわからない場合に、相続によって得た財産の限度で被相続人の債務を引き継ぐ(限定承認)場合、3か月以内に家庭裁判所に申述をする必要があります。

⑧被相続人の所得税の準確定申告、税金の納付
被相続人が確定申告を行わずに亡くなった場合、相続人は4か月以内に被相続人の所得税の確定申告書(準確定申告書)を税務署に提出し、税金を納付する必要があります。

⑨相続税の申告、税金の納付
相続人や被相続人から遺言により財産を取得した人は、その取得した財産の価額の合計額が基礎控除額を超える場合のみ、10か月以内に相続税の申告書を税務署に提出する必要があります。
あわせて税金も納付します。

⑩死亡保険金の請求
被相続人が被保険者の生命保険の契約がある場合には、生命保険会社に死亡保険金の請求をします。

⑪被相続人から相続人への名義の変更
・土地建物などの不動産
被相続人の有していた土地建物などの不動産は、法務局で名義変更します。

・預貯金
被相続人名義の預貯金は、銀行などで名義変更します。

・株式、債券、投資信託などの金融商品
被相続人名義の株式、債券、投資信託などの金融商品は、証券会社や株式などの発行法人で名義変更します。

4.遺言書の確認(自筆の場合、検認作業)

4-1.遺言とは

「ゆいごん」や「いごん」と読み、自分の死後、自分の財産を誰にいくら残すのか、などを書き残すことをいいます。

人は遺言によりその死後も自分の有する財産を自由に処分できます。
遺言は一定の様式にしたがって行わないと無効となります。
これは亡くなった人の真意について、本人に確かめることができませんから、一定の手続きにしたがった遺言書を作成することにより、その人の真意を確保しようとするものです。

4-2.遺言能力

15歳以上の人は遺言を残すことができます。
遺言には成人としての高い意思能力までは求められていません。
15歳未満の人や意思能力のない人の遺言は無効です。

遺言能力は、遺言を作成する時点で有している必要があります。
遺言が有効に成立したあとに、遺言をした人が能力を失っても、遺言はその効力を生じます。

成年被後見人であっても、有効に意思表示することが一時的にできるようになったときに、医師2名以上の立ち会いにより遺言することができます。

※成年被後見人
精神上の障害により判断能力を欠くとして、家庭裁判所から後見開始の審判を受けた人。

4-3.種類

遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。

4-3-1.自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、全文を自筆で記載する遺言のことです。
パソコンなどを使用したり、他人に代筆してもらうと、自筆ではないため無効となるのでご注意ください。

遺言をする人が、紙に、遺言の内容の全文、日付、氏名のすべての部分を自分で書き、署名、押印することにより作成する遺言です。
Wordなどの文書作成ソフトやビデオレター、ボイスレコーダー、他の人の代筆によるものは認められません。

【メリット】
費用がかからず、いつでも何度でも手軽に作成ができ、遺言の存在や内容を秘密にできる。

【デメリット】
・民法の形式通りに作成していないために無効とされることが多く、日付を特定していること、字句の訂正や加筆は所定の訂正方法によること、自署押印が必要であることなどが細かく規定されている。
・遺言の存在を秘密にしている場合、遺言をした人の死後、誰も遺言を発見できない恐れがある。
・財産の特定ができない曖昧な内容の場合、相続人の間で解釈に違いが生じて、争いの原因となる場合がある。
・隠ぺいや偽造、紛失の恐れがある。
・自筆の文字を書けない場合は自力で作成できない。

【必要書類】
・遺言を自筆する紙
・作成した遺言書を入れておく封筒
・ペン(改ざん防止のため鉛筆でなくボールペンなどのほうがよいです)
・印鑑(実印でなく認印も可、拇印は避けたほうが無難です)

【書き方】
①全文を直筆で書く
タイトル、本文、作成日付、氏名のすべてを直筆で書く必要があります。
文字や紙の色に指定はありません。

②遺言書とわかりやすく明記する
遺言書であるということがはっきりわかることが大切です。
用紙のサイズ、紙質の指定はありません。

③作成した年月日と氏名を記載し、押印する
作成した年月日、氏名、押印が必要です。
日付は○年○月○日といった形式ではっきりと書きます。
たとえば、○年○月吉日などと書くと作成年月日が特定できず、無効になります。
印鑑は認印より、実印の方がよいでしょう。

④消しゴムで消せないボールペンなどで書く
消しゴムで消せる鉛筆などで書くと、書き直される恐れがあるので、ボールペンやサインペン、万年筆などで書くのがよいでしょう。

⑤財産が特定できるように書く
財産が特定できない場合には、相続人の間で争いが起こる恐れがあります。
財産がはっきりとわかるように書きます。
土地や建物などは、登記事項証明書の記載をそのまま書くのがよいでしょう。

⑥財産を受ける人を表記する
財産を受ける人が特定できない場合も相続人の間で争いが起こる恐れがあります。
遺言者との続き柄や誕生日も表記しておきましょう。

⑦遺言執行者を指定する
遺言執行者は、遺言書に書かれた内容に沿って、相続人の代理人として、相続財産を管理し、名義変更などの各種手続きを行います。
遺言執行者を指定することで手続きがスムーズになります。

⑧遺言書を封筒に入れて封印する
遺言書は封筒に入れて封印するのがよいでしょう。

【検認とは】
検認とは、相続人に対して遺言の存在とその内容を知らせるとともに、遺言書の形状や加除訂正の状態、日付、署名など、遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造や変造を防止するための手続きです。

自筆証書遺言書の保管者、またはこれを発見した相続人は、遺言者の死亡を知ったらすぐに遺言書を家庭裁判所に提出し、その検認を申し立てなければなりません。
検認を受けないで遺言を執行したり、家庭裁判所外で封印のある遺言書を開封したりした人は、5万円以下の過料に処せられます。

また、故意に遺言書を隠していた場合には、相続欠格者として相続権を失います。

4-3-2.公正証書遺言

公正証書遺言とは、公証役場で公証人に作成してもらう遺言のことです。

遺言をする人が、公証人の面前で遺言の内容を話し、それに基づいて、公証人がその人の真意を正確に文章にまとめ、公正証書遺言として作成する遺言です。
複雑な内容であっても、法律的にきちんとした内容の遺言を作成できるため、方式の不備で無効になる恐れがありません。

【メリット】
遺言者が口頭で述べた内容を公証人が筆記してくれるため、公証人に遺言作成の手助けをしてもらえます。
公証役場に行くことが難しい場合、自宅や病院に出張してもらえます。
原本が必ず公証役場に保管されますので、遺言書が破棄されたり、誰かに隠されたり、書き直されたりする心配もありません。

このように、公正証書遺言は、自筆証書遺言と比べて安全確実な遺言方法なのです。
家庭裁判所の検印も不要です。

【デメリット】
2人以上の証人が必要であること、遺言者の実印や印鑑証明書をはじめとした、遺言作成にあたっての確認書類を揃える必要があること、あわせて預貯金や不動産などの相続財産を整理する必要があること、公正証書遺言作成費用がかかること、など。

【手続きの流れ】
相続

【かかる費用について】
まず、財産の相続または遺贈を受ける人ごとにその財産の価額を算出します。
その価額に応じた手数料は以下の通りです。

目的財産の価額 手数料の額
100万円まで 5,000円
200万円まで 7,000円
500万円まで 11,000円
1,000万円まで 17,000円
3,000万円まで 23,000円
5,000万円まで 29,000円
1億円まで 43,000円

※1億円を超える分については、
・1億円を超え3億円まで 5,000万円ごとに13,000円
・3億円を超え10億円まで 5,000万円ごとに11,000円
・10億円を超える分 5,000万円ごとに8,000円
がそれぞれ加算されます。
これらの手数料を合算して、遺言書全体の手数料が算出できます。

4-3-3.秘密証書遺言

遺言の内容を「秘密」にしたまま、その「存在」を証明してもらう遺言のことです。

秘密証書遺言とは、遺言をする人が、遺言の内容を記載した書面(自筆証書遺言と異なり、自書である必要はないので、Wordなどの文書作成ソフトを用いても、誰かの代筆でもかまいません)に署名押印し、封筒に入れて封印した遺言書です。

公証人と証人2人の前にその封書を提出し、自分の遺言書である旨と氏名、住所を申述し、公証人がその封紙上に日付と申述を記載したあと、遺言者と証人2人とともにその封紙に署名押印します。

【メリット】
遺言した人のものであることを明確にしながら、遺言の内容を秘密にすることができます。

【デメリット】
公証人が遺言書の内容を確認することができないため、法律的に不備がある恐れがあり、無効となってしまう場合もあります。
財産の特定ができない曖昧な内容の場合には、相続人の間で解釈に違いが生じて争いを起こしかねません。

4-4.遺言執行者

遺言執行者は、遺言書に書かれた内容や趣旨に沿って、相続人の代理人として相続財産を管理し、名義変更などの各種手続きを行います。
遺言執行者を指定することで手続きをスムーズに進めやすくなります。

4-5.エンディングノート

自分にもしものことがあったときのために、伝えておきたいことをまとめておくノートのことです。

エンディングノートは書き方にルールはありませんので、自分の言葉で思いのままに書くことができます。
遺言書は法的な効力を有するため、その遺言書が有効であれば遺言の内容が実現します。

しかし、エンディングノートは法的な効力がないため、書かれたとおりに実行されるとは限りません。

5.相続人の調査

5-1.相続人

相続人とは、被相続人の一切の権利義務を引き継ぐ立場にある人のことです。

5-1-1.法定相続人

相続人は民法によって定められていることから「法定相続人」とも呼ばれています。

被相続人と血のつながりがある血族を「尊属」(そんぞく)といい、尊属のうち、被相続人の父母、祖父母のことを「直系尊属」といいます。
被相続人の実子、養子、他家に養子に出した実子、孫、ひ孫のことは「直系卑属」といいます。

法定相続人は被相続人からみて近い世代が優先されます。

【範囲】
被相続人の配偶者と、優先順位の高い尊属が相続人になります。

【優先順位】
・第1順位:被相続人の子供
すでに死亡している場合は、その人の直系卑属が相続人となります。
子供も孫もいる場合は、被相続人により近い世代である子供の方が優先されます。

・第2順位:被相続人の直系尊属
父母も祖父母もいる場合は、被相続人により近い世代である父母の方が優先されます。

・第3順位:被相続人の兄弟姉妹
すでに死亡している場合は、その人の子供が相続人となります。

【分配方法】

配偶者 子供(直系卑属) 親(直系尊属)
配偶者と直系卑属 1/2 1/2
配偶者と直系尊属 2/3 1/3
配偶者と兄姉妹 3/4 1/4

5-1-2.代襲相続人

法定相続人が被相続人よりも先に死亡している場合や相続権を失っている場合は、その人の直系卑属が「代襲相続人」となります。
被相続人の子供や兄弟姉妹が相続人だった場合は代襲相続ができますが、配偶者や直系尊属が相続人だった場合は代襲相続が発生しません。

【範囲】
代襲相続人になるための条件は以下のとおりです。

①代襲相続人が被代襲者の直系卑属の子であること
②被代襲者が被相続人の直系卑属の子、または兄弟姉妹であること
③代襲相続人が相続開始時に存在していること

5-1-3.相続財産管理人

相続人の存在が明らかでない場合、家庭裁判所は「相続財産管理人」を選任します。
相続財産管理人とは、被相続人の債権者等に対し、被相続人の債務を支払うなどして清算を行い、清算後残った財産を国庫に帰属させる、相続財産の管理を行う人のことです。

5-1-4.その他:養子縁組、連れ子などの場合

・特別養子縁組以外の養子は「実の両親」と「養親」両方の法定相続人となります。
・前妻や前夫の連れ子は、被相続人と生前に養子縁組を結んでいれば法定相続人となります。
・非嫡出子は認知された場合に法定相続人となり、胎児もすでに生まれたものとみなされるため、法定相続人となります。

5-1-5.相続権を失う場合

相続開始時点に相続権を失っている場合でも代襲相続することはできます。
ただし、相続放棄により相続権を失った場合は、代襲相続はできません。

【相続人排除】
相続人が廃除(民法892条、893条)により相続権を失った場合、代襲要因が生じます。
相続人の廃除によって排除された相続人には遺留分は認められていません。

【相続欠落】
相続人が相続欠格(891条)により相続権を失った場合、代襲要因が生じます。
相続欠格に、遺留分が認められません。

5-2.遺留分

民法で定める割合のことで、相続時に最低限相続することができます。

たとえば、遺言で愛人に全財産を相続させると記載されていた場合、法定相続人である本妻はその後の生活に困ってしまう可能性があります。

そこで、法定相続人にとってあまりに不利益な状況を防ぐため、遺産の中で一定の割合の取得を法定相続人に保証する制度が設けられています。
この保証された割合のことを遺留分といいます。

【分配方法】

配偶者あり 配偶者なし
第1順位 遺留分は相続財産の2分の1
配偶者4/1 、子4/1
遺留分
子  2/1
第2順位 遺留分:相続財産の2分の1
配偶者2/1 父母6/1
遺留分
祖父母 3/1
第3順位 遺留分:相続財産の2分の1
配偶者2/1  兄弟姉妹0
遺留分
兄弟姉妹  0

5-2-1.遺留分減殺請求

遺留分が侵害されている場合に、その侵害された遺留分を取り戻す方法が、遺留分減殺請求です。

遺留分の減殺請求は、配達証明をつけた内容証明郵便など、書面で行うことで、あとに言った、言わないの争いを防ぐことができます。

遺留分の減殺請求には請求可能な期間が定められています。
この期間を過ぎると遺留分を侵害されていたとしても、遺留分の減殺請求はできなくなります。

6.相続財産の調査

6-1.相続財産とは

民法では「相続人は相続開始時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」と定められています。
この場合の財産とは金銭に見積もることのできる経済的価値のあるすべてのものをいいます。

相続財産には「相続税がかかる財産」「相続税が特別にかかる財産」「相続税がかからない財産」があります。
相続税は原則として、死亡した人の財産を取得した場合にかかります。

6-2.対象と種類

6-2-1.プラスの財産、マイナスの財産

相続財産には「プラスの財産」と「マイナスの財産」があります。

被相続人の残した「権利」にあたるものをプラスの財産といい、土地や建物などの現金や預貯金、不動産、有価証券、車、家財、宝石、骨董品、個人事業用の資産などが該当します。
被相続人の残した「義務」にあたるものはマイナスの財産といい、借入金や未払医療費、未払税金、個人事業用の負債などが該当します。

【判断に迷う財産】
生活雑貨や家具、衣類などの家庭用動産は、5万円以下のものについては一世帯ごとに一括して評価し、それらの家財をまとめて「家財一式 10万円」などと全体で評価します。

【みなし相続財産】
「死亡保険金」や「死亡退職金」といった、相続や遺贈によって取得したとみなされる財産を「みなし相続財産」といいます。
どちらも被相続人の固有の財産ですが、被相続人が死亡して支払いが生じることから、相続財産とみなして相続税が課税されます。

6-3.調査方法

相続財産は被相続人の遺品整理を通じて把握していきます。
形のない遺産については、通帳の送金先や振込先などの履歴、郵便物の差出人、不動産の権利証、保険の証券などを確認しながら調査を進めていきます。

自分たちだけで調査をするのが難しい場合は弁護士や司法書士、税理士などの専門家に調査を依頼することもできます。
相続財産があることがわかったら、遺産分けを円滑に進めるために遺産の評価をしましょう。

6-3-1.相続財産目録

被相続人が元気なうちに自分の財産目録を作成しておくことで、相続人同士の不要なトラブルを避けたり、相続の手間を大幅に減らしたりすることができます。
また財産目録によって現時点の遺産総額を知ることで、相続税を納める必要があるかどうかの判定もしやすくなります。

6-4.評価方法

相続税法第22条(評価の原則)では、相続や贈与などで取得した財産の評価方法を定めています。
詳しく知りたい方は、国税庁HPなどをご参照ください。

参考サイト:http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka/01.htm

6-4-1.土地の評価

土地の評価方式は、「路線価方式」と「倍率方式」があります。
路線価方式で評価する地域を「路線価地域」といい、国税局長が7つの地区を定めています。

間口や奥行などの土地の形状や、自用か貸付用といった土地の利用方法によっても評価方法が変わります。

参考サイト:http://www.rosenka.nta.go.jp/

6-4-2.建物の評価

家屋の価額は、その家屋の固定資産税評価額に法令で定める倍率を掛けて評価します。
貸家など建物の利用区分によって評価方法が定められております。

6-4-3.現金

財布やタンス預金、相続開始直前に引き出してきてまだ手元になる現金などが対象です

6-4-4.有価証券(上場、非上場)の評価

「上場株式」「店頭登録株式」「非上場株式」の種類別に評価方法が定められています。

非上場会社のように取引相場のない株式の評価は、その規模によって大会社、中会社、小会社の別に分かれ、異なる評価方法を使います。
かなり計算が複雑であるため、専門家に相談したほうがよいでしょう。

6-4-5.保険

死亡保険金は被相続人の死亡によって支払われるものであるため、みなし相続財産として相続財産に含まれます。
現行法において、法定相続人の数×500万円までは非課税扱いです。

また、定期金に関する権利や生命保険契約に関する権利の評価については、それぞれ法令で定められています。

6-4-6.退職金

死亡退職金も被相続人の死亡によって支払われるものであるため、みなし相続財産として相続財産に含まれます。
現行法において、法定相続人の数×500万円までは非課税扱いです。

6-4-7.その他(ゴルフ会員権、金・プラチナ、自動車、骨董品)

その他の財産として、「ゴルフ会員権」などの評価方法が法令で定めています。
高額の金、プラチナ、自動車、骨董品などで、法令に特別の定めがないものは、相続開始時の査定額や鑑定価額で評価します。

7.遺言書

遺言書の有無によって、その後の対応方法は大きく変わります。

7-1.遺産分割協議とは

遺産分括協議とは「共同相続人による遺産の共有状態を、各相続人の単独所有にするための協議」です。
協議は相続人の全員参加が原則です。

7-2.財産分割の流れ(遺言→分割協議→調停→審判→裁判)

遺言書がある場合はその内容にしたがって遺産を分割しますが、遺言書がない場合や、遺言書に書かれていない財産がある場合などは、相続人全員で分割協議を行います。
協議がまとまらなければ家庭裁判所の調停による遺産分割を行い、それでも解決しない場合は審判による分割を行います。
さらに審判で納得できない場合には裁判へと発展します。

7-3.遺産分割の種類

遺産分割には「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」があります。

【現物分割】
「自宅の土地と建物を妻に、A銀行の預貯金を長女に」というように、遺産をあるがままの形で分割する分割方法です。

【代償分割】
遺産の全部または一部を1人または一部の相続人に取得させるかわりに、他の相続人に代償金として不足分を支払う方法です。
債務を負担する方法による分割ともいいます。

【換価分割】
遺産の一部または全部を売却して、そのお金を分ける方法です。

【共有分割】
個々の遺産を共有する方法です。
分割を先送りにするため、次の代にいくほど分割がしにくくなります。

7-4.遺産分割協議書

遺産分割協議を行った結果を書面に記載したものを「遺産分割協議書」といい、相続税の申告や不動産、預貯金などの名義変更で必要になります。
共同相続人全員が協議書に実印で押印し、相続人全員の印鑑証明を添付します。

【書き方】
相続(遺産分割)による所有権移転登記申請書のなかに不動産の遺産分割協議書の記載例がありますので、参考にしてください。

参考サイト:
http://www.moj.go.jp/MINJI/MINJI79/minji79.html

7-5.遺産分割の期限

遺産分割に期限はないため、実施されなければ共同相続人で共有している状態のままになります。

ただし相続税の納税義務がある場合は、相続開始から10か月後の法定申告期限までに分割されないと、相続税法上の優遇措置を受けることができなくなるため、相続税額が一時的に増えてしまいます。
また、相続税の納税義務がある場合には相続申告を行う必要があります。

7-6.遺産分割協議でまとまらなかった場合

共同相続人の間で協議がまとまらなかった場合、相続人は家庭裁判所に遺産分割調停の申し立てをすることができます。

7-6-1.遺産分割調停とは

調停官、調停委員が間に入り、話し合いで分割内容を合意する手続きです。
合意した場合に作成される調停証書には、判決と同一の効果があります。

被相続人が亡くなり、その遺産の分割について相続人の間で折り合いがつかない場合には、家庭裁判所の遺産分割の調停または審判の手続きを利用することができます。

調停手続を行うと、遺産分割調停事件として申し立てられます。
この調停は、相続人が他の相続人全員を相手方として申し立てるものです。

調停手続では、当事者双方から事情を聴いたり、必要に応じて資料等を提出してもらったり、遺産の鑑定を行うなどして内容を把握します。
その上で、各当事者が希望している分割方法がどのようなものか、それぞれの意向を聴取し、解決案を提示したり、解決のために必要な助言を行うなどして、合意を目指した話し合いが進められます。

なお、話し合いがまとまらず調停が不成立になった場合には、自動的に審判手続が開始され、裁判官が遺産に属するものや権利の種類などを考慮し、審判をすることになります。

【申立人】
申立人は「共同相続人」「包括受遺者」「相続分譲受人」です。
相手方のうちの1人の住所地の家庭裁判所か、当事者が合意の上で定める家庭裁判所に申し立てします。

【期限】
調停で話し合いがまとまらない場合は不成立として終了します。
引き続き審判手続を行った上、審理によって結論が示されることになります。

【申立に必要な費用】
・被相続人1人につき収入印紙1,200円分
・連絡用の郵便切手(各裁判所のウェブサイトの「裁判手続きを利用する方へ」に掲載されていない場合は、申し立てする家庭裁判所に確認してください)

【書類】
申立には以下の書類が必要です。

・申立書1通およびその写しを相手方の人数分
・標準的な申立添付書類
・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改正原戸籍)謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・被相続人の子(およびその代襲者)で死亡している方がいる場合、その子(およびその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改正原戸籍)謄本
・相続人全員の住民票および戸籍附表
・遺産に関する証明書

【手続き】
家庭裁判所の遺産分割手続は、遺産を探し出すことを目的とした手続きではないため、相続人の1人が遺産の一部を隠していると疑っていても、家庭裁判所に調べてもらえるわけではありません。
ほかにも遺産があると考える場合には、原則として、自らその裏付けとなる資料を提出しなければなりません。

【遺産分割調停申立書】
裁判所のHPに書式のダウンロードと記載例が紹介されています。

参考サイト:
http://www.courts.go.jp/saiban/syosiki_kazityoutei/syosiki_01_34/index.html

7-7.寄与分とは

寄与分とは、相続をする際に「特別な寄与」をした相続人がいる場合に、その貢献度に相当する額を上乗せすることを認めて公平性を図るための制度のことです。

【対象と非対象】
寄与分が認められるのは相続人のみに限られ、それ以外の者は被相続人に貢献していたとしても、寄与分を主張することはできません。

【計算方法】
具体的な寄与分の算定方法は、寄与の時期や方法、程度、相続財産の額などから考慮されますが、実際の適用は家庭裁判所の裁量に委ねられることになります。

【必要書類等】
寄与分を定める処分調停のページに、必要書類や申立書の書式および記載例などが掲載されています。

参考サイト:
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_07_23/

8.相続の承認

相続が開始された場合、相続人は「単純承認」「限定承認」「相続放棄」のうちのいずれかを選択できます。

8-1.単純承認

被相続人の権利や義務をすべて受け継ぐのが単純承認です。
相続開始日から3か月、相続放棄も限定承認もしないと、単純承認をしたことになります。

8-2.限定承認

被相続人の債務の程度が不明な場合などに、相続によって得た財産の限度で被相続人の負担を受け継ぐのが限定承認です。

限定承認をするためには、相続の開始があったことを知った日から3か月以内に、家庭裁判所にその旨を申述しなければなりません。
相続人が複数いる場合、限定承認の申述は共同相続人全員で行うことになります。

手続きは、相続人全員が共同して、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に申述を行う必要があります。

【期限】
申述は、相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にしなければならないと定められています。

【費用】
・収入印紙800円分
・連絡用の郵便切手
(各裁判所のウェブサイトの「裁判手続きを利用する方へ」に掲載されていない場合は、申し立てする家庭裁判所に確認してください)

【書類】
限定承認の申述には以下の書類が必要となります。

・申述書
・標準的な申立添付書類
・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・被相続人の住民票除票または戸籍附票
・申述人全員の戸籍謄本
・被相続人の子(およびその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合、その子(およびその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

【手続き等】
限定承認が受理されたら、限定承認者は所定の期間内に限定承認をした旨と債権の請求をすべき旨の公告の手続きをし、法律にしたがって相続財産の清算手続きを行っていくことになります。

【判断の仕方】
相続の開始があったことを相続人が知ったときから3か月以内に相続を承認するか判断する資料が得られない場合には、期間の伸長の申し立てをすることでその期限を伸ばすことができます。

8-3.相続放棄

被相続人の権利や義務を一切受け継がないのが相続放棄です。

参考サイト:
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_13/

相続放棄には下記のいずれかの手続きが必要になります。

①遺産分割協議で「自分の相続分をゼロにする」という旨を書き署名・捺印する

②家庭裁判所に相続放棄の申請をする
なお、相続人が未成年者の場合、「法定代理人」が代理して申述することになります。
未成年者と法定代理人が共同相続人であって未成年者のみが申述する場合や、複数の法定代理人が一部の未成年者を代理して申述する場合には、別途「特別代理人」の選任が必要となります。

【期限】
相続放棄をするためには、相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にその旨の申述を家庭裁判所にしなければなりません。

【費用】
・収入印紙800円分
・連絡用の郵便切手(各裁判所のウェブサイトの「裁判手続きを利用する方へ」に掲載されていない場合は、申し立てする家庭裁判所に確認してください)

【手続き】
申述先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所になります。

【必要書類】
相続放棄の申述には以下の書類が必要となります。

・相続放棄の申述書
・標準的な申立添付書類
・被相続人の住民票除票または戸籍附票
・申述人(放棄する方)の戸籍謄本

●相続放棄申述書
20歳以上か、未満かで相続放棄申述書が異なります。
裁判所のHPに書式のダウンロードと記載例が掲載されています。

参考サイト:
▼20歳以上
http://www.courts.go.jp/saiban/syosiki_kazisinpan/syosiki_01_13/index.html

▼20歳未満
http://www.courts.go.jp/saiban/syosiki_kazisinpan/syosiki_01_13_02/index.html

●相続放棄申述受理証明書
相続放棄が受理されたことを証明する相続放棄申述受理証明書は、受理をした家庭裁判所に申請をすれば受け取ることができます。

8-4.注意点

相続の放棄の申述をせず、単にプラスの財産を取得していない場合は、相続の放棄には該当しません。
よってマイナス財産の法定相続分による承継義務は残りますのでご注意ください。

8-4-1.生前に相続放棄はできない

相続を放棄する旨を書面で記載して署名していたとしても、それが被相続人の存命期間中であれば無効となります。

8-4-2.代襲相続人の相続放棄

被相続人の子供が相続放棄をした場合に、その子供(被相続人の孫)が相続人となることはありません。
「相続人」には、相続を放棄した者は含まれないため、代襲相続人が相続放棄をし、遺贈で財産を取得した場合には、相続税法の2割加算対象者となるのでご注意ください。

参考サイト:http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/sozoku/07/01.htm

9.相続税の算出

9-1.相続税とは

相続によって取得した財産などが基礎控除額を超えた場合に、その超えた部分(課税遺産総額)に対して課税される税金のことです。
課税遺産総額がある場合には、相続税の申告と納税をしなければなりません。

9-1-1.課税、非課税の対象

相続税の.課税、非課税の対象は、相続税法第12条に規定されています。
相続税がかからない財産のうち主なものは次のとおりです。

① 墓地や墓石、仏具、仏壇など、日常礼拝をしているもの。
② 相続や遺贈によって取得した財産のうち、公益を目的とする事業に使われるもの。
③「心身障害者共済制度」に基づいて支給される、給付金を受ける権利。
④ 相続によって取得した生命保険金のうち、法定相続人の数に500万円を掛けた金額までの部分。
⑤ 相続によって取得した退職手当金などのうち、法定相続人の数に500万円を掛けた金額までの部分。
⑥ 個人経営をしていた幼稚園の事業に使われていた財産の一部。
⑦ 相続した財産のうち、相続税の申告期限までに寄附したもの。

9-1-2.期限とペナルティ

相続税の申告と納税は、相続によって取得した財産などが遺産にかかる基礎控除額を超える場合に必要となります。

・申告期限
相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内までです。
(期限が土曜日、日曜日、祝日などにあたる場合は、その翌日が期限となります)

・ペナルティ
納付しなければならない税額があるにも関わらず期限後に相続税の申告をした場合には、延滞税が課されます。
また申告期限までに申告をしても、税金を期限までに納めないと延滞税が課される場合があります。

9-2.控除

相続税の計算時には「被相続人が残した債務」や「相続人が負担した葬式費用」などを遺産総額から差し引くことができます。

9-2-1.基礎控除

3,000万円+600万円×法定相続人の数

【税法改正】
相続税は何度かの改正を経て、平成25年度に改正されたものが最新となっています。
今後もさらに改正される可能性があるので、注意しましょう。

参考サイト:http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/property/144.htm

9-2-2.特別控除

相続税には、以下の6つの特別控除があります。

①贈与税額控除
②配偶者の税額軽減
③未成年者控除
④障害者控除
⑤掃除相続乗除
⑥外国税額控除

【配偶者控除】
被相続人の配偶者が実際に取得した遺産額のなかで、次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税がかかりません。
なお、申告期限までに分割されなかった財産については、税額軽減の対象になりません。

・1億6千万円
・配偶者の法定相続分相当額

配偶者控除を受けるためには、相続税の申告時に配偶者が取得した財産がわかる書類を一緒に提出し、「配偶者の税額軽減額の計算書」に必要事項を記載します。

【未成年控除】
法定相続人が日本国内に住所を有する未成年者である場合は、未成年控除として相続税の額から一定の金額が差し引かれます。
未成年者控除の額は、基本的にその未成年者が満20歳になるまでの残り年数を10万円で掛けた金額となります。

【障害者控除】
法定相続人が日本国内に住所を有する85歳未満の障害者である場合は、障害者控除として相続税の額から一定の金額が差し引かれます。
障害者控除の額は、基本的にその障害者が満85歳になるまでの残り年数を10万円で掛けた金額となります。

参考サイト:http://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4167.htm

【相次相続控除】
相続開始前10年以内に被相続人が別の相続などによって相続税が課されていた場合は、相次相続控除としてその相続税額から一定の金額が控除されます。

参考サイト:http://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4168.htm

9-2-3.その他

相続税の計算をする際に、以下の項目については法定相続人の数をもとに行われます。

・相続税の基礎控除額
・生命保険金の非課税限度額
・死亡保険金の非課税限度額
・相続税の総額の計算

9-3.相続税算出方法

相続税の一般的な計算は、次の順序で行います。

①各自の課税価額の計算
贈与によって財産を取得した人ごとに、課税価格を次のように計算します。

相続

②相続税の総額の計算
計算した各人の課税価格を合計した金額から基礎控除額を差し引き、課税される遺産の総額を計算します。

③各人ごとの相続税額の計算
財産を取得した人の課税価格に応じて相続税の総額を割り振り、それぞれの税額を計算します。
(相続税の総額×各人の課税価格÷課税価格の合計額=各相続人等の税額)

④各人の納付税額の計算
各相続人の税額から各種控除額を差し引いた残りの額が、各人の納付税額になります。

参考サイト:
http://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4152.htm
http://www.nta.go.jp/souzoku-tokushu/souzoku-aramashih27.pdf

9-4.相続税対策

相続対策には、節税対策以外にも、納税資金対策や、物納対策、争いを回避するための対策などがあります。

9-4-1.特別受益を用いた節税対策

特別受益として持ち戻し対象となる贈与となるかどうかは、当該生前贈与が相続財産の前渡しといえる贈与かどうかが判断の基準となります。
特別受益を用いる節税対策には、不動産贈与、住宅資金の等の生前贈与、教育資金等の贈与、生命保険を用いた節税対策、二次相続まで考えた上での遺産分割による節税などがあげられます。

【不動産贈与】
20年以上の婚姻期間がある夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合に一定の要件を満たしていると、最高2,000万円までの配偶者控除を受けることができます。

【生前贈与】
贈与税には「暦年贈与」と「相続時精算課税制度」の2つの制度があります。
暦年贈与は毎年110万円までの基礎控除があります。
つまり、贈与を受けた合計額が年間110万円以下である場合には、贈与税はかかりません。

また生前に相続財産の一部が相続人以外の孫にも移転することができるので、節税対策の代表例となっています。

参考サイト:http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/sozoku-zoyo/201510/index.htm

【教育資金】
平成25年4月1日から平成31年3月31日までの間に、個人が教育資金に充てるために「信託の受益権の取得」や「預金もしくは貯金としての預入」「有価証券の購入」などをした場合には、その価額のうち1,500万円までについては、贈与税の課税価格に算入されません。

参考サイト:https://www.nta.go.jp/taxanswer/zoyo/4510.htm

9-4-2.生命保険を用いた節税対策

生命保険の死亡保険金は相続税の対象となっていますが、遺族の生活を守る観点などから、500万円×相続人の数までは相続税が課税されないよう、一定の非課税枠が設けてられています。

9-4-3.遺産分割(二次相続)で節税対策

配偶者は世代が近いため、次の相続までの年数を考慮し、一次相続の時点では配偶者が財産の大部分を取得するほうが、相続税額は減少します。

ただし、1次相続よりも2次相続のほうが、基礎控除600万円と、配偶者の税額軽減、小規模宅地等の相続税における課税価格の計算の特例などが使えず、二次相続の税額は、一次相続に比べると割高になります。
よって名義変更に伴う不動産登記費用のことを考えて、1次相続を一番相続税が安くなるような分割協議を行うのではなく、2次相続を見越した遺産分割を行うことも節税対策の一つとなります。

10.財産分配、各種手続き

遺産分割協議書に基づき、相続人の単独所有となった財産債務の名義を変更していきます。
不動産を取得した相続人は法務局で名義変更の登記を行います。

10-1.名義変更

被相続人の名義になっている財産を、相続人の名義に変更していきます。

10-1-1.相続登記

不動産は法務局で相続登記する。相続登記の義務はありませんが、放置しておくとデメリットがでてきます。

「不動産を売却や担保提供ができない」「第3者への対抗要件が弱いため勝手に処分される」「あとで相続登記しようと思っても、世代がかわり連絡がつかなくなったりして相続登記ができなくなってしまい、数十人で共有のまま放置」などの可能性があります。

あとになるほど調べる手間が増え、司法書士に支払う費用も嵩むため、早めに変更登記しておくほうがよいと思われます。

【期限】
名義変更の義務はないため、期限もありません。
しかし義務がないからといって、名義変更をせずに放置しておくと相続人が次世代に移行してしまいます。

最終的に処分するときなど、名義変更が必要になったときに、相続人を確定して必要書類を集める手間とコストを考えると、相続登記を先送りするメリットはなさそうです。

【費用】
(1)土地の所有権の移転登記

内容 課税標準 税率 軽減税率(措法72)
相続、法人の合併または共有物の分割 不動産の価額 1,000分の4
その他
(贈与・交換・収用・競売等)
不動産の価額 1,000分の20

(2)建物の登記

内容 課税標準 税率 軽減税率(措法72の2~措法75)
相続または法人の合併による所有権の移転 不動産の価額 1,000分の4

参考サイト:http://www.nta.go.jp/taxanswer/inshi/7191.htm

【必要書類】
申請時には以下の書類の提出が必要となる場合があります。

・被相続人の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)
・被相続人の除籍全部事項証明書(除籍謄本)
・相続人全員の戸籍全部(一部)事項証明書(戸籍謄抄本)

▼詳しくは法務省のHPでご確認ください。
参考サイト:http://www.moj.go.jp/content/000123426.pdf

10-1-2.名義預金

名義預金とは、被相続人以外の名義の預金通帳はあるが、実態は被相続人の預金であるものです。
よくある例として、親が子供や孫の名義で預金通帳を作成し、そこに毎年110万円ずつ振り込むというものです。

この場合は単に名義を借りているだけで、実態は被相続人の財産のため、相続財産に含まれることになります。

贈与を成立させるためには、「あげた・もらったを双方で明確にしている」「きちんと贈与調書を交わしている」「もらった側で贈与税の申告をしている」「銀行振込により贈与している」など、贈与の事実があったことを立証できるようにしておく必要があります。

振込先の通帳の印鑑が贈与者のものであったり、通帳を贈与者や親が管理していて子供が存在を知らない場合や自由に使えない場合、贈与者が判断力不足状態や意識不明の状態にあり、贈与の意思が確認できない状態で贈与している場合には贈与とはいえず、名義預金とされます。

10-2.特別受益

特別受益とは、相続時に発生する不公平を是正する制度です。

被相続人から特別の利益を受けていた相続人は、財産額の前渡しを受けていたものとして扱われ、その贈与の価額が相続財産に加算されます。その加算した額をもとに、各人の具体的相続分を計算していきます。

被相続人から、「遺贈」「婚姻、養子縁組のための贈与」「生計の資本としての贈与」を受けた者は特別受益者となります。
遺贈された財産はその目的を問わず、すべて特別受益として持ち戻しの対象になります。
遺産の前渡しといえるかどうかは諸事情を勘案して、個別に判断することになります。

【対象、非対象】
特別受益の持ち戻し対象は、被相続人から相続人に対する生前贈与か遺贈のため、原則として相続人でない者に対する生前贈与や遺贈は対象外になります。

10-2-1.贈与、遺贈

贈与、遺贈は負担付贈与、不動産贈与、生前贈与、直系尊属からの教育資金の一括贈与、直系尊属からの結婚・子育て資金の一括贈与、直系尊属からの住宅取得資金の贈与などがあります。

【負担付贈与】
一定の債務を受贈者に負担させることを条件にした財産の贈与のことで、負担付贈与を受けた場合は「贈与財産の価額」から「負担額を控除」した価額に課税されます。

【教育資金一括贈与】
・教育資金の一括贈与時の非課税
平成31年3月31日までの間に、個人が教育資金に充てるために「信託の受益権の取得」や「預金もしくは貯金として預入」「有価証券の購入」をした場合には、その価額のうち1,500万円までの価額は、贈与税の課税価格に算入されません。

①教育資金管理契約の終了時の課税
特定の事由で教育資金管理契約が終了したときに、教育資金管理契約にかかる非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額がある場合は、その残額が以下に該当する日に当てはまる年の贈与税の課税価格に算入されます。
・受贈者の30歳の誕生日
・教育資金管理契約が終了した日(すべてのケースが当てはまるわけではありません)

②一括贈与時に非課税の適用を受けるための申告手続
「教育資金の非課税の特例」の適用を受けるためには、教育資金非課税申告書を受贈者の納税地を所轄する税務署長に提出しなければなりません。

③教育資金の払い出し、および支払い
「教育資金の非課税の特例」の適用を受ける受贈者は、その支払いの事実を証するものを、提出期限までに取扱金融機関の営業所などに提出しなければなりません。

④教育資金の範囲
教育資金とは、以下に当てはまるもののことを指します。
・学校などに直接支払われる入学金や授業料で一定のもの
・学校以外へ教育を受けるために支払う金銭で一定のもの

参考サイト:http://www.nta.go.jp/taxanswer/zoyo/4510.htm

【不動産贈与】
不動産贈与とは、20年以上の婚姻期間がある夫婦の間で、居住用不動産の贈与やそれを取得するための金銭の贈与が行われた場合に、配偶者控除が最高2,000万円までされるという特例です。
また居住用家屋の敷地の一部の贈与でも、配偶者控除を適用することができます。

【生前贈与】
贈与税には「暦年贈与」と「相続時精算課税制度」の2つの制度があります。
暦年贈与は毎年110万円までの基礎控除があります。
つまり、贈与を受けた合計額が年間110万円以下である場合には、贈与税はかかりません。

また生前に相続財産の一部が相続人以外の孫にも移転することができるので、節税対策の代表例となっています。

参考サイト:http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/sozoku-zoyo/201510/index.htm

【生前贈与契約書】
贈与契約書を作成します。
贈与契約書は公証人役場で確定日付をとっておくとさらによいです。
贈与契約書には、いつ、誰から誰に、何を、いくら、どのような条件で、どのように贈与するのかなどを記載します。

・住宅
平成31年6月30日までの間に住宅取得等資金の贈与を直系尊属から受けた受贈者が、受け取った年の翌年3月15日までにそれを使用することが確実であると見込まれた場合は、贈与税が一定金額まで非課税となります。

この特例の適用を受けるためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、納税地の所轄税務署に必要書類を添付して申請する必要があります。

【暦年贈与】
①年間110万円まで無税となる暦年贈与
「年110万円まで贈与税は無税」というのは、財産をもらった側から判断します。
つまりある年に長男に、父から100万円、母から100万円贈与した場合は、贈与税の課税財産は年間200万円となり、基礎控除100万円を超えた90万円について、贈与税率10%がかかり、9万円の贈与税を申告、納付します。

②3年以外の贈与加算を受けないために
相続開始前3年以内にされた生前贈与は、相続財産に取り込まれますが、この対象となるのは、法定相続人に対する贈与のみです。
つまり法定相続人でない孫やひ孫、子供の配偶者へ年間110万円ずつ贈与することで、直前でも生前贈与による節税は可能となります。

【その他】
孫やひ孫への贈与は、あまりに多額の場合は、その後の勤労意欲を損なう可能性もあります。
贈与した預貯金を勝手に使えないように親が預かる場合や、祖父母が孫の名前を借りて貯金しているような場合は、贈与したとはいえず、名義預金となってしまい、相続財産となりますのでご注意ください。

10-2-2.特別受益があった場合の相続財産

税法上では、相続発生3年以前の生前贈与については続税を計算するための課税対象資産に含まれないとされていますが、遺産分割の際には共同相続人の公平を図るためにそれらの財産を遺留分も含めて相続分を計算しなければなりません。

「特別受益」とは相続分の計算時に含める贈与や遺贈のことで、それらを遺産に含めることを「特別受益の持ち戻し」といいます。

【計算方法】
特別受益者の相続額は
(相続開始時の財産価格+贈与の価格)×相続分-遺贈または贈与の価格
となります。

【遺留分】
遺留分とは相続人が最低限相続できる財産のことで、遺留分の算定時には特別受益財産も基礎財産に含まれます。

【特別受益の持ち戻しの免除】
ほかの相続人の遺留分を特別受益が侵害していた場合には、特別受益者は「遺留分減殺請求」によって侵害した分を支払わなければなりません。
被相続人が特別受益を財産に加えないという旨を遺言で表している場合には、特別受益を持ち戻さないことも可能ですが、遺留分の制限は受けることになります。

【相続時精算課税制度】
「相続時精算課税の制度」とは、60歳以上の父母(祖父母)から20歳以上の推定相続人である子(孫)に対して財産を贈与した場合に選択できる贈与税の制度です。
この制度には贈与財産の種類や金額、贈与回数などに一切の制限がないという特徴があります。

相続時精算課税では、その贈与者が亡くなった際にすでに納めていた贈与税相当額を相続税額から控除して、贈与税や相続税を通じた納税を行っていきます。

また相続財産に贈与を受けた財産を加算して相続税の計算を行いますが、その結果、相続税の基礎控除額以下となった場合は、相続税の申告は必要なくなります。

・デメリット
非課税枠が高いというメリットはあるものの、贈与税としての節税効果がないこと、一度選択すると二度と通常の贈与税に戻れないことなどデメリットも多く、制度自体も複雑です。

【特別受益証明書】
「特別受益証明書」とは、一言でいうと「生前贈与を受けていたために相続分がないこと」を証明するための書類です。
ただし、特別受益証明書を作成しても「マイナスの財産」の相続放棄をしたことにはなりません。正式な手続きで相続放棄をしないと債務はそのまま継承されてしまうので、注意が必要です。

11.相続完了

被相続人の財産債務を把握するには、あちこちに問い合わせをしたり、資料を送ったりすることになります。各種財産債務の名義変更を終えると相続完了となります。

12.その他

12-1.成年後見制度

認知症や知的障害などの理由で判断能力の不十分な方にとって、遺産分割の協議をスムーズに行うのは難しいことです。
そんな方のために、判断能力を保護して支援する「成年後見人」を用意するための制度が「成年後見制度」です。

成年後見制度の詳細については、法務省のHP上に、添付のPDFのパンフレットが掲載されております。

参考サイト:
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji17.html
http://www.moj.go.jp/content/001130908.pdf

12-2.相続診断士

相続診断士とは、相続診断を行って相続に詳しくない方へ相続に関する啓蒙活動を行う国家資格の持ち主です。

相続診断士は、被相続人の生前から相続問題の重要性を家族に伝えたり、相続に関するトラブルが発生しそうな場合には弁護士などの専門家と一緒に解決に取り組んだりする、相続を円満に終わらせるためのプロといえます。

12-3.便利なテンプレートのまとめ

相続税の申告要否の簡易判定シート
http://www.nta.go.jp/souzoku-tokushu/souzok-kanihanteih27.pdf

相続税申告のためのチェックシート(平成27年分以降)
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/sozoku/checksheet2015/pdf/01.pdf

相続税の申告の準備はお早めに
http://www.nta.go.jp/souzoku-tokushu/souzoku-shinkokusukejuru.pdf

相続税の申告の仕方
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/sozoku/shikata-sozoku2015/index.htm

相続税申告書作成時の誤りやすい事例集
http://www.nta.go.jp/souzoku-tokushu/souzoku-ayamarijireishu.htm

13.まとめ

①相続開始後、期限のあるものについてもれがないか確認する。
・3か月:相続の放棄または限定承認を家庭裁判所に申述する
・4か月:被相続人が個人事業主であった場合は準確定申告および納税期限
相続人がその事業を引き継ぐ場合、相続人の個人事業主の開業届や青色申告承認申請書、消費税の届出関係の提出期限も4か月以内のためご注意ください。
・10か月:相続税の申告および納税期限

②4か月目までに行う準確定申告は所得税の手続きとなります。
通常の所得税の確定申告書のタイトルに、平成○○年分の「準」確定申告となるように、「準」を1文字挿入します。
また余白に相続開始日を記入します。氏名に相続人代表の氏名を併記します。

通常の申告書とあわせて、準確定申告の付表に相続人全員で署名、押印を行います。

準確定申告が還付となる場合に、相続人代表に全額還付させる場合は委任状も添付します。
委任状は税務署ごとに書式が異なる可能性があるので、被相続人の住所地の所轄税務署に電話をして、委任状を取り寄せます。

・準確定申告の付表
http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/yoshiki01/fuhyo/23.pdf

・大阪国税局独自の委任状
http://www.nta.go.jp/osaka/topics/shinkoku-shorui/pdf/01.pdf

・記載方法
http://www.nta.go.jp/osaka/topics/shinkoku-shorui/pdf/02.pdf

③名義変更の際は、遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書以外にも相続人の住民票、戸籍、被相続人の除籍、改正原戸籍などの添付書類が必要になります。
必要書類は提出先によって異なる場合もあるため、その都度確認をします。

相続人の確定のため、上記書類は相続開始時点で一度取り寄せを行います。

遺産分割が確定し、遺産分割協議書の作成ができると、本格的に名義変更手続きができるようになります。
銀行の名義変更の際は、発行から3か月以内のものが必要となるため、前半と、後半で取り寄せることが多いです。
発行手数料がかかりますが、こちらは税金計算上、経費とすることができません。

④相続人の確定、相続財産の確定に時間がかかります。
まずは相続税の申告要否の簡易判定シートで、相続税の申告義務があるかどうか判定してみてください。

⑤相続対策はあくまで現行法のなかでしか行うことができません。
法律の改正により、想定していた節税効果が薄れてしまうこともあります。対策を一度行ったら終わりではなく、適宜アップデートも必要となります。

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