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ロシアから見た「正義」 “反逆者”プーチンの挑戦

オバマが偉大な大統領である3つの理由

北野幸伯 [国際関係アナリスト]
【第24回】 2016年5月27日
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就任時に世界的大人気を誇ったオバマ米大統領。今では見る影もなく評価が失墜し「史上最低の米大統領」という人すらいる。しかし、私はまったく逆で「オバマは偉大な大統領だ」と考えている。その理由は3つある。

 現職の米国大統領として初めて広島を訪問し、話題になっているオバマ。就任時は若々しく、笑顔がよく、スリムな「初の黒人大統領」として、超人気だった。彼が演説で多用した「Yes we can!」のフレーズは、米国や日本だけでなく、世界中で流行語になった。

 しかしその後、オバマの評価は失墜した。今では最低評価が付けられることも多いオバマだが、彼の実績をここで冷静に振り返ってみると、3つの偉業を成し遂げていることが分かる。

<理由1 世界経済を破局から救った>

 オバマは2009年1月、大統領に就任した。これは「最悪のタイミング」だったと言える。なぜなら08年9月の「リーマンショック」から、世界は大不況に突入していたからだ。この大不況は、1929年からはじまった「世界恐慌」と比較され、「100年に1度」と形容される。そして、実際そのとおりだったのだ。 

今や「史上最低の大統領」と酷評されることもあるオバマ。しかし彼の実績を冷静に振り返ってみると、実は大きな功績がいくつかあることが分かる。さらに、政権末期のオバマは、日本にとってもありがたい味方だった Photo:REUTERS/AFLO

 しかし、危機後の対応は、1929年と09年で大きく異なる。1929年の世界恐慌時、米国大統領は「市場が自由であれば、すべてよし」と考える「古典派」フーバー大統領だった。1929~1933年まで大統領を務めた彼は、古典派らしく「国家は経済に介入するべきではない」という姿勢を崩さなかった。結果、恐慌は、4年間放置されることになり、状況は悪化しつづけた。

 08年からの危機は、違った。オバマは、きちんと80年前の教訓から学んでいたのだ。彼は、財政支出を劇的に増やし、躊躇することなく金融機関や企業を救済していった。そのため、米国の財政赤字は07年に4140億ドルだったのが、オバマが大統領に就任した09年には1兆8960億ドルと、4.5倍増加した。

 国家の借金は増えたものの、間違いなくこの措置は、米国だけでなく世界経済を破局から救った(もちろん、米国自身が作り出した危機ではあるが、それはブッシュ政権の責任で、オバマに責任はない)。

 結果、世界経済が最悪だった09年、米国の国内総生産(GDP)成長率は、マイナス2.78%だった。しかし、その後は、毎年1.5~2.5%の成長を続けている。米国のGDPは、07年に14兆4776億ドルだったが、15年は17兆9470億ドルと、約24%も増加した(ちなみに日本のGDPは07年に513兆円だったが、15年は499兆円と、逆に減少している)。

 オバマは未曾有の経済危機を乗り越え、米国を再び成長軌道に乗せることに成功したのだ。

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北野幸伯 [国際関係アナリスト]

きたの・よしのり/1970年長野県生まれ。モスクワ在住24年の国際関係アナリスト、作家。その独特の分析手法により、数々の予測を的中させている。1996年、日本人で初めて、ソ連時代「外交官・KGBエージェント養成所」と呼ばれたロシア外務省付属「モスクワ国際関係大学」(MGIMO)を卒業(政治学修士)。1999年創刊のメールマガジン「ロシア政治経済ジャーナル」は現在読者数3万6000人。ロシア関係で日本一の配信部数を誇る。主な著書に「隷属国家日本の岐路」(ダイヤモンド社)、「プーチン最後の聖戦」、「日本自立のためのプーチン最強講義」(共に集英社インターナショナル)など。


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