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かなり“攻めている”「ひとみ」事故報告書

中間報告から見えてくる宇宙研の課題

2016年5月27日(金)

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 5月24日、3月28日にトラブルを起こして機能を停止し、4月28日に復旧を断念したX線天文衛星「ひとみ」の「異常事象調査報告書」が、宇宙航空研究開発機構(JAXA)から文部科学省・宇宙開発利用部会・X線天文衛星「ひとみ」の異常事象に関する小委員会に提出された。

 一言で言って、日本では珍しい、かなり“攻めた”内容の中間報告である。

 事故が起きた原因は、今回の中間報告でほぼ判明した。そして、報告書からは、宇宙科学研究所(ISAS、以下宇宙研)という組織にかなり大きな問題があったらしいことが読み取れる。

 この報告書は、組織文化の問題まで遡って原因を究明しようとする姿勢を見せている。よくここまで関係者がきちんと証言するだけの、話しやすい環境を作ったと思う。

 前回、この連載で「JAXAから独立した強い権限を持つ事故調査委員会を立ち上げ、調査対象となる関係者に免責特権を与えて、すべての情報を引き出すことが必要」と書いたが、小委員会による事故調査はどうやらその方向に向かっているようだ。ぜひとも組織文化や歴史的経緯まで踏み込んだ、今後の事故調査の規範となるような最終報告書を作成してほしい。それが、この事故から最大限の成果を引き出す唯一の道だろう。

X線天文観測衛星「ひとみ」の概要(事故調査報告より)

「STT異常」から始まった

 まず事故の経緯のおさらいをしよう。

 JAXA、X線観測衛星「ひとみ」の復旧を断念(5月2日掲載)の記事からごく簡単にまとめる。

衛星「ひとみ」は、自分の姿勢を調べるスタートラッカー(STT)というセンサーの信号が慣性基準装置(IRU)という機器に伝わらなかった(STTにリセットがかかったらしい)ことがきっかけで、実際には一定の姿勢を保持しているにも関わらず「回転している」と誤認。回転を止めようとして逆に回転し始めてしまった。次に、機体を一番安全なセーフホールドモードに入れようとしたが、搭載ソフトに与える、スラスター(小さなロケットエンジン)で姿勢を変える際に使用するデータの一部が間違っていたために、さらに回転が加速し、ついに遠心力で太陽電池パドルと、観測機器を載せた「伸展式光学ベンチ(EDB)」がちぎれてしまった。

 詳細は前回記事末尾のこれまでに判明している、ひとみ喪失事故のプロセスを参照してほしい。

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「かなり“攻めている”「ひとみ」事故報告書」の著者

松浦 晋也

松浦 晋也(まつうら・しんや)

ノンフィクション作家

科学技術ジャーナリスト。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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