川口マーン惠美「シュトゥットガルト通信」

虫が良すぎたドイツの目論見
〜トルコとの“難民取引”は破綻寸前、窮地に立つメルケル首相

難民の運命はいかに?

2016年05月27日(金) 川口マーン惠美
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イスタンブールで開かれた「世界人道サミット」に参加し、トルコのエルドアン大統領との首脳会談に臨んだメルケル首相 〔PHOTO〕gettyimages

難民問題は終わっていない

5月22日、メルケル首相が、こじれにこじれた難民問題を背負ってトルコへ飛んだ。彼女は、首相になって以来11年の間で、今、おそらく一番追い詰められている。トルコのエルドアン大統領に、こっぴどくやられているのだ。

ヨーロッパは、どの国も難民の波に弱り切っており、とくにイタリアとギリシャは経済的にも大きな打撃を受けている。そこで去年、メルケル首相は、イタリアやギリシャに溜まっている難民を、EU各国が人口や経済力に応じて平等に引き取ろうと提案した。

しかし、これは見事に失敗。皆、口では賛成したものの、本当に引き取る気でいるEU国はほとんど無い。

そもそも、EUの多くの政治家や国民は、難民がここまで急増したのは、ドイツの「ようこそ政策」のせいだと苦々しく思っている。

昨年の夏、メルケル首相はドイツ国内の難民施設を訪問し、ハッピーなシリア難民と、にこにこツーショットの写真を撮っていたではないか。そんなに難民が好きならドイツが引き取れば良い。難民だって皆、ドイツに行きたがっている。

もっとも、そうはっきり言う国がないのは、ドイツの経済力と政治力が強大だからだ。

そうこうするうちに、EUの多くの国は国境を閉じてしまった。だからギリシャまで来た難民はバルカン半島を北上できず、ここ4ヵ月、マケドニア国境で立ち往生している。想像を絶する悲惨な状況だが、EUは何もしない。国際人道グループが腹を立て、抗議のために援助活動を停止するという一幕さえあった。

そこで、困ったメルケル首相は、新たに「解決策の第二弾」を打ち出した。これが冒頭に書いたトルコとの摩擦の端緒となる。

その解決策とは、すでにトルコに入っている難民を、そのままトルコに留めておいてもらおうという画期的な(!)作戦だ。

次ページ 作戦の内容はこうだ
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