子育て・教育
駒崎弘樹 子どもの貧困を救う八つの提案
阿部彩教授×駒崎弘樹(下)子どものための投資は誰が負担する?
まずは義務教育をきちんと行う、これに尽きる
阿部 私は教育政策の専門家ではないので大きなことは言えませんが、やるとしたら公教育の充実だと思います。義務教育である中学校を出た時点で、親の所得によって学力差が出ることがないような制度を目指すべきだと思います。その後の高等教育については、希望する子は親の所得に関係なく目指せるようにする必要があります。しかし、まずは義務教育をきちんと行う。これに尽きるのではないでしょうか。
駒崎 学習支援に力を入れる自治体も出てきていますが、そういったサービス給付的な支援と、就学援助をはじめとする現金給付ではどちらが有効と思われますか?
阿部 学習支援についてはすごく熱心な取り組みをなさっている方も増えていますが、そういった補習的な取り組みに加えて、まずは公教育の底上げだと思います。九九ができない子を9年間も放置してしまう公教育なんて問題です。教員の適切な配置や、養成、業務の割り振りなど、教員プログラムをきちんと考え直す改革が必要だと思います。
駒崎 なるほど。僕達も「子ども食堂」をやっていますが、投資対効果でいうと決して高くはないんですよね。20人来てくれたとして、そのうち貧困家庭はどれくらいいるか分からなかったりしますし。源流である公教育でしっかりフォローするほうがずっと効率的ですね。
阿部 素晴らしい取り組みですし、それが救いになっている家庭もたくさんあると思います。ただ、それを政府が打ち出す目玉にするのはおかしいということです。
駒崎 おっしゃる通りですね。でも、気を付けていないと、そうなってしまいそうで…。
阿部 教育の現金給付の支援でいうと、「就学援助費」というものがありますが、まず「学校が親に課す経費」の削減を進めるべきだと思います。何から何まで毎年買わせないで、上手にリサイクルする仕組みをつくればいいんですよ。絵の具、習字道具、リコーダー、朝顔のプランター……こういった教材を毎年イチからそろえるから、就学援助費というコストがかさむんです。「実質、何も持たなくても学校に行けます」というくらいを目指せばいいと思いませんか。
駒崎 本当にそうですね。では、“ワンショットでできる子どもの貧困対策案”として、学校教材に使えるクーポンの配布というのは有効でしょうか。
阿部 クーポンにすると、価格をつり上げて利益をカサ増しする悪徳業者が出てくる心配がありますね。シンプルに、学校で一括して教材を購入して家庭に配布すればいいのではないでしょうか。入札させて一番安いところで決めればいいのですから。
さっき言ったような学科教材のほか、児童・生徒が自由に使えるパソコンも全学校に設置したほうがいいですね。中学校はだいぶ進んでいるかもしれませんが、小学校ではまだないところが結構ありますよね。でも、「パソコンで調べてきなさい」っていう宿題が出たときに、パソコンがない家庭の子は置き去りにされてしまうんです。
駒崎 小学校のパソコンというのは盲点でした。それなら、ワンショットの提案としていけそうですね。
阿部 その他の教材も、全部ワンショットで一つずつやっていけばいいと思うんですよね。1年限りではなく何年も使えるものですから、効果は持続します。
駒崎 数万円する制服だって学校が購入してリサイクルするワンショット政策が可能ですね。財源がないと言いつつ、毎年のように景気対策をやるくらいなら、こういう使い方をしてほしいですよね。「プレミアム商品券」なんて市場をゆがめるだけだと僕は思っていて反対なんです。しかも、何千億円と使っていて…。
阿部 これだけ国が借金を抱えているのに、どうしてそういう使い方ができるんでしょうね。
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駒崎弘樹 社会を変えるダイアローグ
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