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駒崎弘樹 子どもの貧困を救う八つの提案

子育て・教育

駒崎弘樹 子どもの貧困を救う八つの提案

阿部彩教授×駒崎弘樹(下)子どものための投資は誰が負担する?

大学卒業資格に固執する必要はなくなってくる

阿部 「生活保護世帯も大学に行けるようにする」。生活保護世帯の子どもは高校卒業したら就職をする原則になっているのを変えるということですね。

駒崎 はい。世帯分離をしたら進学はできるのですが、それだと生活保護の給付が3~4万円減ってしまうということで進学を断念しているケースが少なくないそうです。だから、世帯分離をしなくても生活保護費をキープしたまま大学進学できるようになればいいのではないかと。

阿部  「大学を出ないと高待遇の職に就けず、貧困が連鎖する」という前提に立ってのご意見ですね。この点については、私は少し違う見方をしていて、少子化で大学全入時代に突入した今となっては、「大学に入ること=生活の安定」という図式が成り立たなくなっていると思うんです。大学に行くことで本人のヒューマンバリューが高まればいいのですが、必ずしもそうではない場合は大学に行かないほうが良い選択になる場合だってある。大学教員の私が言うのもおかしいかもしれませんが(笑)。

 実際、子どもを大学に行かせるというのは子育て期間を延長することになるので、生活が苦しい世帯にとっては、よほどのメリットがないと選択しづらいという現実もあります。

駒崎 確かにそうですね。これまでは生活保障として大学に行かざるを得ない部分があったが、それさえなくなれば大学に行かなくてもいいのではないかと。

阿部 はい。大学教育というより労働市場側の問題ですね。大学以外の教育機関や職業訓練機関を充実させることで、より早期にプロフェッショナルな技能を持つ人材を育成し、同時に産業側もそういった人材を積極的に受け入れるようになれば、今ほど大学卒業資格に固執する必要はなくなるわけです。

駒崎 工業高校や農業高校は、本来はそういった役割を担う教育機関であったはずですよね。

阿部 はい。でも、労働市場側が求めてきたのは、早期に専門的技能を習得した人材よりも、真っ白で何色にでも染まる大卒の人材で、長い年月をかけて企業色に染め上げていくのが、日本の大企業が築いてきた終身雇用システムだったんですよね。でも、そのシステムも崩壊しているわけですから、これからは技能が評価される時代になるんじゃないでしょうか。そのときに欠かせないのが、駒崎さんも提案されている「同一労働・同一賃金」の制度ですね。これこそ、本当の本丸でしょう

駒崎 はい。これに関しては、自民党の安倍首相が所信表明演説で明言したというのは、歴史的にも大きな潮目を迎えていると感じています。扉は開いた、だから声をもっと上げなければならない!という気持ちでいます。教育政策の面で改善すべき点は他にありますか?

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