多くの優秀な科学者は小保方さんのことをもう口にしない。
既に議論をしつくされたし、今の時点で彼女を擁護している人には
多分ロジカルな議論は成り立たない。
そして、小保方さんについて議論をすることで、彼女と同じ土俵まで自分を下げてしまうことを恐れているのだ。あまりにもバカバカしいから。
私もそう思っていて、
この問題は地雷だとわかっているからできれば踏みたくなかったのだけど、
間違ってツイッターで踏んでしまって、
どうもこの件が小保方さんが女性であることと密接に関係しているらしいと知って、
どうしても言いたくなったのでここに書きます。
多忙につき読みやすい体裁になっていないことをご容赦願いたい。
小保方の問題が未だにくすぶっている原因は、小保方が科学に大して不誠実な態度を貫いているからであって、
①小保方さんが女性だから責めやすかった
②小保方さんが女性だから男性研究者が嫉妬した
という構図は全く的はずれなものだ。
また、分生研の加藤茂明と同列に語ることも違和感がある。
小保方さんの態度は科学に対して不誠実だからみんな怒っているのだ
まず、小保方の科学に対し不誠実な態度について。
小保方の論文に剽窃や捏造があったことは事実だ。
http://www3.riken.jp/stap/j/c13document5.pdf (理研報告書)
しかしその剽窃や捏造が明らかであるにもかかわらず
彼女はSTAP細胞があると強言し論文の撤回を渋った。
また、理研の調査にも積極的でなかった。実験ノートもオリジナルデータも提出されなかったし、それらの要因により
論文の撤回にとても時間がかかってしまった。
論文は、次に繋がる科学の基礎となっていく部分で、
もしも同じ実験をして先行研究と結果が異なってしまった場合には
「なぜ先行研究と異なる結果が出てしまったのか」という注釈を付けずに
論文を公開することは原則的に出来ないのだ。
そして「なぜ先行研究と異なる結果が出たか」を調べるのには結構な労力が必要だ。
やったことある人はわかると思うけど。
つまり、一つ捏造論文があるということは、次に繋がる科学に甚大なミスリードを誘発したり、不必要な労力を強いることになる。科学にとって大きな損失だ。
多くの科学者はそれを理解しているから、できる限り誤解が生じないように、後から実験する人がちゃんと再現が取れるように方法を論文に明記し、連絡先も掲載している。
一方で小保方は論文の間違いを指摘された後も論文を撤回しなかった。
そればかりか「論文が正しかったか否か」という問題を「STAP細胞があるかないか」という
問題にすり替えようとした。
専門家が査読する科学誌を通さずに自分の主張を押し通そうとするのは科学者としてとても不誠実だ。
更にSTAPが再現できないとなったら
科学的な真理の証明プロセスから逃亡し、本の執筆や雑誌の対談といった、
全く科学的でない方法で、自らの正当性を主張し始めた。
当然彼女を擁護することはできない。
それは彼女が女性だからではない。
彼女が科学者として不誠実で、多くの科学者が積み上げてきた科学的知見を、自己保身のために踏みにじるという最悪の行為を行ったからだ。
加藤茂明氏のこと
つぎに、何かと取り沙汰される加藤茂明について。
私はもちろん加藤の事件もなかなかひどい捏造事件だったと思う。
なにせ世に排出した捏造論文の量が多いのだ。
ただし、決定的に違うのは、加藤自身が捏造を指示した証拠が無いことだ。
加藤自身はデータの取得や論文執筆の初期段階で関わっていなかったこと、
加藤研の2グループのうち1グループで主に捏造論文が量産されていたこと、などから、
加藤自身が積極的に捏造を指示したと考える証拠が希薄であることから、
加藤は今の処分に落ち着いているのだと思う。
ただし、捏造発覚を隠蔽した事実が指摘されており、やはり科学に対する不誠実さを感じる事件である。
(この部分において、片瀬久美子先生からツイッターで指摘を頂いたために一部修正させていただきました。加藤茂明氏が捏造の発覚を隠蔽しようとしたことが、東大の報告書に明記されておりました。
調査不足をお詫びするとともに、片瀬先生に感謝申し上げます。
東大の報告書はこちらです。
http://www.u-tokyo.ac.jp/content/400007772.pdf
http://www.u-tokyo.ac.jp/content/400007786.pdf
)
もちろん加藤はそれらの論文の責任著者であったので責任は取るべきだが、
部下が本当に悪意を持ってバレないように捏造を行った場合に、
PIが予め部下を疑ってかかることが健全かと言われると答えに窮する。
私はPIじゃないけど、PIになったら学生を信じたいから。
(もちろん捏造を隠蔽しようとしたのはだめだ)
異論はあるだろうが、加藤が東大をやめた後に福島で第二の研究人生を歩もうとしていることに、私はさほど違和感を覚えないのだ。
単純に学生の指導が下手だったんだろう。
更に、小保方と加藤の決定的な違いは、
小保方は筆頭著者かつ責任著者だったのに対し、
加藤は責任著者ではあるが筆頭著者ではなかった点が挙げられると思う。
筆頭著者かつ責任著者は、もうその論文の全て私の責任ですと言わんばかりの重大な責任を論文に対して負っているわけで。
そこで捏造が見つかったらもうほぼ小保方が悪い、となるのは当然だ。
なお、この問題は「他にも捏造している人がいるから小保方さんだけが責められるのはおかしい」というたぐいの問題では無い。
他にも捏造している人がいるなら、当然そのほかの人も論文の修正なり撤回なりをしなければならないことは自明である。
はじめから真理の追求を目的としていなかったように見える小保方は、
多分科学者では無くて詐欺師だったんだと思う。
後もう一つ。この件で早稲田大学が非常に非難を浴びたことは悲しいことだと思っている。確かに学位取り消しに至るまでのプロセスはいまいちだったけれど、
早稲田出身の研究者で優秀なヒトもたくさん知っているから。
早稲田大学が教育機関として不適切だとはどうしても私には思えないのだ。
以上、私の考えを書いた。
なお、本エントリーへのコメントについて、お応え出来ない場合が有りますのでご容赦を。
※本記事は、6月半ば頃加筆予定です。も少し詳細を述べたい部分があるのですが、すぐにまとめてアウトプットできそうもないので。
2016 5/27 1:31am 指摘をうけて一部修正いたしました。