中高年のスポーツ人口が増えており、中にはアスリート並みに運動をしている人も少なくありません。アラフォーになってからスポーツを始める人も増えていますが、それに伴い、スポーツで体を痛める人も増えています。今回は整形外科のメディカルチェックについてお伝えします。けがや手術の経験者はもとより、少しでも不安があったり、心配な人は整形外科で確認することをおすすめします。
整形外科のメディカルチェック
突然死のリスクを回避する循環器のメディカルチェックについては、前回お伝えしました。心臓の既往症や不整脈、血圧が高いなどの症状がある場合に、スポーツを始めるときに内科医を受診して確認する人も少なくありません。
しかし整形外科を受診して骨や関節、筋肉、人体などについてスポーツを始める前にチェックする人は少ない。いきなりスポーツを始め、腰やひざを痛めて整形外科を受診する人が後を絶ちません。整形外科のメディカルチェックのポイント、種目によるしょうがいの違いについて確認してください。
チェックポイント
スポーツをしたときに起こるしょうがいは
- 加齢による老化
- 今までにした病気やけが、治療方法
- どんなスポーツをしてきたか
などによっても違います。
けがや手術とスポーツの例
【先天性股関節脱臼のあった人】
- 治療しても股関節にある程度の変形が残っています。ジョギングなど股関節に負担のかかるスポーツは危険です。
【膝にけがをしたことがあったり、変形がある人】
- 膝に負担のかかるスポーツは避けたほうが無難です。
【脚などの骨折で手術をしたことが有る人】
- 左右の長さが違うことがあり、知らずにランニングや長く歩いたりすると、関節や骨に負担がかかり、痛みの原因となります。
【柔道などの格闘技、ラグビーの経験者】
- 首に無理な力をかけ続けてきたために、首の骨が変形し、障害を起こしやすくなっています。
こんな症状があったら検査を
肩こりやしびれがる場合、脊椎が変形して神経が圧迫されたり、炎症が起きていることもあります。中高年になると、これらの症状が軽くなることはほとんどありません。徐々に重くなるのがほとんどです。
【関節】
- 痛い
- 曲げ伸ばしをするときに音がする
- 動きが悪い
- 変形している(O脚など)
【脊椎】
- 首、背中、腰が痛い
- 肩こり、手足のしびれがある
- 動きが悪い
- 姿勢が悪い
このような症状がある場合には、整形外科を受診し、
- スポーツを始めてもよいか
- どのような種目なら良いか
- どの程度までやってよいか
を指導してもらいましょう。
運動を始める時の注意点
アラフォーがスポーツで障害を起こすのは、からだが固くなっていることも原因の一つです。まず、体の柔軟性を調べてみましょう。また、スポーツの前にはストレッチなどを十分にして体をほぐしてから始めることが大事です。(ウオーミングアップ)
スポーツ後もストレッチなど整理運動を丁寧に行い、ゆっくりと体を冷ますと筋肉の痛みが残りにくくなります。(クールダウン)
慣れてきて、試合や大会などに出場するときは、準備期間を十分にとり、当日体調が悪い時は参加を取りやめることも必要です。決して無理をしてはいけません。
体の硬い人の注意点
日頃からストレッチ運動などを続けていれば、ある程度は柔らかくすることは可能です。なかなか柔らかくならないという人は、自分でコントロール出来ない力が、急にかかる恐れのあるスポーツは、避けたほうが無難です。例えば、
- ラグビーや柔道
脚にタックルされたり、曲がりにくい関節を攻められたりすると、ケガをしやすくなります。 - スキー
ころんだ時に体重がひざにかかると、ひざを痛めることがあります。
体の硬い人は、自分で力の加減ができる、軽い水泳やウオーキングなどから始めると良いでしょう。
体の柔軟性のチェック
以下のテストで身体が固くなっている人は、すぐにスポーツを始めるのではなく、普段からストレッチ運動などで身体の硬さをとることと、準備体操を入念におこなってからスポーツを始めるようにします。
【大腿四頭筋】
- うつ伏せに寝てひざを曲げ、かかとをおしりにつけようとする
かかととおしりの間が握りこぶし一個以上あく場合は、太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)が固くなっています。
【大腿二頭筋】
仰向けに寝て脚を伸ばし、ひざを伸ばしたまま片足をあげる挙げた脚と床との角度が75度以下の場合は、大体の後ろの筋肉(大腿二頭筋)が固くなっています。
【股関節から背中にある筋肉】
- 仰向けに寝て両足を伸ばし、片膝を胸にかかえる
伸ばした方のひざがあがって、握りこぶしが1個以上入る場合はまた関節から背中にある筋肉が固くなっています。
【背中の筋肉】
- ひざを伸ばして前屈する
手と床との間が10cm以上あく場合は、背中の筋肉が固くなっています。
【足首の筋肉】
- アキレス腱を伸ばす姿勢を取る
- 脚と床に垂直な面との角度が30度以下の場合
足首の筋肉が固くなっています。
用具にも気を使い無理をしないこと
スポーツを行うときは
- 自分の体にあったスポーツを選ぶ
- 使用する用具に気を使う
- 無理をしない
ことが大切です。具体例としては
【テニス】
- 大きなラケットの使用は避ける
- 網の張り方をゆるめにする
- ボールの空気を入れ過ぎない
手首や肘の負担を軽くするための工夫をします。準備運動として、ラケットをもたずに腕だけを振る素振りをしておくと、肩を痛めることが少なくなります。
【ジャズダンス】
底の薄い靴は避けましょう。飛んだりはねたりする動作が多いので、衝撃が直接足に響きます。
【ジョギング】
舗装道路では、脚に体重の2~3倍の力がかかります。脚を保護するようなそこの厚い靴をはくようにします。走る時の足は、かかとの外側から着地するので、靴のかかとの外側が減ってきたら、新しい靴に履き替えることも大切です。
アラフォーのための大腿四頭筋の鍛え方
スポーツの際にひざを痛める中高年が多いのは、大腿四頭筋が弱っているためです。大腿四頭筋の鍛え方は以下のようにします。
- ひざを伸ばして座り、ひざの下にバスタオルを丸めて入れる。
ひざに力を入れてバスタオルに5秒間押し付け、5秒間休む。 - 仰向けに寝て、片膝をたて、一方の足を伸ばして、床から15度~20度上げたところで止めます。5秒間止め、足をおろして5秒間休む。
- 椅子などに腰掛け、ひざから下を引き上げて床と平行にする(強度を上げるときは足首に1kgほどのおもりをつける)。
5秒間上げて、5秒間休む。ひざの関節を動かす運動なので、ひざに痛みがあるときは行わないようにする。
アラフォーの男性なら、1セット20回、一日に2~3セット行います。
種目によるしょうがいの違い
スポーツの種類により、体に負担のかかる場所が異なるので、しょうがいが起こりやすい部位や、けがのタイプも異なります。それぞれ具体的に見ていきましょう。
首を痛めやすいスポーツ
- 水泳
平泳ぎやバタフライでは重たい頭を反り返らせる動作をします。
首や肩の筋肉に負担がかかり、痛みやしびれが起こることが有るので注意が必要です。 - サイクリング
ハンドルの位置が低く、首を上げて前を見るスポーツタイプの自転車は、首に負担がかかるので中高年には向きません。 - ゴルフ
首を動かさず、体を十分に回転させてボールを打つように指導されます。しかし、首を固定して体をひねるのは、首をぐるぐる回すのと同じになります。首の骨に変形がある人は肩や手につながる神経を圧迫して、首の痛み、手のしびれ、肩こりなどを起こす可能性があります。
腰を痛めやすいスポーツ
- ゴルフ、ボーリング、卓球
背骨の周りの筋肉が硬い人は、腰をひねる動作で筋肉を傷めます。 - 背骨と背骨の間にあるクッションの役目をする椎間板が変形している人
坐骨神経痛が起きたりします。反り返る動作や姿勢も腰に負担がかかるので、注意が必要です。
肩を痛めやすいスポーツ
- バレーボール、野球、バドミントン、テニス
アタックやスマッシュなど、腕を振りかぶる動作で、肩を取り巻いている筋肉を痛めたりします。 - 腕を上げるときに痛みが出たり、動きがスムーズにできなくなることがるので、五十肩で動きが悪い人は、無理は禁物です。
肘を痛めやすいスポーツ
- テニス、ゴルフ、剣道
手首や、腕を曲げ伸ばしする筋肉が弱い人が、ラケットやクラブ、竹刀を振り回すと、その筋肉が付いている肘を痛めることが有ります。テニス肘、ゴルフ肘です。
膝を痛めやすいスポーツ
- ジョギング、テニス、スキー
体重のぞかはひざに強い負担をかけます。人工コートでは、靴との摩擦が大きく、急に止まったりすると人体や軟骨を痛めることがあります。 - スキー
若い時とおなじ感覚で滑ると、ひざに無理な負担がかかり、ちょっとしたことで痛めます。
足を痛めやすいスポーツ
- バレーボール、ジョギング、ジャズダンス、ハイキング
山歩きなどでは、石ころ道を歩いたり、坂道の上下などで足首に思わぬ負担がかかり、腫れたりすることがあります。
大腿、下腿を痛めやすいスポーツ
- テニス、短距離走
筋肉が硬い人や、筋肉が痩せている人が無理をすると、肉離れなどが起きやすくなります。
中高年の体の特徴
健康であっても、程度の差はありますが、中高年になると体が老化していきます。どんな特徴があるのか確認しておきましょう。
- 骨がもろくなる
骨の組織がスカスカになって、骨折しやすくなります(骨粗しょう症)特に閉経後の女性に多く起こります。 - 関節の変形
加齢とともに関節が変形し、それが原因で痛みが出てきます。 - 腱の変性
腱の柔軟性がなくなり、アキレス腱などを痛めやすくなります。 - 筋肉の萎縮 筋肉の柔軟性がなくなって痩せ(萎縮)、筋力が低下します。
中高年の体は、このような状態になりがち。若いときと同じつもりでスポーツを始めると危険です。特に長期間スポーツから遠ざかっている場合は、体の変化に気付かず同じように動きがちなので、注意が必要です。
技術と体力は別物
技術は身につくので、途中ブランクが有ってもある程度は取り戻せます。しかし、体力はトシを追うごとに低下しています。若い時の技術を過信して、体力ギリギリまで行ったり、無理をしたりすることは避けてください。
ジョギング等の個人スポーツは、調子が悪い時は簡単に休んだり、辞めたりすることができますが、ゴルフやテニスなど、対戦形式で楽しむスポーツは、痛みなどが有っても続けてしまいがちです。記録を狙っている時なども、無理をしがち。
痛みやしびれを我慢してスポーツを続けることが、故障の原因に繋がります。
まとめ
アラフォーでスポーツを始める人も多い。若いころに覚えた技術は思い出すことはできますが、体の老化、体力の低下は避けることはできません。ケガや手術をしたことが有ればなおさらです。過去の技術を過信していきなりスポーツを始めたり、無理をすると故障や事故に繋がります。
関節や筋肉の痛みが有ったり、不安な人はスポーツをはじめる前に、整形外科のメディカルチェックをおすすめします。
「ナースのひとりごと」~今日も1ページ