[動画]Guardian, November 7, 2013.

7日、イギリス議会の情報・安全保障委員会(Intelligence and Security Committee of Parliament)において、情報機関トップ3人が出席し、元米中央情報局(CIA)スタッフのエドワード・スノーデン(Edward J. Snowden)氏によるリークをきっかけにして、批判の声が高まっている一連の通信情報活動について証言した。

出席したのは、英秘密情報部(MI6)のジョン・サワーズ(John Sawers)長官、英保安局(MI5)のアンドリュー・パーカー(Andrew Parker)長官、英政府通信本部(GCHQ)のイアン・ロバン(Iain Lobban)長官の3人である。

MI6、MI5、GCHQの各長官が揃い踏みで委員会に出席し、証言を行なうのは初めてのことであり、午後2時から約90分にわたって続いた委員会の様子は、英BBC放送によって生中継された。

さて、冒頭に言及したように、ドイツやフランスほどではないにしても、NSAと連携してネット上の通信監視や通話記録の収集などに関わっていたという事実が発覚したGCHQについて、イギリスでも批判の声や疑問を呈する意見が示されている。英政府は、リークが発覚した後、一連の通信情報活動について、あくまでも法律に基づいて行なわれているのであり、テロ計画や犯罪を摘発するためのものだと主張してきた。

今回、委員会で証言した3人の長官たちも、基本的には従来の主張を繰り返すものであった。たとえば、GCHQのロバン長官は、「我々は、多くの人々の通話を傍受したり、メールを読んだりしているわけではない。それは割に合わないし、合法的なものでもない。だから、我々は、そんな事をしていないのだ」として、その目的は、テロリズムと犯罪に限って行なわれていると説明した。

また、MI5のパーカー長官は、2005年7月に起きたロンドン同時爆破テロ事件以降、全部で34のテロ計画を阻止することに成功したと語り、これまで進めてきたイギリスのテロ対策が効果を上げていることをアピールした。

一方、スノーデン氏のリークによってもたらされた影響について、MI6のサワーズ長官は、「我々の敵は、スノーデンの暴露によって、揉み手をして喜んでいるだろう」と指摘した上で、「スノーデンの暴露は甚大なダメージであり、我々の工作活動を危険にさらしている」と警告を発した。

MI5のパーカー長官も、情報活動を成功させるには、どういった方法が採られているのか、敵に知られないようにしたり、分からないようにしたりすることが求められるとし、リークによって、それがある程度、明らかにされてしまった以上、今後の情報活動に影響が出ることは避けられないとの印象を示した。

ただし、イギリスの情報活動に関する実態を解明するような回答が出てこなかったことから、今回の委員会での証言について、不満に思う人たちも少なからずいた模様である。

たとえば、ロンドンに拠点を置く人権団体「Article 19」幹部のトーマス・ヒューズ(Thomas Hughes)氏は、「今日の公聴会は、イギリスの情報機関に対して、完全に独立し、有効に機能し、説明責任を果たすオーバーサイトの機構が必要であることを示した」と語った。

また、同じく人権団体の「Big Brother Watch」代表のニック・ピクルス(Nick Pickles)氏も、公聴会が開かれたことを評価しつつも、委員会での煮え切らないやりとりについて、「まだ行くべき長い道のりがある」とコメントしている。

【関連動画】
Open Evidence Session
Intelligence and Security Committee of Parliament, November 7, 2013.

BBC MI5, MI6 and GCHQ IN FULL HEARING
YouTube

【関連資料】
Uncorrected Transcript of the Evidence
Intelligence and Security Committee of Parliament, November 7, 2013.

【関連記事】
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Guardian, Novermber 7, 2013.

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Daily Telegraph, November 7, 2013.

"Spying leaks 'help terrorists and paedophiles,' says GCHQ director "
London Evening Standard, November 7, 2013.

通信傍受、法の枠内と釈明 英情報機関トップが証言
『msn産経ニュース』(2013年11月8日)

スノーデン容疑者を非難=3情報機関トップが議会証言-英
『時事ドットコム』(2013年11月8日)


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