企画記事
30年前の今日発売されたファミコン版「ドラゴンクエスト」を,当時生まれてもいない編集者がプレイ。竜王を倒す旅は驚きと戸惑いの連続だった
しかし,ただ振り返るだけでは少々味気ないので,今回は平成生まれ,つまり発売時に生まれてもいなかった筆者が,今となっては信じられないような仕様の数々に戸惑いつつプレイしたレポートとしてお届けしよう。
四角ボタンのファミコンとブラウン管テレビで30年前の環境を再現
DQIをプレイするにあたり,筆者はFC本体と,このために編集部が購入したブラウン管テレビを渡された。FC版のDQIは,Wii用ソフト「ドラゴンクエスト25周年記念 ファミコン&スーパーファミコン ドラゴンクエストI・II・III」に収録されているので,そちらを使ったほうが手っ取り早そうだが,この企画を筆者に振った編集者によると,プレイ環境まで30年前にしたいらしい。
今回使用するFCは,編集部の早苗月 ハンバーグ食べ男が家から引っ張り出してきたものなのだが,コントローラの[A][B]ボタンが四角いゴム製だったため,それを見たおじさん編集者たちからざわめきが起こった。
おそらく,多くの人が記憶しているFCのコントローラは,丸いプラスチック製のボタンがついているものだろうが,この四角いボタンは初期に製造されたFCの仕様なのだ。「四角ボタンのFCを修理に出したら,ボタンが丸くなって帰ってきた」という経験をした編集部スタッフもいたので,かなりのレアものということになる。そんなFCを所有している早苗月 ハンバーグ食べ男,恐るべし……。
さて,まずは機材を接続しなくてはならないわけだが,「RFスイッチってわかる?」と不意に言われた筆者は,「名前は聞いたことあるような」という感じで戸惑った。平成生まれと言っても,子供の頃にFCのゲームをプレイした記憶はある(DQIは未体験)のだが,接続まではやったことがない。
RFスイッチは,テレビのアンテナ入力端子とファミコン本体を接続するもの。当たり前だが,FCにはHDMIや赤白黄のRCA端子といったものはないので,画面や音声の出力はテレビ放送のように,空いているチャンネル(通常はチャンネル2)へ行う仕組みになっている。そしてこれは当時使われていたアナログテレビ向けに作られているもので,現在販売されているデジタルテレビには使えないのだ。これから中古屋などでファミコンを買って遊ぼうと考えている人は,テレビもしっかり用意してほしい。
こちらがRFスイッチ |
テレビのアンテナ入力端子に接続する |
当時を知る編集者によると,テレビ放送とゲームの両方を楽しめるようにRFスイッチを接続するのは少々面倒らしいのだが,今回はゲームだけが目的なので,それほど手間をかけずに接続できた。
久しぶりに見たブラウン管のゲーム画面はなかなか衝撃的だった。
まず,画面が全体的ににじんだような感じで,ドットグラフィックスのはずなのに,個々のドットが認識しづらい。時には歪んだり,点滅しているようにも見えるので,長時間の連続プレイは厳しそうだ。「これだから最近の若者は……」などと言われるかもしれないが,当時ブラウン管テレビでプレイしていた人も,液晶ディスプレイに慣れた今ではきっと辛いはず。
それにしても,テレビのチャンネル2にゲーム画面が映るのは,やっぱり不思議な感覚だ。
そして,これは実際にプレイを始めてから気づいたことだが,テレビとの相性のせいか,なぜか画面の左端が切れたようになっている(タイトル画面は切れずに表示されていた)。編集部内で聞き込みをしたところ,「うちもそんな感じだったな」という声があったので,割とよくあることだったのかもしれない。
ブラウン管テレビだけでなく,FCの四角いボタンも,なかなか侮れない存在だった。まず,ボタンを押し込むストロークがやたらと深い。なので連射はやりづらいし,ボタンが潰れたまま帰ってこないこともしばしば……。ボタンの素材や形状が変更されたのも,なんとなく頷ける。
平成生まれ,ゲーム開始10秒で詰む
準備が整って,DQIのプレイを開始。タイトルメニューにあるのは,「START」「CONTINUE」「MESSAGE SPEED」という3つの選択項目だ。FC版DQIにはセーブ機能がないので,王様から「ふっかつのじゅもん」というパスワードをもらい,再開するときにこれを入力する必要がある……ということぐらいは筆者も知っていた。
そこで「ふっかつのじゅもんの画面を見てみたい!」と先走った筆者は,初回なのにいきなり「CONTINUE」を選択。「20文字かー,入力するの大変だなー」と満足してメインメニューに戻ろうとしたのだが,いくら[B]ボタンを押しても前の画面に戻らない。「もどる」という項目も存在するが,これはふっかつのじゅもんの入力が1文字前に戻るだけだ。
つまり「[B]ボタンや[×]ボタンを押せば前の画面に戻る」という現代のゲーマーにとっての常識が,ここでは通用しないのだ。しょうがなくリセットすることになり,実質初のゲームオーバーを開始10秒で味わったのであった。
ところで,4Gamer編集部には当時のゲーム少年がたくさんいるので,「ふっかつのじゅもんを毎回紙に書くのが大変だったんだよなー。何回も間違えたりして……」という思い出話を何回も語られた。まぁその横で筆者はふっかつのじゅもんをスマホで撮影していたわけですが。技術の進歩って素晴らしい。
ちなみに,「ふっかつのじゅもん」はFC版「ドラゴンクエストII」(以下,DQII)にも登場するが,そちらはなんと18文字から52文字の可変式だ。20文字でも大変なのに52文字って……。セーブ機能があるってことも素晴らしい。
さて,気を取り直し「START」を選択すると,主人公の名前を入力する画面に進む。ここでも,やはりFCだなあと思わされるのが,名前が4文字しか入らないことだ。しかも,濁点と半濁点は1文字扱いになる。つまり,「よんがめ」と入れようとすると「よんか゛」になってしまうのだ。当初,本名の入力を諦めたゲーム少年,少女は多くいたのではないだろうか。DQIの説明書には
「ゆきのぶ」など4文字以内で登録できない名前のあなたは,『ゆきのん』など勇者らしい名前を考え,登録しましょう。
などと書かれていたらしい(今回説明書は手元に用意できなかった)。勇者らしいか? という疑問は置いといて,筆者は「よんがめ」を諦め,「よんかめ」という若干弱々しい名前でゲームをスタートした。
ここまで,「まぁFC版だし(笑)」などとなめきっていたが,なんとこの名前によって,主人公である勇者のステータスが変わるらしい。なにそのリセマラを先取りしたような仕様は。試しに「よんかめ」と筆者の名前「いたち」で,ステータスの初期値と,レベル3のステータスを比較してみた。
名前の通り弱々しかった「よんかめ」。圧倒的に「いたち」の方が強いことが判明した。筆者がこの事実を知ったのは,冒険がだいぶ進んだ後だったが……。
主人公はカニ歩き,会話は東西南北,階段は“手動”……
名前の入力が終わると,いきなり王様との会話イベントでゲームが始まる。しかし,筆者が真っ先に思ったのは,「誰が喋ってるんだこれ」。というのは,このゲームに登場するキャラクター全員が,ずっと正面を向いている(背面や側面のグラフィックスがない)からだ! 誰も面と向かっていないのに流れる会話に,ちょっとした違和感があったが,「このシチュエーション,この口調,王様が喋っているんだな!」と,納得するしかない。王様にずっとケツを向けるのはどうなんだ…… とツッコミを入れたくてたまらなくなるが,30年前のゲームだから仕方がない。
失礼すぎるシチュエーションのまま会話が進む光景に,若干意識を持っていかれたが,王様の話していた内容は,勇者が冒険する目的だ。
その昔,勇者ロトが神から光の玉を授かり,魔物たちを封じ込めたという。
しかし,何処ともなく現れた悪魔の化身「竜王」が,その玉を闇に閉ざした。
竜王を倒し,その手から光の玉を取り戻してくれ。
などと語られているわけだが,なんかサラッとしすぎでは……。当時を知らないプレイヤーなら,もうちょっと詳しく語ってほしいと思うところかもしれないが,詳しいストーリーは説明書に書かれていたので,これでも問題なかったらしい。
というか,説明書を読まないと,ここがアレフガルドであることも,王様がラルス16世であることも分からないのだとか。トンデモ仕様というより,昔のゲームはどれもこんな感じだったのだなと自分に言い聞かせて,筆者はどんどんFCに順応していった。
さて,王様の話が終わるとお金とアイテムをもらって,冒険が始まるのだが,アイテムは宝箱にしまってあるので,自分で取らなければならない。平成生まれ的には,宝箱の前に立って[A]ボタンを押したら中のアイテムが取れるだろうと思うわけだが,残念ながらそんな便利機能は存在しない。宝箱の上に乗り,コマンド「とる」を選択する必要があるのだ。ちなみにシリーズ定番の「しらべる」では,「たからのはこが ある!」と教えてくれるだけ。うん,見りゃ分かるわ!
ツッコミを入れたくなる仕様はほかにもたくさんある。まず,前述したようにキャラは全員正面を向いたままなので,移動は全員“カニ歩き”だ。
そして,会話をするには「はなす」コマンドを選択し,さらに話したいキャラクターがいる方向を指定しなければならない。コマンドメニューを開き,「はなす」を選択し,方向を指定するという,3回のボタン入力が必要なのだ。
さらに,ここまで来るともう驚かないが,扉を開けたり,階段を昇り降りしたりするのにも,コマンド入力が必要だ。最近のゲームでは,扉は何かボタンを押せば開き,階段は上に乗ると自動で次のエリアへ進むが,DQIでは扉を開けるのに「とびら」,階段を使用するのに「かいだん」というコマンド入力が必要になる。
スマホゲームしかやったことがないような世代だったら,最初の部屋を出るまでで疲れてしまうのではないかと思うぐらいの手間だ。
逆にいうと,やれることが恐ろしく増えているのに,ストレスを感じさせない最近のドラゴンクエストシリーズは,コマンド周りがしっかり練られているのだなと感じさせられた。
ちなみに,階段を使用するときの「ザッザッザッザッ」など,ドラクエシリーズでお馴染みとなっている効果音は,DQIから使用されているものも多い。
「やくそう」が「ぬののふく」より高い当時の物価事情に驚く
城を出ると,そこは案外見慣れた画面。グラフィックスの細かさこそ違うが,タイルをしきつめたようなフィールドは,スーパーファミコン世代のドラゴンクエストとあまり差がないようにも思える。
草原や森,山などがあり,勇者はそこを進んでいくのだが,なぜか山だけは1歩進むたびに引っかかるような感じがあり,歩きづらさが演出されているのが面白い。
そして,あまりに印象が強烈なので繰り返してしまうが,町中だろうがフィールドだろうが,勇者はカニ歩きだ。
最初の目的地は,城の近くにあるラダトームの町。ここで装備やアイテムなどを買いそろえて,冒険の準備をする。ちなみに,ラダトーム王からもらったお金は120ゴールドだ。
筆者の中では「1ゴールド=1円」というレートになっているので「缶ジュース買ったら終わりかー」とつぶやいてしまったが,考えてみれば当時の120円はもっと価値が高かっただろうし,ジュースはもっと安かったはず。だって消費税もなかったんでしょ……などと,自分が生まれてもいない時代に思いを馳せてしまった。
話を戻そう。武器屋で何を買おうかな……と思って気づいたのだが,驚いたことにDQIの勇者はゲーム開始時に何も装備していない。DQII以降のキャラクターは,かわのよろいやひのきのぼうなど,最低限の装備は持っているというのに……。なので,120ゴールドで冒険の準備を整えると,大抵のプレイヤーは金欠になるだろう。「たけざお」「ぬののふく」「かわのたて」という武器・よろい・盾の最安セットを購入すると,きっかり120ゴールドで,所持金はゼロだ。
さらに驚いたのは,冒険の必須アイテム「やくそう」を買いに行った時のことだ。その価格,なんと24ゴールド! 「ぬののふく」が20ゴールドなのに,どういうことだ! というか,もっとお金くれてもいいじゃないですか王様。
というわけで,DQIのやくそうは高級品。冒険の序盤は,ひたすらモンスターを倒しては宿に泊まる,を繰り返すことになる。ラダトームの町にある宿屋は親切価格の6ゴールドなので,やくそうを買うお金で4泊できるのだ。
武器を買い換えるときにもいろいろと驚かされた。例えば,180ゴールドで買った「どうのつるぎ」を装備した状態で,「はがねのつるぎ」を購入しようとすると,「なら,今装備しているどうのつるぎを90ゴールドで買おう」と店主に言われる。いやいや待ってくれ,半値で買い取りなの? それじゃ売れないよ……などと言おうものなら,はがねのつるぎを売ってくれない。新しい装備は入手した瞬間に装備され,それまで装備していた物は店で必ず売らなければならない,という下取り強制システムだ。
店以外で武器や防具を入手した場合は,苦労して手に入れた装備を勝手に捨てられてしまうし,「ロトのよろい」や「ロトのつるぎ」など,店で売られていないものを身につけた状態で別の装備を買おうものなら,1ゴールドで売られてしまう。つまり,装備をストレージするというシステムが一切ないのだ。DQIは断捨離も先取りしていたんだな。
こんな感じで,本作では「お金がない」と散々ぼやくことになる。ちなみに,町での勇者といえば,民家に勝手に入り込んで,タンスを物色したり,ツボを壊したりする姿を思い浮かべる人もいるだろうが,FC版のDQIにはタンスもツボも存在しないので,そんな狼藉もできない。ちょっと寂しい気もする。
1対1の殴り合いが展開される戦闘はなかなかシビア
本作はいわゆる「ランダムエンカウント」が採用されていて,フィールドを歩いていると,突然画面と音楽が切り替わって戦闘が始まるのだが,このエンカウント率が結構高い。一度戦闘が終わって2〜3歩歩いたらまた戦闘,というのはザラなので,息も絶え絶えになりながら町を目指しているときはかなり緊張する。
DQIの戦闘は,例外なくモンスターと1対1のタイマン。システムは基本的に勇者が先攻するターン制で,「ぼうぎょ」や「さくせん」といったコマンドがない,単純明快な殴り合いだ。
ただ,このFC版DQIでは結構な確率で,勇者が身構える間もなくいきなりモンスターに襲われる。交互に攻撃するこのシステムで,先制パンチはけっこう痛い。さらにはシリーズお馴染みの「会心の一撃」が外れる場合もある。そもそもエンカウント率が高いというのはモンスターに見つかってるってことだろうし,どんくさ過ぎではないか勇者よ……。
ほかにもラリホーをかけられるとほぼ確実に眠ってしまって,しかもなかなか起きなかったり,ホイミのHP回復量が10〜15ぐらいしかなく,敵の攻撃1回分にも満たない場合があったりで,いろいろと辛い……ただの愚痴です。はい。
まだまだ出てくる,平成生まれが戸惑う仕様の数々
いろいろと苦労しながらも,カニ歩きで世界を回る勇者「よんかめ」。しかし,編集部のスタッフから「全然レベル上がってないじゃん(笑)」とネタにされ始める。
違うんです,聞いてください。レベルアップに2500の経験値が要求されているのに,キメラを倒して25,メタルスライムを倒しても110ちょっとしか経験値がもらえないんですよ。ちょっと厳しくないですか? という愚痴は置いといて。
冒険を進めていくと,新たな驚きに遭遇することになった。まず,覚えた呪文の効果や消費MPが,ゲーム内には一切書かれていない。ついでに言うとアイテムを買うときにも効果が分からない。
ドラゴンクエストが人気シリーズになった今なら,ホイミは回復,ギラは攻撃と,ド定番のものは分かるわけだが,当時プレイした人たちは分からなかったのでは……? しかし,このあたりも説明書に書いてあったそうだ。
こうやって30年前のゲームをプレイしていると,オールドゲーマーに「説明書を読んでからプレイしなさい」と言う人がいるのにも納得できる。説明書はとても大事なものだったのだ。捨てるなんてとんでもない!
なお,DQIでは,ギラやラリホーなど,戦闘用の呪文をフィールドで唱えることもできてしまう。唱えると何の効果も発動しないくせに,きっちりMPが消費されてしまうので困りものだ……と,選択をミスったことを棚に上げて書いてみる。
シリーズのファンならみんな大好きな呪文「ルーラ」も,ほかのシリーズ作品とは効果が微妙に異なっている。「これで遠い町にもひとっ飛びだ!」と思ったら大間違いで,移動できるのはラダトーム城のみ。その他の町に飛ぶことはできない,帰還専用呪文なのだ。
しかし,筆者はルーラを覚える頃には「ふっかつのじゅもんを聞きに行くのがラクになるな」と思うぐらいにはDQIに調教されていた。いちいちラダトーム城に歩いて戻るのは,とても大変なのだ。
ちなみに,ホイミの上位にあたる「べホイミ」を覚えるころにはゲームが終盤にさしかかっている。前述したとおり,ホイミではHPが10〜15ほどしか回復しないので,べホイミを覚えるまではやくそう(ホイミより回復量が大きい)をモリモリ食べるベジタリアンな冒険をしなければならない。本作には,HPを回復するアイテムはやくそうのみで,その上位アイテムは存在しない。ついでに言うと,MPを回復したり,ステータスをアップさせたりする消費アイテムも一切登場しないので,こまめに回復しながら地道に戦って強くなっていくしかないのだ。
呪文と同じように戸惑わされたのが洞窟だ。ほとんどの洞窟は,突入すると真っ暗で,ほぼプレイヤーキャラクターしか見えない。足元の床ぐらいはかろうじて見えるのだが,なにせ床は全部同じタイルなので,見ただけでは進んでいるのか止まっているのか判断しづらいし,壁にぶつかってもその壁が見えない。ちなみに,壁にぶつかると効果音が鳴るので,それで行き止まりの判断は可能だ。
こんな感じなので,真っ暗なままで洞窟を進むのは自殺行為に近い。プレイヤーの周り1マス分を照らしてくれる「たいまつ」が欠かせないのだ。呪文の「レミーラ」を使えば,もっと広範囲が見えるようになるが,時間が経つとどんどん効果が弱まっていくので,残りMPが少ない時はけっこう怖い。
そんな筆者を見て「洞窟? 真っ暗な状態で通れたよ」と,どや顔で口をはさんでくる編集者の多いこと。
レミーラを使っても辛いのに,真っ暗なままでいくとか,どんだけプレイしたんだよ……と思っていたが,さすがに筆者も何度も通るダンジョンは真っ暗なままで踏破できるぐらいにはなった。これが,ラダトーム城に繰り返しふっかつのじゅもんを聞きに行った成果である。
「ゆうべは おたのしみでしたね」を見たいがために姫を救出
「ゆうべは おたのしみでしたね。」,ゲームファンなら,この台詞を一度は聞いたことがあるのではないだろうか。何を隠そう,この台詞が登場したのはDQIである!
ここまで一切紹介していなかったが,実はラダトームのローラ姫がモンスターにさらわれているのだ。
勇者の使命がどうこう以前に,筆者はなによりあの台詞が見たい…… 姫よ,今助けに参ります。
ネタバレになるのであまり詳しくは言えないが,とある場所にいるとあるモンスターを苦労の末に倒して,ローラ姫と対面。
姫と会話をすると,ラダトーム城へ連れて帰ってほしいと言われる。ここで選択肢の「はい」「いいえ」が出るが,いいえを押すと,「そんな,ひどい……」と言われてしまい,会話が無限ループする。
つまり,選択肢は出ているものの,実質は「はい」を選ぶしかない。シリーズの名物とも言える会話の無限ループは,DQIから既に存在していたのだ。
無限ループを数回楽しんだ後,はいを選ぶと,なんと勇者のグラフィックスが,ローラ姫をお姫様抱っこしている姿に変わったではないか。筆者,若干テンションが上がる。
もちろん,この後は姫の願いどおり,ラダトーム城に戻らなければならないわけだが……そりゃもちろん。町の宿に寄りますよ。この状態で,宿屋に泊まると,店主の台詞が「ゆうべは おたのしみでしたね。」に変化するのだ。
念願を果たし,もうこれで終わりでもいいんじゃないかな……などと思いながらも,ちゃんとローラ姫をラダトーム城へ送り届ける。すると,「よんかめさまは ローラのこと を おもってくださいますか?」と言われ,既視感ありまくりな「はい」と「いいえ」の選択肢が登場。ええ,もちろん「いいえ」は無限ループです。
ここでも無限ループを数回楽しんで,「はい」を押すと,「うれしゅうございます。ぽっ」という台詞が返ってきた。命の恩人で,しかもイケメン勇者(筆者の想像)になら猛烈アタックをするのは当たり前か。
「もし わしの みかたになれば せかいの はんぶんを やろう」
そんなこんなで,竜王が住む城までたどりついた勇者よんかめ。すぐにでも竜王を倒したいが,いかんせんこのゲームの戦闘は“THE 殴り合い”なので,レベルをバリバリ上げて,十分に強くなってから戦いを挑みたい。
ということで,竜王の目の前まで来ていながら,その周辺をうろうろして,モンスターをばったばったと倒し続ける。一心不乱に竜王の前をカニ歩きする様は,「何やってんだこれ」と周りのスタッフに思われていたらしいが,これこそDQIの遊び方であると悟った平成生まれの筆者だった。
そして,1点面白いことに気が付いた筆者。実は,FC版DQIでレベルアップに必要な経験値は,レベル16以降ずっと4000ポイントなのだ。つまり,同じ場所で武者修行をしていると,勇者が強くなるにしたがって戦闘時間が短くなっていき,レベルアップのペースが速くなる。
「あれ!? もうレベル25になってる!」と,半笑いで言われるぐらいの急成長を遂げて,ようやく竜王に挑むことにした。ちなみに,FC版のレベル上限は30だ。
竜王に話しかけると,「ドラゴンクエストビルダーズ」(PS4 / PS3 / PS Vita)でも有名な「もし わしの みかたになれば せかいの はんぶんを やろう」というセリフを言われ,「はい」「いいえ」の回答を求められる。
ここで,「はい」を押すと,ブロックで作られたアレフガルドに飛ばされるわけもなく,なんと竜王がふっかつのじゅもんを教えてくれる。「まあ,親切」なんて思ったのもつかの間,「おまえの たびは おわった。」と言われ画面が赤くなり,ゲームオーバー。
このゲームオーバーの画面が,平成生まれにとってはとても怖い。なぜなら,電源を切るまでこのまま動かないからだ。ボタンを押して反応がないとなぜか怖くなる。最近のゲームしか知らない人ならきっとあるある…… だと思いたい。
そして,気になるふっかつのじゅもんで再開すると,レベル1,装備やどうぐなし,所持金0という全く使い物にならないデータになっている。これがもし,オートセーブで上書きなんかされていたらと思うとぞっとする。ふっかつのじゅもんだからできた,遊び心だろう。
さて,再度竜王の問いに対する回答まで話を戻して,今度はちゃんと勇者らしく「いいえ」を選ぶと,すぐさま竜王との戦闘に。
魔法使いのような竜王の姿は,今やさまざまなシリーズ作品や,そのCMで見かける。筆者の中にある竜王のイメージも完全に出来上がっていて,ドット絵の竜王を見たときはちょっと違和感があったのだが,これはこれでとても可愛い。
散々武者修行した甲斐があり,竜王は2回の攻撃で倒せてしまった……と思ったら,竜王の姿が巨大なドラゴンとなって,正真正銘のラストバトルが始まった。
さすがに真の姿を現しただけあって,竜王の攻撃はどれも痛く,こちらの攻撃はなかなかダメージが与えられない。攻撃とベホイミをほぼ交互に繰り返すような持久戦の末,やっと竜王を倒せた。
ラダトーム城に凱旋し,ゲーム本編が終わって,いよいよスタッフロールだ。何分もかかるぐらい長いんだろうなと身構えていたのだが,約1分,15人のスタッフの名前が流れて終了。そのあまりの短さと,たったこれだけのスタッフでゲームが作られていたことに,最後の最後でまた驚かされた。
筆者はゲームを始めたとき,会話に東西南北のコマンドがいることや,ゲーム再開にはふっかつのじゅもんの入力が必要なことなどから「これは大変そうだな……」と思っていた。実際,ここまで書いてきたように驚きと戸惑いの連続だったのだが,それでもゲームに引き込まれてしまった。
特に面白かったのは戦闘だ。頼れるのは自分だけの「やるかやられるか」なので,ひとつのミスが命取りになる場合も多い。「次の攻撃で倒せるはず……でも大事をとって回復呪文を使っておくべきか?」などと,じっくり考えて二手三手先を読む緊張感は,パーティメンバーによって“回復しつつ攻撃”ができる最近のDQシリーズではなかなか味わえないだろう。ラリホーにかかったまま起きることなく倒されるなど,理不尽! と感じることもあったが,それはそれで新鮮な体験ではあった。
エンカウント率が高かったり,ルーラが帰還専用だったりと,“プレイヤーに楽をさせてくれない”ところには,30年という時間の流れを感じたが,その一方で鳥山 明氏が描いたモンスターや,すぎやまこういち氏の音楽,レベルアップ時などの効果音が生み出す作品の雰囲気は「変わっていないなぁ」とも思わされて,なかなか不思議な体験だった。
「30周年だし,何かシリーズ作品をやってみるか!」と思っている人は,ちょっと準備に手間がかかるかもしれないが,原点のDQIをプレイして,シリーズの進化ぶりを確かめてほしい。
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