女性アイドル刺傷 「絶望の110番通報」悔やまれるミス
フジテレビ系(FNN) 5月26日(木)0時57分配信
タレント活動をしていた大学生・冨田真由さん(20)が、男に刺されて重体になっている事件で、事件を未然に防ぐ、もしくは、せめて被害を減らすチャンスはなかったのか、現場でその答えを探した。緑がかったジャケットに、黒っぽいズボンに白い靴、小さな斜め掛けのショルダーバッグを背負った長身の男。
これは、21日午前9時17分、京都市内の住宅街の防犯カメラがとらえた映像で、男は、岩埼友宏容疑者(27)とみられている。
この数時間後に起こった事件を、未然に防ぐことはできなかったのか。
冨田真由さん、岩埼容疑者、そして警察。
それぞれの動きを検証した。
21日午後2時半ごろ、岩埼容疑者は、東京・小金井市の武蔵小金井駅に到着。
それを知らない冨田さんは、ほぼ同時刻に、ブログを更新していた。
午後2時32分「夜ライブだから、もう帰るよ」。
朝から新宿に出かけていたという冨田さんは、夜のライブに向け、地元に戻ろうとしていた。
午後5時00分「まだかなまだかな~」。
午後5時、冨田さんを待ち伏せていた岩埼容疑者は、事件前最後となるブログの更新をした。
しかし警察は、この危険な状況を察知することはできなかった。
冨田さんは、別のオーディションを受けるため、予定より1時間ほど遅れ、午後5時前に、武蔵小金井駅に到着したとみられている。
2人はここで、顔をあわせることになる。
岩埼容疑者は、「冨田さんに声をかけたが、無視されたので追いかけた」と供述。
岩埼容疑者に声をかけられた冨田さん。
その脳裏には、岩埼容疑者の数々の書き込みがよぎったのかもしれない。
2人が顔をあわせた周辺には、ロータリーを挟んだ反対側に交番がある。
しかし冨田さんは、その存在に気づかなかったのか、それとも切迫した危険を感じなかったのか、交番に駆け込むこともなく、ライブ会場に向かった。
岩埼容疑者が待ち伏せていた場所からライブ会場までは、およそ400メートルと、歩いて3分ほどの距離。
駅前とは打って変わって、人通りの少ない道。
岩埼容疑者の影を背後に感じながら歩く冨田さんの心境は、どのようなものだったのか。
やがて到着したライブ会場。
しかし、そこには守ってくれる警察官はいなかった。
事件2日前、ライブに出演することを知った武蔵野署からの助言は、「岩埼容疑者がライブ会場に来るようであれば、110番するように」というものだけだった。
最後の頼みの綱の、110番。
午後5時5分12秒、冨田さんの「助けて」との通報は、警視庁の通信指令本部につながった。
その情報は、直ちにパトカーや警察官の携帯端末にも、同時に表示された。
通報から39秒後、通信指令本部から指令が出された。
しかし、その指令を受けたのは、事件現場近くの小金井署ではなく、冨田さんの自宅を管轄する、武蔵野署だった。
警察官は、ライブ会場ではなく、冨田さんの自宅に向かってしまった。
目撃者は「すれ違った人が、2人がカップルだと思っていたらしいんですよ。こういうふうな感じで、こう、ぶすぶす刺していた」と話した。
警察官が武蔵野市の自宅に向かう間、岩埼容疑者にナイフで襲われた冨田さんは、一刻も早い助けを待っていたはず。
目撃者からの通報を受け、警察官が現場に到着したのは、午後5時12分14秒。
冨田さんが自分で110番通報をしてから、7分2秒後だった。
ライブハウスのオーナーは「とにかく黙って、突っ立っていました。無表情というか、青白い顔をして。(血が)シャツについていました。手も、結構、血だらけになっていましたね」と話した。
岩埼容疑者は、駆けつけた警察官に現行犯逮捕され、冨田さんは意識不明の重体で、緊急搬送された。
110番通報後、冨田さんの携帯電話は10分45秒の間、通信指令本部とつながったままだった。
警察によると、その間は、会話になるような状況ではなかったという。
一方、誤った指令を受けた武蔵野署の警察官が、冨田さんの自宅に到着したのは、目撃者によると、午後5時半ごろという。
冨田さんの近所の人は「パトカーがあそこにいて、5人の警察官が、イヤホンでコンタクトを取ってましたから、まあ、何かあったなということは気がついたけど、30分以上、1時間近くいましたよ」と話した。
警視庁によると、今回、110番を受けた担当者が、冨田さんの携帯電話の位置情報を確認する作業を怠ったため、警察官を冨田さんの自宅に派遣させてしまったという。
警視庁の即時対応システムに、冨田さんの自宅を登録していたことが、裏目に出てしまった。
また、当日、ライブがあるということを、通信指令本部が把握していなかったという、連携の問題点も浮き彫りになっている。
警視庁は、今回のミスを受け、110番通報者の位置情報を自動的に確認できるシステムを、6月に導入する方針。
最終更新:5月26日(木)0時57分