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印南敦史印南敦史  - ,,,,  06:30 AM

海外でのビジネスにおいて重要な「4つの距離」とは?

海外でのビジネスにおいて重要な「4つの距離」とは?

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「EMBA」(エグゼクティブMBA)といえば、現役のビジネスエリートが通う教育機関として有名。『世界の最も野心的なビジネスエリートがしている 一流の頭脳の磨き方』(山崎裕二、岡田美紀子著、ダイヤモンド社)のふたりの著者は、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)とシンガポール国立大学(NUS)が共同で行っている「UCLA-NUS」のEMBAの同窓生なのだそうです。

クラスメイトも、グローバル企業のゼネラルマネージャーやCFO(最高財務責任者)クラスから、経営者や投資家、政府関係者、医学博士まで多種多様。そんななかで著者は、彼らが「学びたい」と考えているテーマにはいくつかの共通項があることに気づいたのだそうです。

財務(ファイナンス)や会計(アカウンティング)、統計学等の基礎知識も必須だが、とくに彼らが求めているのは、ざっくりと、「リーダーシップ」「ネゴシエーション」「テクノロジー・マネジメント」「アントレプレナーシップ」「マーケティング」「グローバルビジネス」(とくにアジアビジネス)の6つに大別できる。(「はじめに」より)

そこで本書では、これらについての「知力」を磨くための術を明らかにしているわけです。きょうはそのなかから、「グローバルビジネス」を扱った第5章「『世界視点』で考える グローバルに成功できる知力をつかむ」に注目してみたいと思います。



世界に立ちはだかる「壁」を知る


グローバルにビジネスを展開する際、どのような問題に直面し、それをどのように解決していくべきなのでしょうか? 当然ながらこれも、野心的なビジネスエリートが意識的に学んでいるテーマなのだといいます。グローバルビジネスは簡単に実地の経験が積めるものでもなく、失敗したら大きな痛手を負うことにもなります。だからこそ、多くの前提知識や理論、ケースを叩き込んでおくべきだというという考え方です。

ただし、国境を越えたビジネスは決して楽ではありません。まして欧米の企業がアジアマーケットに出て行くとなると、想像以上の障害が立ちはだかることになるはずです。具体的に、海外でビジネスをする際には、どのような問題と直面することになるのでしょうか?

このことに関してEMBAでは、グローバリゼーションの権威であるパンカジュ・ゲマワットのいう「4つの距離」について叩き込まれるのだそうです。すなわち「地理的な距離」「経済的な距離」「政治的な距離」「文化的な距離」の4つ。

まずは「地理的な距離」。物理的に距離があれば、それだけ輸送コストがかかり、時間のロスも大きくなります。「大きいもの」「重いもの」「親切なもの」を運ぶのは困難になり、ビジネスチャンスも縮小するわけです。また国境が隣接していない国のやりとりにおいては、輸送ルートの確保が困難だったり、余計な時間やコストがかかることもあるということです。

「経済的な距離」とは、端的にいえば「経済レベル」「生活レベル」の差。たしかに、これから発展していく国や地域のマーケットは魅力的に映るものです。しかし消費者の所得レベルが違っていたとすれば、消費行動も違ってきて当然。そして、そのことを甘く見てはいけないと著者は警鐘を鳴らします。なぜなら単に「モノを買うか、買わないか」というだけでなく、「ニーズのレベル」が完全に変わってしまうから。

簡単な例で言えば、先進国のスーパーやドラッグストアへ行けば、さまざまな種類の洗濯洗剤が並び、好きな機能、香り等を選べるだろう。しかし、発展途上の国で、そんなバリエーションや商品ラインナップは何の意味も持たない。
あるいは、家電や自動車などにおいても、求められる機能、クオリティは経済レベルによってまったく異なる。長い期間と多大なコストをかけて開発した新機能など、そもそも必要ないかもしれないのだ。(187ページより)

つまり、そうした距離や格差がある国に対して柔軟な対応をしてでも、果たして確実な利益が得られるのかということ。ビジネス的な観点においては、そこがシビアに検証しなければならないポイントになってくるということです。

しかしその一方、経済的な距離には「人件費が安い」「天然資源が安い」などの圧倒的なメリットもあるもの。そこで企業としては「どのリスクを背負い、どのメリットを取りに行くのか」を正確に試算し、検証しなければならないということです。(184ページより)

とはいえ、地理的側面や経済的側面を考えるのは大前提。彼らがより意識的に学んでいるのは、政治的、文化的な側面の方だといいます。この理解なくして、その国でビジネスをするのは不可能なのだとか。では野心的なビジネスエリートは、特にどんなことを学んでいるのでしょうか?


ぶつからずに成功する方法を学ぶ


各国の政治のスタイルや文化が障壁となって、グローバルなビジネス展開がうまくいかない。そんなケースはいくらでもあるもの。だから優秀なビジネスエリートは、ビジネスを考えている相手の国の実態について、数多くのバリエーションを頭に入れているのだといいます。

国民の意識、文化、風習の問題である以上、まともに闘ってもほぼ勝ち目はないもの。相手の文化や事情を理解し、そのフィールドでベストな立ち回りをするしかないわけです。それどころか、国のなかでも文化や風習は違い、企業の成熟度もいろいろ。そこが、グローバルビジネスの難しさだということです。

そもそもビジネスとは、家族、親族の物々交換からはじまり、その枠がだんだん広がっていくようなもの。野菜がたくさんとれたから親戚に配る。それでも余るから、近所の人とも物々交換をしたりする。そうやって身内の内部で話をしているところに「よそもの」が入っていく以上は、誰かの紹介が不可欠。「○○さんの紹介で来ました」というお墨つきがなければ、信頼してビジネスを進めることはできないからです。

ましてや信頼、紹介もタダではないかもしれません。紹介してくれる人にお礼をするのは当然で、しかしこれは賄賂と同じ。商習慣、文化としての成熟度が低い社会ほど、こうした「身内のビジネス」という発想やシステムが残っていて、そこに入っていくための「手続き」(すなわち賄賂)が必要になってくるというのです。

そしてその後、文化的、社会的に成熟してくると「身内ビジネス」の枠組みが
だんだんと薄れていき、よりシステマティックな契約社会へと変わっていくということ。経済的、文化的な価値観が異なる国との間でグローバルなビジネスを行うためには、そこまで落とし込んだ認識が必要なのです。

とかく欧米人は「アジアは腐敗している」という言い方をするが、それはある意味では文化的環境・ビジネス環境のステージの違いと言える。ビジネスが拡大し、スピードが速くなればなるほど、(賄賂が効くような)個々人に紐付いたビジネスはチャンスを失っていく。アジアはいま、ビジネスのステージが次の段階に移りつつあるところなのだ。(197ページより)

だとしたら見方を変えれば、「まだビジネスのステージが違うからこそ、未開のマーケティングがいまなお残り、先進諸国の企業にとって魅力的なビジネスチャンスが広がっている」ということにもなるはず。

とはいっても、グローバルに事業を展開する企業であるほど、社内共通のルールとして「モラル」「インテグリティ(誠実さ)」が徹底しているのもまた事実。そればかりか、贈収賄についてはアメリカのFCPA(海外腐敗行為防止法)をはじめとして、禁止規定が厳しい国も少なくはありません。

商習慣はもちろんのこと、現地の法律も見極め、さらには自社のルールをクリアしながらどうやって実際のビジネスを展開していくべきなのか。世界を舞台にするビジネスエリートは、高い結果を出すため、常にそうした矛盾する厳しい決断に直面しているということです。(189ページより)




ビジネスエリートたちの視点に基づいているだけに、書かれていることのひとつひとつに野心的なパワーを感じることができます。そしてそれらは、多くのビジネスパーソンにとって有効なメソッドとしても機能するはず。思考をブラッシュアップさせたい人にとっては、特に必読の一冊です。


(印南敦史)

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