バラク・オバマ大統領の核兵器に関するレガシー(遺産)以上に、同大統領の矛盾をうまく表現するものはない。オバマ氏は27日、米国が原爆を使う最初(で最後)の国になってから70年後に、広島を訪問する初の米国大統領になる。
オバマ氏は広島への原爆投下について謝罪するには至らないものの、広島訪問は象徴に富んだものになる。日本の安倍晋三首相が前例を破り、1941年日本が対米攻撃した現場である真珠湾を訪問する政治的な余地を生み出す可能性さえある。
広島訪問は、オバマ氏が本領を発揮する舞台となる。キューバやベトナム、イランの国民が証言できるように、過去の敵意を葬って和解するために、オバマ氏以上に大きなリスクを取った米国大統領はいない。
だが、オバマ氏ほど非現実的に高い希望を抱かせた米国大統領もほとんどいない。7年前、オバマ氏はプラハでの演説で「核兵器のない世界」のために努力することを約束した。退任の準備を進める中、核アナリストの言葉によれば彼は「第2の核時代」を後世に残すことになる。オバマ氏はプラハで「核兵器を使った唯一の核保有国として、米国には行動する道義的責任がある」と語った。
■1兆ドルの核兵器更新プログラム
それ以来、オバマ氏が取った唯一最大の行動は、史上最大の核兵器近代化事業に乗り出すことだった。1兆ドルの資金と30年の歳月をかけて米国の核戦力を更新する、米国防総省が台本を書いたプログラムのことだ。米国の核関連の官僚機構によって既成事実として提示されたと見る向きが多いオバマ氏の決断は、大統領のほかの決断をすべて足したものよりも永続する可能性が高い。
オバマ氏はたびたび、言行の不一致を批判されてきた。特に顕著だったのがイスラム主義テロリズムとの戦いで、オバマ氏は「対テロ戦争」という言葉を禁じながら、ドローン戦争を激化させた。
だが、核に関する約束と現実の落差はそれ以上に著しい。オバマ氏は、ロシアとの核兵器削減条約に対する共和党の支持と引き換えに、1兆ドルの兵器刷新に同意した。