e-Sportsがいま世界で盛り上がっている
e-Sportsこと、エレクトロニック・スポーツは競技性の高いコンピューターゲームの対人対戦をスポーツとしてとらえる呼び方である。League of Legends(以下、LOL)などのmoba系ゲーム、CoDやCSGOなどのFPS、ストリートファイターなどの格闘ゲームなどがこれに分類される。
mobaとは:マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ(英:Multiplayer online battle arena, 略称 MOBA)とはコンピューターゲームにおけるRTSのサブジャンルで、プレイヤーが2つのチームに分かれ、それぞれのプレイヤーがRTSゲームの要領でキャラクターを操作し、味方プレイヤーと協力しながら敵チームの本拠地を破壊して勝利を目指すスタイルのゲームのこと。RTSは戦略系要素を重点に置いたメインのゲームを指す。
【画像出展:http://factmyth.com/factoids/moba-means-multiplayer-online-battle-arena/】
FPSとは:FPSとは First Person Shooter の略で、一般的には戦闘を題材にし、その戦闘に参加する人物自身の視点に立って進行させるコンピューターゲームを総称するものである。【画像出典:http://hutongame.com/archives/1038246093.html】
今、世界でe-Sportsの大会が盛んに行われている。LOL World Championship 2015の大会賞金総額は2億5千万円。世界大会であるWCSの盛り上がりは知っての通りである。
格闘ゲームの世界大会Evolution(以下、EVO)は毎年お祭りである。世界でe-Sportsの波が来ている。
しかし、それに比べ日本ではいまいちe-Sportsが盛り上げっていない。日本人プロゲーマーは日本で大きな大会があまりないので、日本ではなく海外の大会を目指さざるを得ない状況にある。格闘ゲームの祭典、「闘劇」は終了。LOLの賞金制大会は日本でほとんど開かれていない。FPSの場合もほとんどが韓国やアメリカでの大会で日本ではまったく開かれないか、世界に比べ著しく賞金が低いかである。
なぜ、日本ではe-Sportsが盛り上がらないのだろうか。
そこでプロゲーマーではないが、TCGのMTG(マジックザギャザリング)のGP(グランプリ、賞金制大会)入賞等、の実績をもち、東京大学卒業後大学院で現代文化学を研究する立花氏に話を聞いてみた。立花氏はMTGに加え数多くのゲームに触れている。立花氏となぜe-Sportsは日本で流行らないか意見をぶつけてみた。
まずは、日本でe-Sportsが流行しない理由でよく言われているものについて意見を伺おうと思う。
①法律的に賞金制大会が開きにくい
日本では法律的に賞金制大会が開きにくいことが一因だといわれる。風営法、賭博法などに縛られているので参加者から参加費をとって、その参加費を原資に賞金にするような大会は法律違反になってしまう。
日本で賞金制大会を開くなら、賞金はあくまで大会運営者ではなくスポンサーから出ているような体にしないといけない。
その影響であまり大会が行えず、e-Sportsが流行らないという意見がある。この問題を彼にぶつけてみた。
─ 日本の法律的に賞金制大会が開きにくいという意見が多くありますが、どのように思いますか?
たとえば法律的な問題がクリアになったとしましょう。自由に大会が開くことができます。さあ、現状でどれだけの大規模賞金大会が開かれますでしょうか?多いと思いますか?
私はそう思いません。
毎週のようにLOLの大きな賞金制大会が開かれるでしょうか?スポンサーがつくでしょうか?
答えはNOです。多少は増えるでしょうがそれほどじゃないと思いますね。
それに、今でも賞金制の大会を開こうと思えば開けるのではないでしょうか。私の専門としているMTGなんて、日本で行われるGP(グランプリ)という大会は優勝賞金1万ドルですとそれなりの金額です。主催者は煩わしさがありますが開けないことはないです。でも、LOLの賞金制大会って開かれているでしょうか?せいぜい、優勝賞金10万円の大会くらいのものです。
もちろん法律が緩和されることによりいまよりは少し大会が多くなるでしょう。そうすると、
大会が多くなる→プレイヤーが増える→人気が集まる→スポンサーがつく→さらなる大会が開かれる
このようなスパイラルにも期待できるかもしれませんね。
しかしこれは希望的観測にすぎませんしどれほど効果があるかわかりません。少なくとも現状では法律のせいで簡単に賞金制大会を開けないことはe-Sportsが盛り上がらない一因であって、主因じゃないのではないのだと思います。
② 個人用PC普及率が低いという問題
日本はアメリカや韓国に比べて個人用PCの普及率が高くない。家族共用のPCがある家庭は多いが、個人が使えるPCは少し普及率がおちる。もっとも、普及率というよりはPCを使いこなせる人間の割合の問題なのかもしれない。韓国ではPCは一人一台あたりまえ。PC文化が成熟している。しかし現在の日本はスマートフォン進化のせいでパソコンが必要ないという人も少なくない。現に、スマートフォンのゲームはかなりの流行をみせている。
これも彼にぶつけてみた。しかし回答は意外な答えだった。
─ PC普及率が問題して、e-Sportsが日本では流行らないという見方もありますがどのように考えますか?
いまPCを使わない人達すべてにPCを与えたとしてe-Sportsが流行るでしょうか?いまPCを使わない層というのはe-Sportsに興味がない層のように思います。スマホでできるゲームが流行していますが、スマホゲーム層というのはPC持っていてもスマホでゲームするんですよ。
PC普及率はそれほど関係ないとおもいます。もっとも韓国ほどのPC社会になればまた違うのかもしれませんけどね。
③ 日本のプロチームが世界に比べて弱いから
現状日本チームは多くのe-sprotsで強いとは言えない。LOLに関しても日本サーバー自体のレベルも他国に比べた場合、決して高いとは言えないであろう。
格闘ゲームは弱いとは言えないが以前ほど優勝できない。この現状がe-Sportsが盛り上がらない理由になっているのではないか。
─ 日本のプロチームが世界に比べて弱いのが影響して、e-Sportsが流行らないという意見がありますがどのように考えますか?
たしかに国際競争力が低下している気がします。
でも、強ければ流行るというものでもないですよ。格闘ゲームなんて日本最強の時期ありました。しかし、今のe-Sportsよりも盛り上がっていたとは言い難いです。むしろ盛り上がってないから弱いのではないでしょうか。競技人口が少ないから弱いのです。弱いから少ないというのは違うように思えます。人口が増えれば強いプレイヤーもでてきますよ。
LOLの人口比率を見てみてください。韓国が2,445,522人、ヨーロッパウエストが2,119,012人に対して日本は50,525人。勝てるわけないですね。
そもそもe-Sportsの種目になっているゲームはいろいろありますが、日本代表チームが強い順に流行していないでしょう?
【画像出典:http://yowakutemokatemasu.hatenablog.com/entry/lol-dq】
画像clickで引用元にJump
─ ではずばり、なぜ日本ではe-sprotsが流行しないと思いますか?
大きな要因として3つあると思います。まず一つ目、
”そもそも日本人はそれほど競技が好きでない”
今、流行しているスポーツも本当にその競技が好きなのと疑問になるもの多くないですか?
W杯のときにだけ異常に盛り上がるサッカー。イケメンを追いかけるフィギュアスケート。オリンピック特集なんかテレビで見ますとだいたい美人アスリートとか○○王子がどうしたとか。冬季オリンピックのときにカーリング娘とかいって盛り上がりましたが、本気でカーリングを競技として楽しんでいた人ってどれくらいいるんでしょうね。競技じゃなくて競技をしている人の容姿とかその人の背景を見ている方が多いですよね。
観戦者だけでなくプレイヤーとしてもそうではないでしょうか。競争を避ける傾向にあると思います。パズドラ、グラブル、白猫。スマホゲームが流行しています。アメリカではNintendo64のころからドラクエやFFよりゴールデンアイのほうが売れてたじゃないですか。競技競争をそれほど好きじゃないんですよ日本人は。だから競技性の高いe-sPortsが流行らないと思うんですよ。
【画像出展:http://appmedia.jp/pazudora/13802】
2個目は
“ゲームは遊びという刷り込み”
ゲームに対しての地位が低すぎるんですよね、日本は。先日、プロゲーマーを目指すための専門学校が話題になったじゃないですか。でもインターネットを見回してみると、とにかくネガティブな意見が多いですよね。必要以上に叩かれていいる感じがします?
そもそも、プロゲーマー専門学校というのはゲームを本気でプレイしたい人しか行かないはずです。そうでない人にはあってもなくても影響ないのではないでしょうか。でも、そういう影響のない人までこの学校のことを叩いています。必要以上にやり玉にがっていますよね。『馬鹿じゃないのか?』『本気でプロゲーマーを目指すとかいってんのか?勉強しろよ』『ニート予備軍』等々、ネガティブ意見が多くないですか?
子どもがゲームのプロになりますっていって喜ぶ親御さんってどれくらいいるんでしょうね。
要するに、ゲームの地位、ゲームプレイヤーの地位が著しく低いんですよね。なにか犯罪が起きたときでもゲームのせい…こんなんじゃプロゲーマーを安心して目指せないですよ。スポンサーも集まりにくいです。
“e-Sportsのスポンサーになるって名誉なこと”って思われる社会にならないと流行しないです。
【画像出典:http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1502/17/news146.html】
最後の理由は
私はこれがもっとも大きなウエイトを占めている理由だと思っているんですけど、それは
“日本が流行、文化を作りだす世代が若い10代後半~20代後半までの若い女性に偏っている”
という要因です。
若い女性の間で流行しているものが日本中で流行するんです。若い女性の意見がトレンドだとされ、テレビ番組やテレビCMなども若い女性向けのものばかりです。
サラリーマンもそれなりには影響力があるんですけど、それでも若い女性にはかなわないです。そして若い女性、サラリーマン以外の人達は文化の流行に影響を及ぼすことができないのです。だからこの人達に流行しないものは広まらないです。一般人=若い女性でありサラリーマンなのです。たとえば、”LOLって一般の人の知名度低いよね”といったとき、それを証明するためにどういう手段をとります?
みなさんの多くは頭の中で渋谷や新橋にいって”LOLって知ってますか?”とアンケートを取ればいいと考えたのではないでしょうか。私もそう考えます。でもこの考え方って渋谷にいる若い女性や、新橋にいるサラリーマンこそが一般の人の代名詞だと思っているということじゃないでしょうか?我々のようなe-Sportsを推し進める人たちですら一般人として頭に思い浮かべるのがそのような人達なのです。
とにかく、この層に流行らないと盛り上がりません。スマホゲームは流行するんです。パズドラは大ヒットするんです。ゲーム好きな層だけでなくこの層にまで人気なのですから。
右へ倣えの国民性ですから流行したら一気に人が群がるのです。
問題は、こういう流行の文化に影響与える層にを驚くほどe-Sports受け入れられていないことです。流行を作り出す層とe-Sports層が全く違うのです。e-Sports層の影響力が低いのです。だから盛り上がらないのです。スポンサーもゲーム関連企業しかつかないのです。お金も集まらないし盛り上がりに欠ける。そういうことなのです。
【画像出典:http://www.officiallyjd.com/archives/406035/20141119_himeki_43/】
─ なるほど。わかりました。では、これから日本でe-Sportsが盛り上がるためにはどうしたらいいと思いますか?
簡単には難しいでしょう。日本人の競技に対する姿勢は簡単には変わらないですし、若い女性が文化を創り出す傾向もすぐに変わるとはおもえないです。しかし劇的な変化は無理でも小さいことを積み重ねることによっていまより人気を出すことができます。まずはプロプレイヤー。これからは人間性や容姿も求められてくるんではないでしょうか。全員がそういう要素が必要というわけではありませんが、若い女性やサラリーマンを引き付ける容姿をもった人が数人いれば注目度が上がると思います。とはいえ、e-Sports業界やe-Sportsプレイヤーがそういった流行のしかたを好むとは思えませんが。
あとは、ゲームの地位をあげなければなりません。ゲームで食べていけるプロがいるということをもっと世間に知らせていくことも重要です。
─ 他にいまのe-Sports業界に言いたいことはありますか?
1個だけいいですか?ゲームを作る側も観戦だけする人のことを考えてゲームを作るべきだと思います。流行するには見る専門の人の人気だって重要になってくるのではないでしょうか。いまは観戦して面白いかどうかってゲームを作るうえであまり考慮に入れられてない気がします。
例えば、ストリートファイターっていまVが主流じゃないですか。去年まではⅣだったんですよ。ウルⅣ。でもⅤに合わせてトップダウンでVにプレイヤーが以降したんです。Ⅳの大会は今後やりません、Ⅴ中心で行くんでVに移ってくださいというような公式のメッセージが感じられました。で、Ⅴなんですけど多くの格闘ゲームからプレイヤーが集まっています。ゲームとして奥深いゲームになっています。必殺技を出すことにリスクあり、ヒット確認などの技術介入も重要になっています。読みあい、差し合いなど熟練プレイヤーにとってはとてもいい出来のゲームに仕上がっているような気がします(もっとも、ネット対戦環境や実装されていないモードなど、その他の面で不安は大きいが…)。しかし、見る側にとってはどうでしょう。
個人的な感想になるかもしれませんが、見ている側…とくにこのゲームはプレイしないが見るのは好きという人にとって、観戦の楽しさはウルⅣのときのほうが上だったように感じます。難しい目押しのコンボ、派手な必殺技の応酬等々、ストⅣのほうが華やかでした。深い読みあいや、深い地上戦はプレイする側にとっては至高でも、上級プレイヤーでない観戦勢にとっては面白さが伝わりにくいのではないかと思います。
LOLについても観戦勢に配慮したゲームだとは言い難いと感じます。画面のごちゃごちゃ感や、キルシーン以外でのPlayに対する上手下手などがわかりにくい。
流行させるには”ゲームをしていないけど観戦する”
このような層への配慮、そういう点もゲームを作る側、配信していく側が力を入れられればいいのかもしれませんね。
─ ありがとうございました!!!
この記事へのコメントはありません。