(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年5月20日付)

EUをヒトラーに例えた前ロンドン市長「一線越えた」EU議長が批判

英イングランド・マンチェスターで、同国のEU離脱を推進する運動の集会で演説するロンドンのボリス・ジョンソン市長(当時、2016年4月15日撮影、資料写真)。(c)AFP/OLI SCARFF〔AFPBB News

 欧州連合(EU)離脱が英国にもたらす経済的結果は、分布線上の「悪い」から「非常に、非常に悪い」までのどこかに行き着くという国際通貨基金(IMF)の警告に意外性は何もなかった。EUはアドルフ・ヒトラーの覇権的野望を共有していると批判した英保守党のブレグジット(英国のEU離脱)支持者、ボリス・ジョンソン氏の計画的ヒステリーにも驚きはなかった。

 先進的な民主主義国における政治対話は、どれほど明白な欠点があろうとも真実の枠組みにこだわる疲れ果てたエスタブリッシュメント(支配階級)と、幻滅した市民の不安と怒りにつけ込もうとする自称反乱者との争いになった。

 英国の国民投票の議論も例外ではないことがはっきりしてきた。EU離脱陣営の多くの主張は、明々白々な虚偽であることが示された。特に顕著なのが、EU予算に対する英国の支払いの規模に関する離脱派の中心的主張だ。離脱派は不都合な事実など、ものともしないのだ。

 親EU派陣営は、選挙活動の経済的議論に楽々と勝った。国内外の多くの独立系機関がEUから離脱したら英国は今より貧しくなると宣言しており、IMFはその最新事例にすぎない。ブレグジットは投資、雇用、生活水準を直撃する。

 離脱陣営が示した反応は、英国の有権者をだまそうとする巨大な国際的陰謀があると主張することだった。米大統領選の予備選でのドナルド・トランプ氏の戦術の基準に照らしても、これは血迷った冷笑主義だ。

 世界の政治、安全保障における英国の国益を追求する能力に関する公平な評価も、経済的な評価と似たところがある。「アングロスフィア(英語圏諸国)」のほうが英国の影響力を促進できるというEU懐疑派の妄想は、同盟国の見解によって打ち砕かれた。