主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)が、きょう始まる。話し合うべきテーマは、世界経済への対応など直近の問題だけにとどまらない。

 世界にはびこる飢餓や貧困を克服し、国や地域を問わず人間が平穏に暮らせる地球をどう築き、将来世代に引き継ぐか。それが究極の問いだろう。

 2030年までに貧困に終止符を打ち、持続可能な未来を求める――。国連がそんなゴールを掲げたのが「持続可能な開発目標(SDGs)」だ。昨秋、国連の会合で全加盟国の一致で採択され、今年が初年である。

 目標を達成するには、経済成長や技術革新、社会基盤整備が前提になる。さらに、格差の是正、男女平等、健康と福祉、教育の拡充、気候変動問題への対応などが欠かせない。課題は17分野にわたり、具体的な目標は169項目に及ぶ。

 対象が広く、理想が高いだけに、掛け声倒れの危うさもつきまとう。経済大国から途上国、最貧国までが結束して歩を進めて行けるかどうか、国際社会の意思と行動力が試されよう。

 とりわけ大きな責任が問われるのは、これまで国際開発を主導し、経済力に優れたG7だ。市場主義が招いた格差や荒廃など地球のひずみの解消は、安定的な成長の実現に役立つ。

 サミットでもこの開発目標を取り上げ、特に「保健」や「女性」について話し合う予定だ。議長国の日本は政府内に推進本部を設け、中東の安定や保健の充実への資金拠出を決めた。

 具体的な計画のもとで、息長く取り組みを積み重ねることが重要だ。G7がしっかりと決意表明し、必要な資金をどう確保し、行動するかが問われる。

 G7各国が政府の途上国援助(ODA)を着実に増やすことが望ましいが、どの国も財政難に悩む。株式などの金融取引に薄く広く課税する金融取引税の導入を独仏両国などが提唱して久しいが、景気の停滞もあって作業は進んでいない。

 まずは国際的な大企業や富裕層の間に広がる課税逃れを封じ込めたい。それ自体が経済格差を縮める一歩となるうえ、開発目標に充てる財源の確保にもつながりうる。

 その意味でも「パナマ文書」が提起した世界規模の脱税・節税問題に正面から向き合わねばならない。具体策の検討は経済協力開発機構(OECD)などに委ねるとしても、中国やロシア、インドなど新興国も巻き込みながら、税逃れへの監視網を世界全体に広げていく。G7がその旗振り役を果たすべきだ。