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【ソウルからヨボセヨ】
無邪気な?高齢者 ソウルの劇場は青春まっただ中
職場の近くに「青春劇場」と呼ばれるコンサートホールがあり、昼間は1960~70年代の映画が上映されている。客のほとんどが60代半ば以上の高齢者とみられ、懐かしの名画を友人同士や夫婦で、皆さん楽しんでいらっしゃる。
現在の価値観で色付けされた近頃の韓国映画に食傷気味の筆者も、青春劇場に見に行くことがある。最近では、北朝鮮に拉致され、後に帰還した故申相玉(シン・サンオク)監督の「李朝女人残酷史」がよかった。申監督の妻、崔銀姫(チェ・ウニ)さんが主演。李氏朝鮮時代の男尊女卑の社会で、女性がいかに虐げられていたかを淡々と描いており、勉強にもなった。
ところで、この青春劇場。映画に加え、客を見ていても面白い。上映中、マナーモードにしていない携帯電話が突然どこかで鳴り始める。途中で入ってきた知人と通話しながら「おい、こっちだ!」と振り向いて声をかける。周囲をはばからず、くしゃみやせき払い。注意する館内の女性係員も高齢者で、叱られた客はしおらしくしている。
マナー違反といってしまえばそれまでだが、むしろ、その無邪気さが時にはほほ笑ましい。40~50年ほど前にも友達や恋人同士で、こうやって映画を楽しんでいたのか。銀幕の前にも、どことなく懐かしい韓国の風景が広がっている。(名村隆寛)