廃虚と化した「奈良ドリームランド」 11月公売へ 買い手がつくか見通し立たず
テーマパークの先駆けとして誕生し、最盛期には年間約160万人の来場客でにぎわった遊園地「奈良ドリームランド」(奈良市)=閉園=の跡地が来月、公売にかけられる。見積価格は7億3千万円と近隣宅地に比べて割安だが、広大なうえに厳重な建築規制があり、権利関係も複雑だ。果たして買い手はつくのか。
甲子園球場8個分の広大な土地
奈良ドリームランドは平成18年に閉園。所有する奈良市の管理運営会社「ドリームランド」が固定資産税を滞納したため、昨年4月に市が約30ヘクタールの土地や建物を差し押さえた。遊具や建物は今も放置され、廃虚と化している。市は11月11日に公売にかけ、18日に売却決定する予定だ。
公売にかけられるのは、甲子園球場8個分にも相当する土地のほか、ホテルなど75の建物や遊具。
市が最初に土地を差し押さえたのは21年。その後、24年3月に老朽化が進む市東山霊苑火葬場を移転させる方針を表明したが、地元住民らが約7400人分の反対署名を提出するなどしたため、計画撤回を余儀なくされた。
一方、同社は「開発業者の買い手がある」と申し入れたため、市は差し押さえをいったん解除。しかし、事態は一向に進展せず、市は25年4月に再び差し押さえた。同社によると、固定資産税の滞納額は約6億5千万円に上る。
運営会社幹部がスピーカーで抗議
「市長が10万坪を買いたいと言ってきたから、他の買い手を断ったこともある。公売を進めるのは契約違反で、裏切り行為だ」
跡地を公売にかけるため市が9月25日に公告を始めたところ、翌26日に同社幹部が市役所敷地内に乗り込んだ。スピーカーを使い大音響で差し押さえ解除を求めた。
同社は滞納金の支払いも検討しているが、広大な土地は権利関係も複雑だ。跡地の一部は、国重要無形民俗文化財指定の「翁舞(おきなまい)」が伝わる奈良豆比古(づひこ)神社が所有。同神社は賃料のほとんどが未払いになっているとして、同社に土地返還などを求める訴訟を奈良地裁に起こし、明け渡し完了まで年480万円の支払いを命じる判決が確定している。
厳重規制足かせに…?
跡地は、都市計画法の市街化調整区域に指定。医療施設や学校、社会福祉施設のほか一部の特例を除き、原則開発はできない。特例の場合でも、市の開発審査会で「相当な理由」が認められなければならず、地元との協議も必要だ。
さらに、跡地は古都保存法で歴史的風土保存区域に、市条例では風致地区に指定されており、現状で設置可能なのは社会福祉施設やスポーツ施設ぐらい。
仲川げん市長は「大規模なので使いにくい面もあるが、複合的に全体をうまく活用するプランも十分考えられる」と売却に強気だ。ただ、放置された遊具などの撤去も必要で、関係者からは「相場より安いが、撤去だけでも相当の費用がかかる。売れればいいが厳しいのでは…」との声も上がっている。