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2016年05月25日 10時52分 UPDATE

「赤字企業に何十億ドルの価値」 ITバブルを警告するトランプ氏、笑うシリコンバレー

米大統領選のトランプ共和党候補は「IT業界には危険なバブルが発生している」と警告したが、シリコンバレーの面々は余裕を見せている。(ロイター)

[サンフランシスコ 18日 ロイター]
REUTERS

 米大統領選のドナルド・トランプ共和党候補は5月17日、「IT業界には危険な金融バブルが発生している」と警告した。この発言に、シリコンバレーの面々はただただ呆れるばかりだった。

 ニューヨークの億万長者であるトランプ氏はReutersのインタビューに応じ、「まだ利益を挙げたこともないITスタートアップ企業の株式がかなりの高値で取引されている」と指摘し、この状況を2007年の株式市場の過熱ぶりになぞらえた。

 「私が言っているのは、まだ黒字を出したことがない企業についてだ。ひどいコンセプトであるにもかかわらず、何十億ドルもの時価総額を持っている。あーまたか、といった感じだ」とトランプ氏は続ける。

photo 米大統領選で共和党の指名獲得を目指すトランプ氏=5月17日 REUTERS/Lucas Jackson

 ベンチャーキャピタルに特化した調査会社CB Insightsによれば、時価総額が10億ドルを超えるいわゆる“ユニコーン”企業は今や163社に達しており、既に多くのIT観測筋がITバブルについて再三警告している。

 そのため、シリコンバレーの起業家やベンチャーキャピタリストにしてみれば、トランプ氏の指摘は何ら新しいものではない。投資家やIT関係者らは、トランプ陣営のスローガン「Make America Great Again!(再び米国を偉大にする)」をもじり、「Make Bubbles Great Again(再びバブルを大きくする)」というフレーズを面白がってツイートしている。

 ベンチャーキャピタル大手Andreessen Horowitzのゼネラルパートナーであるマーク・アンドリーセン氏は「ついに大声で指摘する人が出てきた」とツイートし、トランプ氏を茶化した。

 トランプ氏はインタビューにおいて、ITスタートアップが高い評価額を得ている現状は2007年を思い起こさせると語っている。米国では当時、住宅市場の過熱が株価を持続不可能な水準まで押し上げ、それがバブル崩壊へとつながった。

 「株式市場は非常におかしなことになっている。ハイテク株の中には、コンセプトがあまりに弱く、企業として弱いにもかかわらず、かなりの高値で取引されているものがある。2007年の事態がまた繰り返されるのだろうか。あり得ることだと私は思う」と共和党の指名獲得を確実にしたトランプ氏は語る。

 スタートアップ企業の一部の創業者らは、「すべての企業が過大評価され、うなるほどの資金を得ている」というトランプ氏の認識は一般化のしすぎだと指摘する。確かにトランプ氏の指摘は多くのスタートアップ企業にあてはまるが、熱狂的な投資が何年か続いた後、ここ数カ月間はその勢いも落ち着きつつあるという。

 実際、順調に資金を調達し、利益を上げているスタートアップ企業もある。

 「トランプ氏はこれまで散々くだらないことを語ってきたが、どうやら発言の馬鹿さに拍車がかかっているようだ」と企業家でスタンフォード大学フェローのビベック・ワドワ氏は語る。

 「投資家のピーター・ティール氏と電話中に、“ほら、君の仲間だろ”と言って、トランプ氏のコメントをツイートしようかと思った」と同氏は続ける。

 逆張りの発想で知られる著名投資家のティール氏は、シリコンバレーでトランプ氏支持を表明している数少ないリーダーの1人だ。

 ティール氏とはすぐには連絡が付かず、コメントは得られなかった。

 テクノロジーを通じてより自由な社会の実現を目指す人たちのコミュニティー、Lincoln Initiativeの共同創設者であるアーロン・ジン氏は次のように語る。「トランプ氏はIT業界のリーダーと会うこともせず、IT業界や技術革新について理解しているようにも思えない」。

 トランプ氏の選挙戦にテクノロジー(とりわけTwitter)がどれだけ貢献しているかを考えると、これは皮肉な話だ。

 「トランプ氏が話すことやすることは、すべて人を楽しませるためのものだ」とジン氏は語る。

 トランプ氏とのインタビューの詳細は、http://www.reuters.com/article/us-usa-election-trump-exclusive-idUSKCN0Y82JOに掲載されている。

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