Windows OSにはその提供時期に応じてサポートライフサイクルの期間があらかじめ決められており、その期間が過ぎるとセキュリティパッチなどが提供されなくなる。そのためユーザーは、サポートが終了するまでに次のOSへ移行するなどの対策を講じる必要がある。
サポートライフサイクルには、製品が発表リリースされてからほぼ5年間の「メインストリームサポート」期間と、サポート終了までの5年間の「延長サポートフェーズ」の2つのフェーズがある。
この方針に基づいた具体的な延長サポートの終了時期は、Windows 7が2020年1月14日、Windows 8.1が2023年1月10日である(Windows 8はWindows 8.1にアップグレードすること)。
だが2016年の1月と3月になって突然、ある特定のCPU(Intelの第6世代CPU、Skylake)を使ったPCシステムに対して、この方針を変更し、サポート終了を「2018年7月17日まで」に繰り上げるという発表が行われた。これらのOSに対しては、この期限までに「Windows 10に移行する」ことが推奨されている。
サポートの終了時期などを図にすると次のようになる。
変更内容をまとめると次のようになる。
■Intelの第6世代CPU(開発コード名Skylake)搭載システムでWindows 7/Windows 8.1を使う場合
■旧CPUでWindows 7/Windows 8.1を使う場合
■今後リリースされる予定の最新CPUを使うシステムの場合
このサポート方針の変更により、既に最新の第6世代CPU(Skylake)搭載PCを購入してWindows 7/8.1を使っていたユーザーは、サポート期間が大幅に短縮されてしまったことになる。延長サポートの終了時期である2020年1月までWindows 7を使い、その時点で新システムへの移行を想定していたユーザーにとっては、大幅な計画変更を余儀なくされることになった。
もしWindows 7を2020年1月まで使いたいなら、第5世代以前のCPUを搭載したシステムを購入する必要がある。例えば富士通は2016年4月、第4世代または第5世代のCPUを搭載した法人向けPCの新機種を発表している。
とはいえ旧CPUのシステムの入手も今後は難しくなるだろうから、2018年7月までのWindows 10への移行を見据えて、第6世代CPUのシステムを導入して当面はWindows 7で運用することも考慮しておくべきだろう(Column「SkylakeシステムへのWindows 7のインストールは難しい!?」参照)。
IntelのSkylakeシステムでは、新たに「Intel 100シリーズ」のチップセットが使われているが、このチップセットにはUSB 2.0のEHCIコントローラが含まれておらず、USB 3.0のxHCIのみが用意されている。このようなシステムにWindows 7をインストールしようとすると、途中でUSBデバイスやキーボード、マウスなどを認識できなくなってインストールが中断することがある。Windows 7のインストールメディアにはUSB 3.0のxHCIドライバが含まれていないからだ。
これを解決するには、DVDドライブを直接SATA経由で接続してインストールするか(途中でドライバーを含んだDVDに入れ替える)、USB 3.0用のドライバを組み込んだインストール用のUSBメモリを作成する、などの対策がある。詳細はシステムやマザーボードに付属のドキュメントなどを参照のこと。SkylakeシステムにWindows 7をインストールする方法が必ず用意されているはずである(具体的な方法については、今後別記事で解説予定)。
Windows 10をインストールする場合は、このようなドライバーの不足などの問題はほとんど起こらないので、やはり新しいOSを利用するのが望ましいのだが。
この方針変更に伴ってマイクロソフトは、先のブログでその理由を幾つか記している。
まず、先のブログページでは、「Windows 7 を最新のチップで実行すると、割り込み処理、バスのサポート、電力状態などの Windows 7 の想定環境をデバイス ドライバーやファームウェアでエミュレートする必要があり、Wi-Fi、グラフィック、セキュリティなどの面で問題が生じます。」としている。
だが、方針変更はSkylakeシステムの発売から半年以上経過してから行われたため、既にWindows 7用に購入済みのユーザーも少なくなかった。本当に問題があるなら、ユーザーに対して事前に告知すべきである。それに本来は、問題が生じないようにCPUやシステム側で対応しておくべきものだ。
また「Skylake と Windows 10 を組み合わせると、Windows 7 PC と比較してグラフィック性能が最大 30 倍、バッテリー駆動時間が最大 3 倍に向上し、チップのサポートによる仮想化をベースとした Credential Guard によってこれまでにないレベルのセキュリティが実現されます。」ともしている。つまりSkylakeでWindows 7を使うと不具合が想定されるというよりは、SkylakeならWindows 10の方がその性能を発揮できると想定し、誘導しているように見える。
だが、ノートPCユーザーでなければバッテリーは関係ないし、高いグラフィック性能は必要としない用途も多い。
Credential Guard(サインインに必要な特権情報を、OSカーネル内で高度に隔離する技術。Windows 10の新機能)に至っては、64bit版のWindows 10 Enterprise+ドメインのような企業環境でしか使えない機能である。個人ユーザーやSOHO、WindowsプリインストールPCを活用している中小企業にはあまり関係がない(通常、Enterpriseエディションは市販PCにプリインストールされない)。
ところでWindows 7/8.1のサポートが2018年7月17日までという期限は、当初の発表では2017年7月17日までとなっていた。だがあまりにも唐突な発表で不評だったためか、1年間延期されている。そこまで延期するなら、もう2年伸ばして本来の延長サポート期限までにしてもよかったような気もするが(そもそもCPUの種類ごとに修正プログラムの配布方法を変えるのは、ユーザーもマイクロソフトも混乱すると思うのだが)、もう決まったことのようなので、管理者としては早めの移行対策を考える必要がある。
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