【いまマネ】第8回 日本銀行が発行したニセ札?
前回・前々回のいまマネでは、「お金が通用するのは、信用があるから」という話を書きました。
私がお金を「信用」し、アナタがお金を「信用」し、みんながお金を「信用」する。
そこで、はじめてお金が「価値」を持つことになります。
では、アナタの財布の中をのぞいてみて下さい。
1万円札を1枚取り出してみて下さい。
え、1万円札がないって?
じゃあ、千円札でも五千円札でも、今はあまり目にしない二千円札でもいいです。
表を10秒見て下さい。
10秒見たら、裏がえしてみてください。
もし、裏に印刷のない、真っ白な紙幣だったら、どう思いますか?
多分、100人のうち99人は「あ、ニセ札だ!」と思うでしょう。
(一人ぐらいは「ラッキー!」と思うかもしれません、、、理由は後ほど)
それは何故でしょうか?
理由は簡単で、アナタの「信用」しているお金は、両面が印刷されているものだ、と
認識しているからです。だから、片面しか印刷のないお金は、正規のお金として
認められない。だから、ニセ札である、と思うわけです。
しかし、かつて日本でも「裏の白い紙幣」が発行されたことがありました。
1927年、金融恐慌が起きました。金融恐慌の時に起きるのが、銀行から預金を
引き出してしまう、いわゆる「取り付け」こと。これも金融や銀行が「信用」できなく
なるから起きるものです。沢山の預金者がお金を引き出すと、銀行の中の紙幣が
なくなってしまいます。そうすると銀行が業務を行えず、潰れてしまいます。
どこか一つの銀行が潰れると、他の銀行の預金者が「私の預金もアブナイ!」と
思い預金を引き出す。それが波及して全国に広がります。
そうすると、全国的にお金が不足するわけです。そこで、日本銀行は緊急で200円札
を発行しました。緊急なので、お金を両面印刷する時間もなく、片面のみの印刷で発行
したのです。
これを受け取った人の中にも「ニセ札だ!」と思った人もいました。また、このお金を使って
逮捕された人もいました(後にお金が本物だとわかり、釈放されたそうです)。
何故「ニセ札」だと思われたのでしょうか?
実は、あまりにも急いでお金を発行したため、本来は「こういう紙幣を作ったよ」という連絡を
警察にするのですが、連絡を忘れてしまったのです。だから、警察も裏面の白いお金を
「ニセ札」と思ったのです。
日本銀行が発行したものであっても、「信用」されない紙幣は「ニセ札」扱いになってしまうのです。
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先ほど、100人に99人は「ニセ札だ!」と思い、残りの1人ぐらいは「ラッキー!」と思う、という
話をしました。日本銀行で紙幣を発行する際にチェックをするので、裏面が白い紙幣というのは
まず流出しないはずです。もし、ニセ札ではない、裏面白紙の日本銀行券があったとしたら、
かなりの高額で取引されると思います。だから、「ラッキー」なんですね。