正社員だけが優遇される時代も終わる
世の中の雇用形態というのはどんどん変化していくもので、正社員こそが正義、護送船団方式な人生というのは通用しなくなっています。だってあんな大きな会社ですら倒産したり海外の資本に買収されたり縮小したりする時代ですよ?どこにいたから安心なんていう夕立の時の避雷針のようなものは雇用に存在しません。
もちろん、アルバイトや派遣スタッフというのは正社員に比べるとどうしても安定感がないし年収で200万円を下回る場合はクレジットカードの審査に通るのが非常に難しい、ローンが組めないなどの不都合も出てきます。これ、派遣会社に相談されても本当に辛いんですよ。どうしようもないんですもの。
ちょっとだけ寄り道をしましょう。派遣スタッフとクレジットカードの話。
どうしてもクレジットカードが欲しいという方は楽天カード申し込んでみてください。楽天カードは最も審査が通りやすいとして有名ですが、もちろん以前に金融関係で滞納があったりスマホなどの支払いが延滞したなどで落ちる可能性がありますので悪しからず。予定年収もしっかり書いてくださいよ(嘘を書いてはいけません)
さて、話を戻します。
これから派遣社員として働こうとしている人におすすめする「派遣会社の選び方」を書いてみようと思いましたが、これと一緒に「派遣会社がどういうスタッフを選ぶか」についても書いておこうと思います。元派遣会社営業マン→管理職ですから。派遣元責任者もやりましたしトラブルも山ほど経験しています(笑)派遣スタッフの事件簿、という本も書けそうな感じです。
では派遣スタッフから見た「派遣会社の選び方」から始めます。
派遣会社の選び方
これ、鉄板が一つあります。「大手から登録しろ」ということです。これは非常に大事なので間違っても「親切な派遣会社」とかで選んではいけません。
じゃあ大手ってどこやねん、となってランキングを見まくるのはちょっと間違い。派遣会社というのは知名度のためにお金を惜しみません。優秀なスタッフを集めるために億単位のお金を求人媒体に投入して当たり前なのです。当然ながらそういったランキングにすら細工がしてある可能性も。
まずは5強から
ここはためらわず5社登録してみましょう。
「パソナ」「アデコ」「マンパワー」「リクルートスタッフィング」「テンプスタッフ」
正直なところ、派遣会社の優劣というのは就業がスタートしてしまえばあまり関係がありません。福利厚生で有利なものがあったりしますが、結局は就業したときにフォローしてくれる営業担当次第なところが大きい。当たりの営業マンに担当してもらえれば次の仕事を紹介してくれたり、トラブルの時は親身になって対応してくれたりしますが、逆にハズレ担当にあたった時は本当にひどい目にあうでしょう。
ではなぜその5社に登録に行けというか。それは
「スタッフを見る目が日本で最も厳しい5社から価値を測ってもらえ」ということです。
派遣スタッフは派遣会社から仕事を紹介してもらって派遣就業しますが、逆にそのスタッフが仕事をしっかりしてくれるかどうかを派遣会社は必ずチェックしています。それ以前に派遣スタッフとして登録しに来た時点で強烈に「スタッフとしての松竹梅」を見られているんです。
- スキルテスト
- 応募書類確認
- 面談での人物評価
- 電話の応対
チェックポイントはたくさんあります。評価のポイントは「安心して仕事を任せられるか」です。パソコンスキルの優劣はもちろんありますが、それは就業先で必要になるパソコンスキルに合わせたらいいだけの話ですので。
- 入力作業しかない仕事にExcelのスキルが高いスタッフを就業させる必要はない(この場合、スタッフが仕事に飽きてしまい続かない危険性あり)
- Excel高スキルが必要な仕事にExcel入力しかできないスタッフを就業させてはいけない
(クライアントから猛烈な抗議を受ける上、スタッフに他の仕事を紹介しなくてはならなくなり大変な目にあいます) - スキルシートに「できる」と書いてあるのに実際テストをしたら「できない」スタッフがよくいます。自分を良く見せたい気持ちはわかりますが、やりすぎると信頼関係を作れないため仕事の紹介などできません。
よくいるのが「私は鯛なんです」と自分をPRしてくる登録スタッフ。でも実際スキルテストをしたり面談をすると「メダカ」なんですよ。先ほど紹介した5社は登録に来た時点で「あ、このスタッフはメダカ」と評価してしまいます。間違ってもメダカを鯛と派遣先に紹介することはありません。それ、すごく大事なことなんです。
この5社に登録してみて仕事の紹介がない場合、それなりの評価しかされなかったということです。今は紹介する仕事が無い、でも他の派遣会社に取られたくない、という優秀なスタッフの場合、短期の仕事でも紹介したりスキルアップセミナーに招待してみたりと派遣会社は「優秀スタッフの囲い込み」を行いますから。
5強がダメなら中堅、専門性の高い派遣会社へ
声がかからない場合はその5社は諦め、中堅クラスの派遣会社に登録に行きましょう。住んでいるのが都会ではなく地方である場合、地元資本で地元に強い派遣会社などもありますので求人誌などで調べてみてください。大きな会社なら子会社として派遣会社を持っていることもあります。
NTT→テルウェル、アクト、ヒューマンソリューションズなど
伊藤忠→キャプラン
松下電工→アロービジネスメイツ などなど
おそらく中堅の派遣会社と大手を比べるとその違いにびっくりすると思います。規模、スタッフ、登録システムなどが大手とは比べ物になりません。中堅派遣会社の社員が実は大手に中途採用で転職していくのもよくある話です。
また、テレマーケティングなど専門性の高い仕事をやりたい人はそういう仕事に限定した派遣会社などもありますので、選択肢が広くなります。「はたらこねっと」や「リクナビ派遣」などではヒットしないものもあるので広く浅く情報を拾ってみてください。
それでも仕事が決まらない・・・
大手もダメ、中堅もダメ、なかなか仕事が決まらない人もいます。そういう人が「ダメ」なのではなくて、これまで経験したキャリアとやりたい仕事の間にある「ミスマッチ」が就業の妨げになっている可能性もあります。
派遣会社はその仕事を経験者している人を派遣先に送り込むのが一番安心です。やったことないんですけどやってみたいんです、などと力説してくる登録スタッフの希望通り仕事を案内する派遣会社というのは逆に危険性が高い。
今すぐ働いてほしいとか契約を急いでくるような派遣会社はちょっと疑う方がいいです。トラブル続出でスタッフを急遽集めているのかもしれませんし、いわゆるブラック企業から高額でスタッフを集めてくるように言われてるのかもしれません。大手、準大手が断るオーダーを受ける中小派遣会社というのも存在するので要注意です。
「派遣スタッフをやる自信がなくなった」という方に
ここまで私は非常に厳しい事を書いています。大手に行け、大手に仕事をもらえなかったら中堅に行け、中堅でも仕事が来なければ中小へ、と。派遣だからって馬鹿にしてるのか、と腹が立っている人もいるかもしれません。
でも。一つ勘違いしてほしくないのは「派遣会社はただの口利き屋」ではないということです。優秀なスタッフを集め、場合によっては社費をつかってスタッフを鍛え、そのスタッフが派遣先で就業して活躍し、「君の派遣会社のスタッフは優秀だ、これからもよろしく。あと3人ほど集めてくれないか」という事を繰り返して派遣会社というのは利益を出していくのです。
新規スタッフの登録というのは大事な仕入れ活動であり、登録したスタッフというのは大切な商品なのです。それを意識してぜひ登録に行ってみてください。
- 派遣会社に入る時の立ち居振る舞い
- 派遣会社に電話するときの電話のやりとり
- 登録に行くときの服装、化粧
- 登録担当社員との会話時の表情、受け答え
これらをきちんとできない登録スタッフを安心して派遣先に連れて行けるか、というところから考えてみるといいと思います。
次は、派遣会社から登録スタッフを見る目線というのを書いておきます。参考になれば幸いです。
派遣会社が好むスタッフとは
就業が決まっても契約が切れたとたんに仕事の案内が来ないスタッフもいれば、終わる前から次の仕事の紹介を持ってこられるスタッフもいます。違う契約であっても延長してもらえれば有給の起算日が変更されることがないという優遇もありますので、同じ派遣会社から仕事を紹介してもらえるというのはすごくありがたいことなのです。
では「引き続き仕事を頼まれる好まれるスタッフ」とそうでないスタッフとの違いというのがどのあたりにあるかを書いておきます。
好まれるスタッフとは
- 自分の能力を理解していること。これができる、これはできないが自分でもよくわかっていること。
- スキルアップをいつも考えていること。
- 表情が明るい、人の話をまっすぐ聞くことが出来ること。
- 派遣先からの評判がいいこと。
- 営業担当からの評判がいいこと。
- メールでも電話でも反応が早いこと。
派遣会社で営業担当をしていると「マイスタッフ」のような人ができてきます。人柄が良く、仕事に対する姿勢がいいこと。それは就業先でも評価がよくなり結果的に契約金額も上がっていき長期での就業につながったりします。
この逆を考えてみるとよくわかると思います。
- 自分のスキルを棚に上げて「あれがやりたい」「これがやりたい」と電話ばかりしてくる
- スキルアップセミナーの案内をしても「タダなら出るけど有料ならいかない」
- 「え」「ああ」「それで」など受け答えがきちんとできない。よそ見をしながら話を聞いたり、足を組んだり足をぶらぶらさせながら話をする
- 「あのスタッフは絶対にうちに紹介するな」と言われる
- クレームが多くて営業担当として対応に時間が取られすぎる
- メールを送っても留守番電話を入れても返事がない、返事が遅い
こういうスタッフがもしいても仕事の案内はまずしないでしょう。もしくは就業先でトラブルがあってどうしても一名送り込まなくてはならない、という派遣会社側の事情があればダメ元で就業させるかもしれません。
でも、それは派遣スタッフ、派遣会社ともに最悪の一手になることが多いんですが。
これは決して「派遣スタッフは派遣会社に媚びろ」というのではないんです。派遣スタッフというのは自分というものの価値を上げる事で時給を含むステータスをアップさせていくんです。それをやらずに「一円でも高い時給でちょっとでも楽な仕事」を追いかけるというのはスタッフも派遣会社にとってもいいことではありません。
ただ、登録したままでは評価が上がることはありませんので、「こういう資格を取った」「こういう事ができるようになった」「他の派遣の仕事でこんな経験を積んだ」ということがあれば積極的に派遣会社に伝えて「派遣スタッフとして経験値が上がっている」ことを伝えるべきです。それによって「スキルアップを常に考えているスタッフ」という評価が付け加えられますし、どんなスキルでも身につけることは派遣スタッフとして強い武器になりますので。
ある派遣スタッフのストーリー
僕が担当したあるスタッフの話をします。
そのスタッフはちょっと田舎に住んでいて周りには会社があまりなく、電話で話をしても人柄の良さがわかっているだけにもったいないなぁと思っていました。さらにその子は事務職をやったことがなく、レストランでウエイトレスとレジでお金の出入りをやったことがあるくらい。でもすごくいい子だったんです。
ある派遣先から受付の仕事ができるスタッフを紹介してほしいと言われて打ち合わせをした時、真っ先にそのスタッフの事が頭に浮かびました。「仕事はこちらで教える、逆にこっちで育てるから安心して人柄のいいスタッフを紹介して欲しい」と言われたので。
そのスタッフに仕事を案内すると二つ返事で「行きたいのでぜひ紹介して下さい」と話が進み、就業がスタート。最初は受付なんてやったことがないのでヒヤヒヤしたものの、分からないことを質問する、聞いたことをしっかりメモする、家に帰ってから教えてもらったことをまとめる、とすごく頑張っていた様子。
派遣先からの評価はどんどんあがり、受付の仕事を完全に任せられるようになった上、設計の補助まで始める(住宅のモデルハウスだったので)ことに。当然給料は設計業務の時間給まで入ることになりどんどんアップしていきました。
残念ながらその派遣先に産休だった社員さんが戻ってくることになり、業務終了。しかしその頃にはバーベキューやボーリング大会などのイベントにも誘われるような関係ができていて、辞めた後も連絡がくるようになっていたとか。
そこの仕事が終わって半年ほど案内できる仕事がなかったものの、自動車ディーラーでの受付の仕事が入ってきたのでそのスタッフに声をかけると「ぜひ行きたいです」と。そこでの仕事が決まると前のショールームで習った受付のスキルをを武器にそのスタッフは自動車ディーラーでも大活躍し、その姿に一目惚れしたディーラーの営業マンと結婚することに。
結婚が決まり、自動車ディーラーを契約満了するときにそのスタッフと出会ったんです。
この派遣会社から仕事を案内してもらったことで受付という仕事ができるようになったこと。その仕事が縁で結婚という人生の道が開けたこと。いくら感謝しても感謝しきれないというスタッフに僕はこう言ったんです。
同じ仕事を案内しても受付すらまともにできず契約を終わるスタッフもいる。あのスタッフは二度と仕事を案内しないようにしようと思ってしまうスタッフもいる中で、あなたはいつも仕事を一生懸命真面目に明るく頑張っていたからこそ仕事の案内を続けたんですよ、それはあなたの人柄なんです、って。
本当にいい仕事ができたなと思いました。今でもいい思い出です。
最後に
派遣会社はスタッフの運命すら握る仕事なんです。逆にスタッフは自分の「働く」という選択を派遣会社に任せる部分もあるのです。スタッフと派遣会社としていい関係を築くにはどうやって行くのがいいかを常に考えるのって大事なことだと思います。
現在派遣スタッフである人も、これから派遣スタッフとして働こうと思っている人も。この記事がそのちょっとでも参考になれば幸いです。
追伸
この記事は事務系派遣会社での話がメインになっています。工場派遣や医療系の派遣など派遣の仕事が広がっていく中で一部「それは違う」と思われる部分も出てくるかもしれません。そのあたりは各自皆さんで読み広げていただければ幸いです。