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「秀才」の舛添都知事はなぜ愚行に走ったのか - 多田稔 中小企業診断士

舛添要一東京都知事に対するバッシングが止まりません。当初は、豪華出張や公用車での別荘通いといった、ある種「程度問題」でしたが、家族旅行への政治資金流用疑惑が報道されてからは、世論の風当たりが一層強まりました。その後も絵画や自動車購入への公金流用、事務所費問題など、次々と疑惑が噴出しています。

テレビのワイドショーや情報番組を見ていると、コメンテーターが「東大を出て、英語・フランス語を自由に操るほど頭の良い舛添さんが、なんでこんなバカなことをしたのか?」という文脈で発言しているのをよく見かけます。そんなときはだいたい、「偏差値の高さと品性は別」とか、「頭は良いが利口ではなかった」と結論づけられて、多少なりとも視聴者の溜飲を下げる、という感じで場が収まります。

今日は、そんなやっかみ半分(?)の批判から一歩進んで、「なぜ秀才の舛添さんが愚行に走ったのか?」について、もう少し掘り下げて考えてみましょう。

■繰り返される行動パターン


今回出てきている疑惑を客観的に言い表せば、「政治資金の不正流用という短期的利益を重視し、疑惑を追及される将来のリスクを軽視した」ということになります。実は、これまでの舛添さんの行動を振り返ってみると、この「短期利益重視、長期リスク軽視」という行動パターンが何度か確認できます。

最初は、マスコミに登場する機会が増え、東大助教授を辞めた1989年です。人もうらやむ華麗なキャリアをあっさり捨てたこの行動は、「テレビタレントとして手っ取り早く稼ぐ短期的利益を重視し、東大助教授という社会的地位を失う長期的リスクを軽視」したと評価できます。

また、自民党を離党し、新党改革を立ち上げた2010年の行動は、「政権を失った落ち目の自民党から逃げ出す短期的利益を重視し、大政党のバックを失う長期的リスクを軽視」したと見ることができます。

■「双曲割引」のワナ


このような行動を説明する論理として、行動経済学における双曲割引という考え方があります。双曲割引とは「現在の効用を高く評価し、将来の効用を必要以上に低く評価してしまう人間の思考パターン」のことです。典型例として、体に悪いことが分かっていても深酒をしてしまう、後で奥さんに怒られると分かっていても浮気に走ってしまう、といったことが挙げられます。要するに「一時の快楽におぼれる」というやつですね。

双曲割引の傾向は人間なら多かれ少なかれ、誰しも持っています。これは頭の良し悪しにはまったく関係なく、もちろん舛添さんも持っている根源的な性質です。むしろ、舛添さんのように頭の良い人、正確に言えば「自分は頭が良いという自覚が強い人」ほど、双曲割引の度合いが強いのではないか、というのが私の意見です。なぜかと言えば、自分の優秀さと現状を比較して、「この俺がこんな環境に甘んじているのはおかしい」=「もっとおいしい思いをしてもいいはずだ」という思考に陥りやすいからです。そして、この考え方が、より短期的利益を重視し、より長期的リスクを軽視する傾向につながっていきます。

過去の言動を見ると、おそらく舛添さんは自分のことを、「この世で俺ほど賢い人間はいない」「俺ほど仕事のできる人間はいない」と思っているのではないでしょうか。そんな人が、「俺はもっと評価されていいはずだ」「もっと優遇されていいはずだ」と考えるのは不思議なことではありません。世間的にはうぬぼれとしか見られないこの心根が、本能的な双曲割引の傾向を刺激し、肥大化させたのではないでしょうか。その結果、舛添さんを、短期的には良い思いができても、長期的に見れば愚行としか言いようのない行動に駆り立ててきたのではないでしょうか。

■「優秀な人」だから危ない


そう考えると、大学時代に舛添さんと首席を争ったとかいう鳩山邦夫衆議院議員が、政党を次々と渡り歩くのも同じ理屈で説明できるような気がします。また、我々の身近でも、「社内のホープ」とか「エース営業マン」とか言われる人に限ってあっさり独立したり、転職したりして、結局その後苦労したりします。これも、「自分は優秀だ」と思っている人が双曲割引のワナにはまって、傍から見れば軽率にしか見えない行動に走ってしまう例と言えるでしょう。

話を戻すと、「舛添さんみたいな優秀な人がどうしてあんなバカなことしたんだ?」と批判するのは的外れで、「舛添さんが優秀な人『だからこそ』あんなバカなことをした」と考えるのが理屈に合っている、と私は考えます。このコラムをお読みのエリート・ビジネスマン諸兄、くれぐれも軽挙妄動にはお気をつけくださいませ・・・。

【参考記事】
■自動車メーカーが不正を繰り返す理由 (多田稔 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/48638759-20160519.html
■世界一の債務国から学ぶべき日本の稼ぐ方法 (JB SAITO マサチューセッツ大学MBA講師)
http://sharescafe.net/48635480-20160519.html
■不適切会計で需要増なるか? 注目の公認不正検査士とは カイケイ・ネット
http://sharescafe.net/48631866-20160519.html
■就職内定率は6年ぶりの水準に! 企業法務で雇用拡大は可能か? リーガルネット
http://sharescafe.net/48614998-20160516.html
■女性弁護士の働き方~企業内弁護士という選択~ リーガルネット 山崎雅彦
http://sharescafe.net/46067601-20150828.html

多田稔 中小企業診断士 多田稔中小企業診断士事務所

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