大統領選、左派候補が小差で当選
ファン・デア・ベレン氏、難民拒絶の極右破る
【ウィーン三木幸治】オーストリア大統領選の決選投票は23日、不在者投票を含めた最終集計が行われ、中東などからの難民保護を訴える左派・緑の党出身のアレクサンダー・ファン・デア・ベレン元党首(72)が、難民流入を拒絶する極右・自由党のノルベルト・ホーファー国民議会議員(45)を小差で破って当選を決めた。内務省が発表した。欧州連合(EU)初となる極右政党出身の大統領誕生は実現しなかった。
内務省によると、ファン・デア・ベレン氏の得票率は50.3%、ホーファー氏の得票率は49.7%。投票率は72.7%だった。
オーストリアでは国政の実権は首相にあり、国民議会は連立政権を組む中道左派・社会民主党、中道右派・国民党が過半数を握っている。大統領は首相の任命権や国民議会の解散権限があるが、ファン・デア・ベレン氏は政権と連携して職務を進めるとみられる。一方で、今年に入って難民の流入抑制策を強化する政府に間接的に圧力をかける考えだ。
オーストリアでは昨年、中東などから流入した約9万人が難民申請。経済低迷や失業率悪化もあって国民の反発が強まっていた。大統領選で反難民・移民を掲げるホーファー氏が国民の半数近くの支持を獲得したことは、今後の国政運営やEU各国の右翼政党などに影響を与えそうだ。
4月の大統領選第1回投票ではホーファー氏が得票率35%で1位、ファン・デア・ベレン氏は同21%で2位だった。だが第1回投票で敗退した社民党、国民党候補の支持者がファン・デア・ベレン氏の支援にまわり、ホーファー氏を逆転したとみられる。
大統領選の敗北を受けて社民党のファイマン首相は今月9日に辞任。国営オーストリア鉄道社長(当時)のケルン氏が17日に首相に就任し、新内閣を発足させている。