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マーケティングの大家であるPhilip Kotler氏が『資本主義に希望はある 私たちが直視すべき14の課題』という書籍を出版した。Kotler氏はその序章において、なぜこの本を執筆したのか5つの理由を挙げている。
そのうちの1つは、Thomas Piketty氏の『21世紀の資本』がぶ厚すぎる、というものだ。つまり、資本主義に関する重要な問題提起であるにもかかわらず、多くの人が最後まで読めないであろうぶ厚い本を書いてどうするのだと。さすが、マーケティングの大家である。ちなみに『21世紀の資本』の日本語版は728ページある。
英国の指導者であるWinston Churchillはこう言ったという(『資本主義に希望はある』より)。
資本主義が持つ欠点は、幸福を不平等に割り当てることだ。
社会主義が持つ長所は、不幸を平等に割り当てることだ。
そして今、問題視されているのは、この資本主義が持つ欠点の顕在化だ。富裕層が益々富む一方で、中産階級が没落し、貧困が社会問題となっている。パナマ文書はこの問題を象徴するが故に、重要な意味を持つ。
しかし、Kotler氏が指摘するように、貧困層の問題は貧困層のみには留まらない。富の偏在は社会の不安を増大させ、富裕層にとっても脅威となる。
Kotler氏はその著書の中で資本主義の14の問題点を指摘し、それぞれに対する解決策を議論している。そのうちの一つに、「資本主義は、GDPの成長だけを重視しがちになる」というのがある。
つまり、成熟した社会においては、経済的な成長のみを追い求めることは困難だとする考えである。故に、GDPの成長や消費の拡大ではなく、幸福を計るための別の尺度を持つべきだと指摘する。
人は、年収が一定の水準(米国の調査では7万5000ドル)を超えると、もはや幸福の度合いは増えないと言われている。そこで、Kotler氏は、消費を続けることではなく、別のライフスタイルを広めなくてはならないと提言する。
しかし、Kotler氏も、消費とは異なる尺度を重視する社会へ転換について、どうすれば実現できるのか「想像もつかない」とお手上げだ。
では、テクノロジはこの問題を解決するのかと問われれば、必ずしもそうとは言えない。人工知能が今後人の職業をどんどん奪い、さらなる貧困化を招く可能性が指摘されている。
金融関連のテクノロジは、一般の消費者が、よりよく金融資産を管理し、高度な運用をできるようにしてくれるだろう。しかし、それは資本主義の価値観から抜け出すことを意味しない。
金融取引、ソーシャルネットワーク、行動履歴、購買履歴、生体情報などなど個人に関して集められる情報はさまざまだ。そして、これらの中で、人の幸福と関連を持つ尺度は金融資産や消費だけではない。
テクノロジは、これまで結びつくことがなかったものを結びつけ、新しい価値を創造することができるだろう。これまでの価値観の中での効率化ではなく、新しい価値の創造こそテクノロジが果たす役割だ。
ちなみに、Kotler氏の『資本主義に希望はある』の日本語版は、360ページである。薄いか?
飯田哲夫(Tetsuo Iida)
電通国際情報サービスにてベンチャー企業投資、海外事業投資を担当。同社にて銀行系システムの開発を担当後、決済サービス分野を中心にソリューションの企画を手掛ける。2012年に金融イノベーションの活性化を目的として金融イノベーションビジネスカンファレンス(FIBC)を立ち上げ、2015年よりフィンテックベンチャーへの投資事業を開始。金融革新同友会「Finovators」副代表理事。マンチェスタービジネススクール卒業。知る人ぞ知る現代美術の老舗「美学校」にも在籍していた。報われることのない釣り師。
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