海底ひずみの分布状況解明 海保が観測
「詳しい被害予測や観測態勢の充実に役立つ」
南海トラフ巨大地震の想定震源域で、海底のプレート(岩板)にたまったひずみの分布状況を初めて明らかにしたと、海上保安庁海洋情報部の調査チームが23日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表した。ひずみが解放される時に地震が起きると考えられており、海保は「将来懸念される巨大地震に向け、より詳しい被害予測や観測態勢の充実に役立つ」としている。
同地震は、海のプレートが陸のプレートの下に潜り込む境界で起きる。ひずみは潜り込みに引きずられた陸のプレートに蓄積し、元に戻ろうとする時に地震が発生する。
海保は、想定震源域にあたる静岡県から高知県沖の海底15カ所に観測機器を設置。正確な位置が分かる観測船を使い、これまで不可能だった海底の地殻変動を観測した。
2006〜15年度の10年間のデータを分析した結果、遠州灘や紀伊半島沖、四国の南方沖などに年間5センチ程度のひずみを蓄積する「強ひずみ域」があることが分かった。強ひずみ域は、想定東海地震の震源域やマグニチュード(M)8.0だった1946年南海地震の震源域からさらに南西側に広がっていた。
海保海洋防災調査室の横田裕輔さんは「このデータを基に予測すればより現実的な被害想定ができ、今後の地震観測態勢を考える一助にもなる」と話している。【飯田和樹】